『たのしいドルヲタ図鑑』【1人目:余生をアイドルと野球に捧げる50代紳士・コロラドさん】

連載・コラム

[2015/11/5 00:00]

1人目:余生をアイドルと野球に捧げる50代紳士・コロラドさん

 今や日本中、いや世界中に生息するドルヲタ(アイドルヲタク)たち。本連載では、そんなドルヲタのなかでも特にエッジが効いた、個性的な人々を紹介していく。今回紹介するのは、大手金融会社の部長クラスとしての地位を捨て、余生をアイドルと野球に捧げるコロラドさん。見た目は普通のおじさんで、物腰が柔らかく穏やかな雰囲気をまとっている。

コロラドさん

    年齢55歳(スティーブ・ヴァイと同い年)
    出身地東京都
    星座てんびん座
    血液型O型
    趣味音楽鑑賞、野球観戦
    現在の本現場ハコイリ♡ムスメ(神岡実希推し)、アイドルネッサンス(石野理子推し)
    属性認知厨
    鑑賞スタイルホールでのコンサートや座席のある公演が好きで、良席にはこだわらない。スタンディングの会場では柵に掴まれる場所を好み、基本的にはおとなしく鑑賞。

    [認知厨(にんちちゅう)……自分の存在をアイドルに認知してもらいたいヲタクのこと]
    [本現場(ほんげんば)……メインで行っているライブ(現場)、大切なライブのこと]
    [推し……“イチ推しメンバー”の略で、グループ内で特にひいきして応援しているメンバーのこと]
    [良席(りょうせき)……座席のあるコンサートやライブなどの公演で、参加者が良い席だと感じる席のこと。一般的にはステージから近い席を指す]

    コロラドさんはこんな人
     コロラドさんのドルヲタ活動について迫る前に、その人となりを紹介しよう。ドルヲタ活動と野球観戦のために高給取りサラリーマンという立場をあっさりと捨ててしまったところや、音楽や野球など自分の好きなことに関してマニアックな視点で突き詰める点がコロラドさんの魅力で、いつも笑顔を絶やさずちょっぴりおしゃべり好きなところも愛らしい。

    都内某所の喫茶店で取材を行った。

    ラジオで育った音楽マニアのコロラドさん
     コロラドさんは小学生くらいから洋楽に興味を持ち始めた。中1から高3までは毎週土曜日の22時から放送されていたラジオ番組『全米・トップ40』を聴き、ビルボードのチャートをノートに記録。ロック、ブラックミュージック、ポップスなど幅広く愛聴し、生まれて初めて観に行ったライブは1975年のクイーンの初来日(日本武道館)だった。「『全米・トップ40』はアメリカのヒットチャートをそのままかける番組なので日本のラジオでかからない曲も聴けるし、DJの湯川れい子さんの解説もわかりやすくて、そこから掘り下げて色々聴いてましたね。昔は娯楽が少なく、早い時間に終わってしまうテレビとは違ってラジオは遅くまでやっていたので、インターネットもない時代はこうやって音楽を楽しんだものですよ(笑)」

    コロラドさんが中高6年間で記録したノート。ものすごいマメさ!
    当時行ったライブチケットの半券。ステージのセッティングやセットリストも記録されている。

    コロラドさんは元・お堅い会社の管理職。しかし社内ではドルヲタも隠さず
     コロラドさんは大手金融会社のサラリーマンで、社内ではドルヲタであることもオープンにしていた。一時期は社内恋愛をしたこともあったそう(これは社内で内緒)。好きになる女性のタイプと推しになるアイドルは似ていて、控えめ・黒髪・小柄な女性が好み。「独身を貫くとか考えてなかったので、30代でマンションを買ったときも家族が増えていいように3LDKの部屋を買ったんです。でも無駄になりました(笑)。今は資料室になってますからね、コロラド資料館に(笑)。アイドルと結婚したいとかは思わないです。僕ももうそういう年齢じゃないし、相手(アイドル)も法律的にまだできませんし(笑)」
     サラリーマン生活は順調で、仕事のあとは同僚や部下ともよく飲みに行っていた。しかし50歳の頃に早期退職者の募集があり、退職金の提示額を見たところ“この金額をもらえるなら退職しても暮らしていけるのでは”と思い、税理士に退職後の生活のプランを緻密に検証してもらったところ、“平均寿命くらいまでは生活していけるでしょう”とGOサインが出たため、退職を決意。そこからは趣味のドルヲタ活動や野球観戦を中心に、のびのびと余生を過ごしている。

    会社員時代のコロラドさん(イメージ)

    コロラドさんの半端ない野球愛
     コロラドさんを語る上で欠かせないのは野球への情熱だ。小学生の頃から野球観戦が大好きで、プロ野球だけでは飽き足らず、メジャーリーグ、はたまた高校野球まで数々の試合を観戦してきた。「ひいきのチームは日本ハムファイターズで、東京に本拠地があったときからのファンです。その頃は弱くて人気もない時期だったので、シンパシーも湧いてきて(笑)。アイドルでいうと、ちょっと人気がなかったり後列でがんばってる子を応援したくなるのと似ているかもしれません。推してる選手は特にいないんですけど、アマチュア時代から観ている選手がプロになって活躍すると嬉しいですね。例えば社会人の新日鉄君津(現新日鐵住金かずさマジック)の試合で、松中信彦選手(現福岡ソフトバンクホークス)と小笠原道広選手(現中日ドラゴンズ)が一緒に出ている試合を観たことがあります。海外では米ヒューストンアストロズのA・J・ヒンチ監督をスタンフォード大学時代に観たこともあります(笑)」
     コロラドさんの“古参ヲタ”[※初期からのファン]な一面がうかがえる。なお好きなプレイはゲッツー。特に6-4-3のゲッツーが好きだという。

    コロラドさん的、今まで心に残った野球の試合ベストスリー

    1. 初めて球場で観戦した“東映フライヤーズ対西鉄ライオンズ”(1967年)
    2. 初メジャーリーグ観戦の“ジャイアンツ対メッツ”(1987年)
    3. 高校野球北神奈川大会決勝の“慶応義塾対東海大相模”(2008年)

     1位はコロラドさんが小学生の頃初めて球場で観戦した試合で、それまでモノクロテレビでしか観られなかった野球の試合を生で体感したことが衝撃的だったそうだ。コロラドさんが野球観戦にのめり込むきっかけになった試合と言えるだろう。なお、コロラドさんはその日生まれて初めてホットドッグを食べた。2位は初めて海外で観戦した試合だ。やはり初めての体験は特に印象に残るようだ。3位はコロラドさんの母校、慶應義塾高校が激しい接戦の末、延長戦で勝って甲子園出場を決めた試合。普段は勝敗にはこだわらないコロラドさんでも、母校の試合となると思い入れがあるのでつい熱くなってしまうと語ってくれた。

    [耳マン編集部]