童貞を喪失した心に余裕のあるヲタになったので大丈夫でした【推しメンが結婚しちゃった日記】

連載・コラム

[2019/5/20 12:00]

元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。【ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること】


5月1日〜13日

童貞を喪失した心に余裕のあるヲタになったので大丈夫でした


5月1日 水曜日

 僕は平成から令和に変わる瞬間、酔っぴらった状態で大宮行きの電車のなかにいました。前日に渋谷で姫乃たまさんの地下アイドル生活最後のライブを観て、そのあと友人たちと居酒屋バッハで遅くまでお酒を飲んだからです。

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 昨日は渋谷のライブ会場に行く途中に滝汗スイッチが入り、電車のなかで僕ひとりだけ頭からダラダラ汗を流していましたが、電車が混み始める前に汗がひいてきたので九死に一生を得ました。渋谷駅についてハチ公口から外に出ると、令和をカウントダウンしようとする若者たちが早くも集結しつつあり、熱気がむんむんで、ふたたび汗が噴き出してきました。小雨が降るなか、友人のせきねさんと待ち合わせているうちに汗が引いたけれど、ライブ会場まで急な坂を上ったりしたのでまた汗をかいてきて、会場前についたときには滝汗状態になっていました。この会場付近にいる人間たちのなかでもっとも汗をかいているのは僕にちがいない、というほどの汗です。僕は薄手のパーカーを脱ぎ、エアリズムとロンTだけという恰好になって、頭部の汗を拭いつづけました。雨に濡れたかのように装いながら。10数分してやっと汗が引いてきて、せきねさんとともに会場内に入りました。

 1階の16列の左端あたりが僕の席でした。そこに座って高ぶった神経を鎮めていると、右斜め前に座った男性がけっこうな汗をかき、タオルで拭っていたので親近感を覚えました。「彼と僕は、この会場でもっとも汗をかいている人間のひとりだ!」と思いました。入口でもらった冊子的なものに、姫乃たまさんからのメッセージが入っていました。そこには「人は誰しも、生きて、居る、それだけで世界に影響しています」と書いてあり、多汗症の僕でも生きていてもいいのかもしれない、という前向きな気持ちになれました。

 初めてライブで観る姫乃たまさんはとても可愛らしかったです。好きになりそうになりました。たまさんの曲たちは、脳みそをふんわりと撫でるような幻惑的な曲が多かったため、聴いていて気持ちよくなり眠くなってしまいましたが、たまさん曰く「居眠りしていても、いい」とのことだったので、眠くなっている状況ですらも楽しむことができました。

 そのあと、せきねさんたちと居酒屋バッハに行って乾杯をしました。しばらくすると、姫乃たまさんとチェキを撮っていたスカラベさんが駆け付け、また乾杯をしました。スカラベさんはとても幸せそうな顔をしており、その顔を見ていたら僕も幸せな気持ちになれました。スカラベさんが「ふちりんにプレゼントがあるんだ」と言い、A4サイズのビニール袋をかばんから取り出しました。「ありがとうございます」と言って受け取ると、そのなかには姫乃たまさんのセクシー写真集『私小説』と、メジャーデビューアルバム『パノラマ街道まっしぐら』が入っていました。どちらも欲しいと思っていたものなので、とても嬉しかったです。その場で写真集を広げて「エロいですね!」とか言いながら食い入るように見ていたら、せきねさんに写真を撮られていました。

