魔法が使えなくなってしまったかどうかは、自分ではよくわかりません【推しメンが結婚しちゃった日記】
元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。【ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること】
4月4日〜23日
魔法が使えなくなってしまったかどうかは、自分ではよくわかりません
4月4日 木曜日
今日は美人女医さんの個別診察会に行ってきました。「最近はある程度の距離をとって梨華さんと向き合っています」と言ったら、「え! すごい! 以前は距離をとるなんて考えられない状態だったじゃないですか。常に梨華さんのことが頭から離れなかったですよね。すごい進歩です!」と褒められ、お薬が減りました。順調にお薬の量が減ってきているので、このままいけば個別診察会に行くこともなくなってしまうかもしれません。美人女医さんの素敵な笑顔が見られなくなるのはとても寂しいです。
夜、PS3の『ウイニングイレブン』でオンライン対戦をしていたら、1匹の蚊が左腕にとまり、チューチューと血を吸い始めました。オンライン中なので阻止することができず、長いこと吸われ続けました。左腕に細い針が刺さって血が吸われている感覚が明確にあり、とても気色悪かったです。1匹の蚊はその後も僕のまわりをぷんぷんと飛び回ったけれど、心が優しすぎるので殺すことができませんでした。
4月5日 金曜日
最近親しくさせて頂いている女性(Sちゃん)が「大宮アイドールに行こうよ」と言うので、一緒に大宮アイドール(行きつけのアイドルカフェ)に行きました。ふたりでしっぽり飲んでいると、アイドルの子がやってきて、「ふたりはどんな関係ですか?」と尋ねます。親しくさせてはいただいているけど、付き合ってるかどうかはわからなかったので、「友達です」と答えました。
ふと気がつくと、Sちゃんの終電の時間が近づいています。お勘定をして店を出ました。このまま別れるのは寂しかったので、勇気を出して「家に遊びにいってもいいかな?」と尋ねると、「部屋を見られるのは恥ずかしいけど、いいよ」とのことでした。精液に血が混じるのも治っているし、僕はとうとうセックスをしてしまうのかもしれない。そう思って不安と期待で胸がドキドキしたけれど、彼女は女の子の日だったのでセックスはしませんでした。ホッとしたような残念なような複雑な気持ちで一緒に酒を飲み、別々の布団で寝ました。
4月6日 土曜日
ふたりでモーニングコーヒーを飲んでしばらくダラダラし、お昼頃に最寄り駅まで一緒に歩きました。ポカポカ陽気だったこともあり、途中で滝汗スイッチが入って、頭部から汗が噴き出してきました。Sちゃんに気づかれるのではないかと思い、挙動不審になりました。駅の改札口で手を振って別れたあと、ハンカチで汗を拭いながら駅のトイレに逃げ込み、個室のなかで15分くらい汗を拭きつづけ、やっと汗が落ち着きました。僕は多汗症のせいで普通の人間が送れる普通の人生を送ることができない。そう思ってとてもつらい気持ちになりました。
4月7日 日曜日
今日は選挙の日だったので、多汗症だけどがんばって投票しに行ってきました。エアリズムとロンTと薄いパーカーという軽装で行ったけど、投票所についたときには額に汗がにじんでおり、手早く投票を済ませて逃げるようにそこを出ました。貧しいし頭から汗が噴き出していたので、帰りに外食はしませんでした。「投票行って 外食するんだ♪」(※モーニング娘。『ザ☆ピ〜ス!』の歌詞)と簡単に言うけれど、貧しくて多汗症の僕にはどちらもハードルの高い行為だ。気軽に投票行って外食できる人のことが羨ましい。そう思いながら帰宅すると、頭部と顔が汗だくになっていました。扇風機の風に当たりつつ横になるといつの間にか眠りに落ち、梨華ちゃんが第2子を妊娠した夢を見ました。目を覚ますと夜になっており、またぞろ1匹の蚊が僕の部屋をぷんぷん飛び回っています。こいつは、僕が蚊の1匹も殺せない心の優しすぎる人間だとわかって完全に調子に乗っているな。ぶっ殺してやる!と思って手を振り上げたけれど、やっぱり殺せませんでした。
4月10日 水曜日
