僕は世界中のガチ恋おじさんの悲しみにホイミをしたい【推しメンが結婚しちゃった日記】

連載・コラム

[2017/9/8 12:00]

元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。【ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること】


3月22日 水曜日

「僕は世界中のガチ恋おじさんの悲しみにホイミをしたい」

 とあるラーメン屋のカウンターで梨華ちゃんへのガチ恋について店主に話していたら、「ふちりんさん、あなたは普通じゃないよ」と言われ口論になり、最終的に店主に包丁で頸動脈を切られる夢を見ました。

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 僕は布団のなかで、しばしばいろんな人から「梨華ちゃんへの恋なんて叶うわけがない」「普通の恋愛をしろ」などと説教されたことを思い出しました。「叶うわけがない」と言われるほど僕の恋は燃え上がり、「普通の恋愛をしろ」と言われるほど僕の恋は燃え盛りました。
 恋ってそういうものなんじゃないかなあ、と思いました。ロジックではない。どれだけ正論を並べ立てても、我々が人間である以上、アイドルへのガチ恋はなくならないだろう。だから、ガチ恋にやぶれてしまった人に対してどういうケアをするかが、大事なのではないか。いまは追い打ちをかけるような説教こそあれ、そういったケアがほとんど為されていない。

 窓の外が薄暗くなってきて、自室でひとり寂しさを感じていると、大宮アイドール(アイドルカフェ)の常連さんが、僕を見るなりぎゅっと抱きしめてくれたことを思い出しました。その常連さんは、少し身体を離すと、「推しメンが人妻になったって問題ないよ。俺、人妻とふたりでよく飲みに行ったりするもん」と優しく言いました。そのとき僕は「そういうものなのか……。じゃあやっぱり梨華ちゃんの飲み友達を目指そうかな……」と思いました。

 室内が闇に満たされてきたので、電気をつけ、ベッドの上に腰を掛けました。よく考えたら僕は、いきつけのバーの熟女店員さん(人妻)とも友達のような仲だし、場末の居酒屋の熟女ママ(人妻)とも友達のような仲だ。もしかしたら梨華ちゃん(人妻)とも友達のような仲になれるかもしれないな……。焦らずゆっくり、ガチ恋を薄める努力をしていこう。それでいつか、梨華ちゃんとふたりでお酒を飲みながら昔のことについて語り合えたらいいな。

 なんだかんだと梨華ちゃんのことばかり考えていたら、僕はどうしても我慢ができなくなってきました。部屋のカーテンをおもむろに閉じ、梨華ちゃんの写真集をまくらの下から取り出しました。そして、水着姿のページを開き、いけないことをしてしまいました。「ああ、またやってしまった……。梨華ちゃんへのガチ恋を薄めていくには、いけないことをする回数も減らさなければならないのに。しばらくは壇蜜さんのお世話になるようにしよう」と思いました。

 深夜、ベッドに寝そべり白い天井を見つめながら、“推しメンが結婚してしまったあとのガチ恋おじさんの孤独”について考えはじめました。
 「梨華ちゃんのおのろけブログを見ていると、とりわけ深い孤独を感じる。それは、この世界から弾かれたような孤独であり、深い井戸の底に閉じ込められたような孤独だ。しかし僕は、ガチ恋おじさんのなかでも恵まれているほうかもしれない。梨華ちゃんが結婚したあと、友人やTwitterのフォロワーさん、メイドさんやアイドルに励ましの言葉をたくさんもらったから。ありがたい話だ。誰からも励ましの言葉をもらえないガチ恋おじさんのことを考えると、とても哀しい気持ちになる。僕はホイミスライム(※)として、アイドルの幸福よりも孤独なガチ恋おじさんの悲しみに興味がある。幸福な人にはホイミする必要がないから。僕は、世界中のガチ恋おじさんの悲しみにホイミをしたい」

 僕は、童貞のまま30歳を超えたので、ホイミスライムという名の魔法使いになったのです。

※ホイミスライム……ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズに登場するモンスター。ホイミという回復呪文が得意。


【著者紹介】

ふちりん●1980年生まれ、埼玉県出身。おひつじ座のA型。2003年頃より当時モーニング娘。のメンバーであった石川梨華へのガチ恋を開始。その赤裸々な想いを綴ったブログやTwitterが一部のアイドルファンの間で人気を呼ぶ。趣味は読書やサッカー観戦、アイドル鑑賞、ベースを弾くこと。好きな作家は村上春樹、太宰治、中村文則。

[ふちりん]