5月3日 金曜日

 居酒屋バッハで飲んだときスカラベさんに「姫乃たま18時間イベントに登壇してもらえませんか」と頼まれ、酔った勢いでOKした僕は、両国RRRというイベント会場に電車で向かいました。ぽかぽか陽気だったため、会場に着くと汗が湧き出てきそうな感覚があったけれど、汗止め薬を飲んでいたので大丈夫でした。涼しい顔でみなさんに挨拶をし、瓶ビールをラッパ飲みしながら、スカラベさんとトークの打ち合わせをしました。姫乃たまさんのセクシー写真集『私小説』について語るということなので、僕の好きなページを開いて意見を申し述べました。スカラベさんによると、たまさんは「たまニー(たまさんでする自慰)」を容認しているとのことです。スカラベさんも居酒屋バッハで「ふちりん、たまニーしてもいいですよ」と言ってくれていたので、ふたりとも心が広いなあ!と思いました。たまさんとは以前トークイベントで共演したことがあるので、なんだか気恥ずかしくて、たまニーはしませんでした。代わりにリカニー(梨華ちゃんでする自慰)をしました。

 僕は登壇するまでのおよそ1時間半で瓶ビールやハイボールを4杯くらい飲み、「酔っぴらってきた~」という状態で登壇しました。隣には姫乃たまさんがいます。先日あの大きな会場でライブをしていた人が隣に座って僕と話をしていることが、なんとも不思議でした。僕はセクハラにならないように気をつけながら、セクシー写真集の具体的な使い方について話しました。たまさんは怒ったりすることなく笑顔で話を聞いてくれたので、たまさんの心は海のように広いなあ!と感激しました。僕のグラスが空になると、たまさんがハイボールをつくってくれます。僕はどんどんハイボールを飲んでしまい、登壇時の記憶の多くを喪失してしまいました。童貞を喪失してしまったことを告白したことは覚えています。会場のみんなが温かい拍手で祝福してくれました。たまさんは「じゃあ先日のライブに来たときのふちりんは童貞じゃなかったのね……」と感慨深げに語りました。

5月5日 日曜日

 3年半前に梨華ちゃんが出演した通販番組を見ました。イケメンの美容師さんが梨華ちゃんの髪の毛をいじる場面が出てきました。以前であればそんな場面を見たら嫉妬で頭がおかしくなっていただろうけど、童貞を喪失した心に余裕のあるヲタになったので大丈夫でした。その勢いで、13年半前に梨華ちゃんが出演したトーク番組『ごきげんよう』も見ました。ますだおかだの岡田さんが、梨華ちゃんのすぐ隣に座っています。以前の僕だったら距離の近すぎる岡田さんに対して強い憎しみを抱いていただろうけど、心に余裕のあるヲタなので大丈夫でした。この調子で、今まで心に余裕がなくて見られなかった梨華ちゃんの出演番組をどんどん見ていこうと思います。

5月13日 月曜日

 もう治ったと思っていたのに、先日の夜に自慰をしたら、鮮血そのものと言っても差し支えないような精液が出ました。僕は大きなショッキングを受け、これでしばらくはセックスができないな、と思って落ち込みました。動悸がして眠れないのでインターネットで「精液 血」を検索したところ、「泌尿器科に行ったら、前立腺の腫れを調べるためにケツの穴に指をつっこまれる」という情報を得て震え上がりました。なにそれ怖い! 泌尿器科になんて行きたくない!と思ったけれど、その後も自慰をするたびに鮮血のような精液が出るので、とうとう今日、泌尿器科に行くことを決意しました。ケツの穴に指をつっこまれるところを想像し、性行為をする前の生娘のような気持ちになりながら、泌尿器科の待合室で名前が呼ばれるのを待ちました。ケツの穴に指をつっこまれるのを覚悟していた僕だけれど、ハイテク医療器具のおかげで、ケツの穴に指をつっこまれることはありませんでした。気さくなおじさん医師に「前立腺はきれいな状態だね!」と褒められ、出血を止める薬などを処方されてルンルン気分で帰りました。

ふちりん

1980年生まれ、埼玉県出身。おひつじ座のA型。2003年頃より当時モーニング娘。のメンバーであった石川梨華へのガチ恋を開始。その赤裸々な想いを綴ったブログやTwitterが一部のアイドルファンの間で人気を呼ぶ。趣味は読書やサッカー観戦、アイドル鑑賞、ベースを弾くこと。好きな作家は村上春樹、太宰治、中村文則。