『たのしいドルヲタ図鑑』【1人目:余生をアイドルと野球に捧げる50代紳士・コロラドさん】
コロラドさんのドルヲタ活動
ここからが本題。コロラドさんは高校生2年生だった1977年ごろからドルヲタ活動を開始し、社会人に至るまでさまざまなアイドルに愛情をそそぎ、応援してきた。
コロラドさんがドルヲタになった日
男子校に通っていたコロラドさんは、クラスで回し読みしていた雑誌のグラビアに写る大場久美子を見て「可愛いなぁ」と思ったことをきっかけにアイドルにハマる。そして1982年に日本青年館で行われた石川秀美のデビューコンサートにて現場デビューを果たした。
コロラドさんが初めて買ったアイドルのレコードは大場の『ディスコドリーム』(1978年)で、よく聴いたアルバムは松田聖子の『風立ちぬ』(1981年)と『Canary』(1983年)。音楽好きのコロラドさんが今1番好きなアイドル曲は、アイドルネッサンスの『恋する感覚』(2015年)だそう。「音楽の善し悪しというよりも、好みの音かどうかだと思っています。アイドルにおいて音楽は重視しますが、楽曲派(※)ではないです」
[※楽曲派とは……アイドルのルックスやパフォーマンス、握手会などの接触行為よりも、楽曲の良さを最重視するヲタクのこと]
コロラドさんの“ピンチケガチ恋”時代
現在は穏やかで紳士のコロラドさんにも、“ピンチケ(※)”で、“ガチ恋(※※)”だった時代があった。大学生くらいの頃、応援していたアイドルに電話番号を教えてもらい、ときどき電話をしていたそうだ。「その頃はもちろん携帯がなく固定電話でした。そのアイドルは同じ事務所の後輩とふたり住まいだったのですが、僕の推しが仕事などでいないと後輩が電話に出るんですよ。そこでも話し込んじゃったりして(笑)。若気の至りですから、今はアイドルと繋がろうなんて全然考えてません(照れ笑い)」
[※ピンチケ……ピンクチケットの略。AKB劇場で中高生向けに安く販売されるピンク色のチケットから派生した言葉で、最近では若いヲタクやヤンチャなヲタクを指すことが多い]
[※※ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋しちゃうヲタクのこと]
親戚のおじさんの気持ちで応援している
そんなピンチケ時代を経たコロラドさんは現在、“親戚のおじさんのようなスタンス”でアイドルを応援している。「よく父親目線でアイドルを応援する人はいますが、僕の場合は親戚のおじさんですね。父親は責任があるから“勉強しなきゃダメだよ”とか面倒くさいことも言わなきゃいけないけど、親戚のおじさんはたまに見に来て可愛がってればいいですしね(笑)」
2003年頃からハロー!プロジェクトにハマり、2010年頃からは私立恵比寿中学を初めとしたさまざまなアイドルにハマるなど、DD(※)っぷりが加速する。この頃から握手会などの接触イベントにも参加するようになり、“認知厨(※※)”となる。「何回か握手会とかでリピートすると顔を覚えられ、サイン会などで名前を書いてもらって名前を覚えられたりしますね。ブログのコメントや手紙を書いたことをきっかけに覚えてもらうこともあります。認知されると会話も落ち着いてできますね。一度覚えてもらえば多少は間が空いても大丈夫ですし」
[※DD……誰でも大好きの略。侮蔑的な意味で使われることも]
[※※認知厨……自分の存在をアイドルに認知してもらいたいヲタクのこと]
ティーン向けショップでアイドルのプレゼントを購入している
DDや認知厨っぷりが加速したコロラドさんは、メンバーにプレゼントや手紙を渡すようになる。「プレゼントは、その子の好みを聞いてCDやDVDをあげる場合もあれば、キャラクターものをあげることもありますね。渋谷のディズニーストアに買いに行ったり。洋服をあげたときは、ティーン向けショップで正直に“アイドルにあげる洋服を探しています。中2で、身長はこのくらいです”って申告して店員さんに探してもらいました。そういうところはストレートに言ったほうがいいですよ!」
コロラドさんの今まで心に残ったアイドル現場ベストスリー
(順位が付けられないので順不同で)
みにちあ☆ベアーズ解散ライブat東放学園StudioDee(2014年)
みにちあ☆ベアーズはスターダストプロモーションに所属する、小学生女子を中心としたチアグループだ。「みにちあは、メンバーも可愛い子が揃っていて、ステージでのパフォーマンスも素晴らしかったです。また、メンバー・運営・ヲタのいい三角形ができていて、メンバーも運営も僕らを信頼してくれてて、ヲタも一線を越えない距離で応援していてとてもいい現場でした。解散ライブでは涙腺が緩む場面もありましたが、すがすがしい気持ちで終わりましたね」
