ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第16回:強い男に憧れて(後半)

連載・コラム

[2019/1/17 12:00]

足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!


荒木JAPANの戦い

(前回からの続き)当時は携帯電話が流行り始めた頃で、僕は学校のなかではだいぶ早いほうの携帯保持者だった。D-501だっただろうか、1音とかで着メロが作れるやつを使っていた。電話に出てみた。

あら「もしもし」
?「わかる?」

あら「わかんないです」
?「小学校のときの大波だけど」

大波さんは市立の中学校にいった同級生の女の子だ。

あら「あーなんで番号知ってるの?」
大波さん「○○から聞いた。登録していい?」
あら「もうかけてんじゃん。いいよ。どうしたの?」
大波さん「誰かイケメン紹介してくれない?」

大波さんは女子校に行ったため男子との出会いがなく、男子を紹介してほしいという内容の電話だった。

あら「何人?」
大波さん「4人」
あら「いねーよ。イケメンって1学年にひとりルールだろ」
大波さん「じゃオススメ4人」
あら「プリクラある?」

当時はプリクラ大ブームでなにかとプリクラだった。

大波さん「じゃ送るね住所教えて」
あら「わかった」

当時の携帯はまだ画像を送れないのでやりとりは手紙が基本だった。

(現代のあら「いい時代だな!」)

そして、数日後手紙が届いた。そこにはいろいろと注文が書かれていた。

・身長は175以上
・坊主、デブはNG

星の王子さましか浮かばないような注文だった。とりあえず荒木JAPANを招集しなきゃと思い、スカウトに向かう。まずは女の子大好き『吉井』、そしてむっつりスケベ『竹本』、激エロ『河津』、大硬派『篠木』。こんな話にのってくれるのはこのメンバーしかいない。

4人に話すと、全員乗り気だった。最強の4人だ! プリクラを大波さんに送り返さないといけないと伝えると、その日のうちに近くのイトーヨーカドーの屋上で撮ることになった。フットワークの軽さがわたあめみたいな4人だ。次の日、みんなからそれぞれキメた顔と洋服で撮られたプリクラをもらった。すぐに手紙を投函して大波さんからの返信を待つ。

すると、すぐに大波さんから電話がきた。

大波さん「なにこれ」
あら「え? ベストメンバー」
大波さん(電話越しで何人かの笑い声)
あら「どう?」
大波さん「ないよ」
あら「なんで?」
大波さん「ちゃんとした人送って。よろしく」

大敗だった。荒木JAPANに落選を伝えると、大硬派の篠木が荒れる。

「ふざけんなよなめやがって。塾遅れたぞ」

と言いながら廊下の壁にパンチをした。何がだめだったのか、クラス1のイケメン相川に聞いてみた。相川はバスケ部でほかの学校まで名前が広まるくらいのモテボーイだった。

相川(爆笑)
あら「なんで?」
相川「いやいや、この4人で選抜はないよ。そもそも条件が全員アウトじゃん」
あら「こんな条件の人いないでしょ」
相川「いや、この条件出す女の子がどんだけかわいいの?って思うけど、せめて近づけてあげて」
あら「そういうことか」

条件は

・身長175センチ以上
・坊主
・デブはNG

選抜メンバーは

・吉井、ロン毛の小太り
・竹本、色白の小太り
・河津、角刈りの小太り
・大硬派の篠木、筋肉坊主

身長は全員170センチ以下だった。相川の冷静な見解でだいぶへこんでしまった4人とその日の夕方、みんなでカラオケに行き、Bluem of Youthの『ラストツアー 〜約束の場所へ〜』を熱唱したことは今でも忘れない。

ちなみに、相手の女の子は全員名門校のバレーボール部で、身長が170センチ以上あったから同じくらいの身長がよかったそうです。

特殊すぎるわ!

1月なのでめでたいダルマになった写真

あらぽん

1985年10月13日生まれ、東京都・足立区出身。幼馴染のみやぞんと2009年11月にANZEN漫才を結成。みやぞんの特技であるギター、そしてあらぽんのラップを組み合わせた音ネタで活動するようになり、『足立区の歌』などのネタで注目を集める。『とんねるずのみなさんのおかげでした』『世界の果てまでイッテQ!』などでみやぞんの激烈天然キャラが爆発して話題となり、今や大注目コンビのひとつとなっている。