ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第19回:足立区モンスターハンター
足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!
すぐに始まる討伐クエスト
中学校にもだいぶ慣れて先輩後輩もできた頃、僕たちは戦国時代へと突入する。ギラギラを飛び越えて逆にキラキラしていたかもしれない。
すれ違う同年代の茶髪くんにはとりあえず「なんだあいつら?」とガンを飛ばす。彼らは言うまでもなく完全無罪だが、自らを奮い立たせ「あいつらは悪いやつだ」と正当化していた。そして「なに見てんだよ?」と言われるまで見続け、見てるのに「見てーねよ」と意味不明に絡む。そんなキラキラ生活をしていたある日、近くの学校の同級生から電話がかかってきた。
今思うと“ちょっとだけ絡んだことがある知り合い”というのは本当に厄介だ。電話かけてくるなりかなりイケイケな感じを出してくる。「で、なにが言いたいの?」と答えが出ないような話を聞き、どちら側も生意気判定で終了。次の電話では「番長誰だ?」となって、どんどん人を巻き込んでいく。
そんなやり取りのなかで迎えたのは「対A中」だ。A中に入学した同級生から、A中に転校してきた生徒がかなり荒れ狂ってるという情報が流れてきたのだ。システム的には『モンスターハンター』と同じ。討伐クエストが発生したのだ。
討伐クエストに向けて詳しく話を聞くと、その生徒は転校してきて早々に顔に絆創膏を貼っていたらしい……。そんな昭和のヤンキードラマテイストなやついるのか!可愛いじゃねーか!と噂はすぐに広まった。でも、絆創膏くんがやってることはゲーセンなどで弱そうなやつからかつあげをしたりぶっ飛ばしたり、まぁまぁえぐみがあった。
そんな絆創膏くんとタイマンを張りたいと言い出したのは、中学生なのにパンチパーマを巻いた鈴木だ。すぐに連絡して試合の日程を組もうとしたが、絆創膏くんがバックレまくる。逃げる逃げる。
絆創膏くんと連絡がとれない日々が続くなか、絆創膏くんとタイマンを張る前に練習試合をしておこうという話になった。そこでみんなの頭に浮かんだのはこの前電話をしてきたB中にいるイケイケのあいつだ。「B中でいいんじゃない?」「とりあえずB中やってから絆創膏でよくない?」と誰かが言った。そしてイケイケくんに電話してみた。
イケイケくん「やめといたほうがいいよ。こっち強いから」
さすがイケイケくん。いきなり火に油を注いでくる。
あら「とりあえずみんなキレてるから番長呼んで」
イケイケくん「こっち5人でいくけど」
あら「どういうこと?」
イケイケくん「こっち5人でいくからそっちも5人出してひとりずつタイマンしよう」
この仲介に慣れた感じ、こいつらやってんな! しかしもう後には引けないので話を受ける。
あら「いいよ。いつ?」
イケイケくん「今日でいいよ」
そして急遽試合が決まった。集合した僕たち5人は全員部活を休んで試合に向かった。鈴木は塾で不在。そう、鈴木はパンチパーマをあてていたにも関わらず塾に通っていたのだ。鈴木のための練習試合に鈴木なしで挑むことになった。
なんのための争いなのかは誰も聞かなかった。B中は自分たちの学校から土手を歩いて行ける距離にあった。試合会場は土手だ。金八先生がエンディングで歩いていたあの土手だ。僕たちは昭和な喧嘩場所で練習試合を迎えた。
集合場所はまさに「きんぱっつぁん」と警察官が口論しがちなところ。今では道が舗装されて車も通っているが、当時は歩行者と自転車しか通れず、長いストレートが続く道だった。集合場所に着くと遠方に横一列にきれいに並ぶ人影がみえてきた。A中だ。
A中の5人のバランスは最高だった。ドラゴンボールのギニュー特戦隊並みにバランスのとれた5人だった……。(次回へ続く)