アイドルネッサンス1周年記念ライブ『アキバで1周年を感謝すルネッサンス!!』at AKIBAカルチャーズ劇場(2015年)
現在のコロラドさんの本現場であるアイドルネッサンスは、ソニーミュージックアーティスツ所属のユニットで、ソニーの先輩たちの名曲をカバーし“名曲ルネッサンス”を掲げるアイドルグループだ。「ルネッサンスはみんな歌もダンスも上手で、ステージングも結構な運動量があるにもかかわらず、このライブでは衣装替え以外は23曲をノンストップで披露してくれて。途中までは“どこまで続くんだろう?”と思いつつ、終盤は“ノンストップだ! あと何曲!?”という感じで、気合いの入ったとても良いライブでした」
ハコイリムスメバスツアー『初夏のバスツアーin群馬』(2015年)
前述したアイドルネッサンスと同じく、コロラドさんの本現場のハコイリ♡ムスメだ。バスツアーの感想を語るコロラドさんの表情は、多幸感にあふれていた。「ハコムスのバスツアーでは本当に色んなことがあったんですけど、1番面白かったのはメンバーとヲタがともに参加するスポーツ大会でした。若い20代のヲタの中で50代の僕が一緒にスポーツするのは体力的に厳しいものもありましたが(笑)、大縄飛びでは、僕が何度か引っかかると推しの子が目の前に入れ替わってきて“私に合わせて飛んでっ!”って言ってくれて。キツかったけど、天国のようでしたね……(遠くを見つめながら)。僕は通っているジムのトレーナーさんから、年齢的に心拍数を150以上にしてはいけないと言われてるのに、このハプニングのお陰で200くらいは余裕でいってたと思います。本当の意味での天国にいかなくて良かったです(笑)」
コロラドさんの心の一節
「二度と無い季節が通り過ぎていくよ」
(アイドルネッサンス『17才』より)
今回ドルヲタ図鑑の記念すべき1人目、コロラドさんを取材してみて感じたことは“人が、自分の好きなものについて語っているときの目って本当にキラキラと輝いているんだなぁ”ということ。加えて、コロラドさんの記憶力の良さに驚かされた。いつ何が起こったかを正確な年号で話してくれて、ドルヲタ以前に人としての頭の良さを随所に感じさせてくれた。話せば話すほど味わい深さを感じさせてくれる人物であった。
この「二度と無い季節が通り過ぎていくよ」という歌詞は、コロラドさんが今1番好きなアイドル曲の一節だ。“二度と無い季節”の大切さを噛み締めながら、自分の好きなものに真摯に向き合うコロラドさん。今後の目標は「1年でも多くスタンディング現場に行けるように、健康でいること」だという。今後も、アイドルや野球を見守り応援するコロラドさんのうしろ姿を、現場で眺めたい。
【コロラドさんのドルヲタ年表】 | |
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1967年(7歳) | “ブギの女王”こと笠置シヅ子と握手、芸能人との初接触 |
1977年(17歳) | 男子校に在学中、クラスで回し読みされていた雑誌のグラビアで見かけた大場久美子をきっかけにアイドルに興味を持つ |
1982年(22歳) | 石川秀美のライブでアイドル現場デビュー |
1987年(27歳) | 初めての海外旅行で、MLB(メジャーリーグベースボール)の試合観戦デビュー |
1990年代(30代)ほぼ毎年海外に遠征し、MLBの試合を観戦する。海外観戦は4ヶ国、43都市で100試合以上 | |
2000年(40歳) | 現在の推しであるハコイリ♡ムスメの神岡実希、アイドルネッサンスの石野理子が誕生 |
2003年(43歳) | ハロー!プロジェクトを中心に一気に現場回数が増える |
2004年(44歳) | Berryz工房にハマる(清水佐紀推し) |
2008年(48歳) | 真野恵里菜にハマる |
2010年(50歳) | 私立恵比寿中学、東京女子流、Passpo☆にハマりDDに加速がかかる(この年頃から認知厨になる) |
2011年(51歳) | 会社を早期退職する |
2013年(53歳) | スターダストプロダクションのムック本イベントで中山莉子(現・私立恵比寿中学)に出会い、一目惚れ |
2014年(54歳) | ハコイリ♡ムスメ(神岡実希推し)、アイドルネッサンス(石野理子推し)にハマる |