今日は僕の39歳の誕生日でした。去年は梨華ちゃんがブログにショートケーキの画像をアップするという私信があったから今年も期待していたのだけれど、ブログそのものが更新されず、「ふみゅう……」という気持ちになりました。しかしながら、両親がケーキを買って誕生日を祝ってくれたので嬉しかったです。
4月12日 金曜日
西武ライオンズの選手と元アイドルが真剣交際、というニュースを見て梨華ちゃんの熱愛報道のことを思い出し、つらい気持ちになりました。
ふたりのことを祝福するしかない状況、というのはガチ恋ヲタにとっては非常につらいです。もしお相手が悪人だったら、祝福せずにケチをつけることも許されるでしょう。しかしお相手が善良な人だと、ケチをつけることが許されません。泣きながら祝福するか、その場から逃げ出すしかないのです。西武ライオンズの選手と梨華ちゃんの熱愛報道が出たとき、僕はまったく祝福せずに逃げ出しました。まわりに合わせて無理に祝福する必要はないと思います。まずは自分の心を大切にするべきです。梨華ちゃんから逃げ出した僕は、水島広子著の『「ドロドロした嫉妬」がスーッと消える本』と『「心がボロボロ」がスーッとラクになる本』を熟読しました。両方とも僕の心に優しく寄り添ってくれて、とても癒されました。心を病んでいるガチ恋ヲタにはぜひ読んでもらいたい本です。
4月15日 月曜日
今朝は、梨華ちゃんの息子が成長して梨華ちゃんそっくりの顔になっており、不覚にも胸がときめいてしまった夢を見ました。もし梨華ちゃんが娘を産んだらきっと可愛らしい女の子になるんだろうな、見てみたいなと思います。けれど、「梨華ちゃんの娘の顔が見てみたいです」的なことは言いません。セクハラになりそうなので。
ところで、梨華ちゃんのブログが約1か月ぶりに更新されていました。「私は元気です。息子も元気です。娘のひめ(愛犬)も元気です」と書いてあったけれど、「夫も元気です」とは書いてなかったので、梨華ちゃんの優しさを感じました。この日記だけを見るとまるでシングルマザーみたいだな、と思いました。
4月17日 水曜日
Sちゃんに「焼肉を食べに行こうよ」と誘われて、焼肉を食べに行きました。汗をかくことが予想されたので、インターネットで買った汗止め薬を飲んで家を出ました。これを飲むと頭部からの汗は止まるけれど、手からの汗は止まりません。手汗のことを考えていたらさらに手汗が湧いてきたけれど、焼肉屋に行く途中で手をつなぐ事態にはならなかったので事なきを得ました。焼肉を食べながらSちゃんは言います。「40歳まで童貞でいると魔法が使えるようになるんだよね。あと1年待ったほうがいいのかな」と。僕(39歳)は「いや、30歳の時点で魔法が使えるようになっているから大丈夫だよ」と説明しました。
「どんな魔法が使えるの?」
「えーとね、回復魔法かな」
「セックスしたら魔法が使えなくなっちゃうの?」
「いや、どうだろう。それはしてみないとわからないな」
僕は安くてあまり美味しくない焼肉を食べながらビールを4杯くらい胃に流し込み、Sちゃんの家に再び遊びに行きました。そこでもまたビールを飲み、さらにウイスキーを呷りました。そしてシャワーを浴びて身体をきれいにし、淡い闇のなかで夢のように素敵な時間を過ごしました。魔法が使えなくなってしまったかどうかは、自分ではよくわかりません。
4月23日 火曜日
暑くて汗が噴き出してくるので、扇風機をつけました。ぐにゃぐにゃに歪んだフレームを見ていると、梨華ちゃんの熱愛報道が出たときに扇風機を殴ったり蹴ったり頭突きしたりしたことが思い出されます。あのときは辛かったなあ。よく苦しみを乗り切って、ここまで辿りついたものだなあ。そしてSちゃんのことを想いました。彼女は、梨華ちゃんの写真集を燃やそうとしたりしないし、年収が低くても怒ったりしないし、一緒に大宮アイドールに行ったりしてくれる素晴らしい女性だ。結婚したほうがいいのかもしれない。しかしよく考えたら、僕には貯金が300円しかない。結婚式を挙げることはできないし、結婚指輪を買うこともできない。そんな貧しすぎる男と結婚しようとする女性がいるだろうか。いやいない。結婚する人たちは、結婚式を挙げて、新婚旅行をして、結婚指輪を買うお金があってすごいなあ。僕みたいな貧しすぎる男でも結婚できるような、そんな世の中になったらいいのになあ。