ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第15回:強い男に憧れて(前半)

連載・コラム

[2019/1/4 12:00]

足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!


独特すぎる戦いのルール

中学生の頃は『ガチンコファイトクラブ』とか『池袋ウエストゲートパーク』とかK-1ブームの影響と思春期が重なり、強い男にみんな興味をもっていた。なので筋トレは毎日かかさずにやったり、休み時間に廊下で誰かしらが必ずボクシングのシャドウをやっていた。

壁を打ったりしていたけどだんだんと物足りなくなり、友達とシャドウを始めてK-1ごっこへ、そして徐々に本気になって最終的に喧嘩になるパターンが多かった。なんでそうなったかはわからないが、K-1ごっこの内容もだいぶ独特だった。ふいに誰かの肩に「アンディ・フグ!」と言ってかかと落としをくらわす。だいたいが足がそこまで上がらずに腕あたりに当たって「あぶねぇ~な」みたいなやりとりで終わる。

でも平和はそう長くは続かない。

「アンディ・フグ!」が肩にもろに入ってしまうこともあり、そうなると必ず喧嘩になる。喧嘩にはなるけどガチガチの殴り合いではなく、本気でキレるのはダサいというプライドなのか、なぜか「アンディ・フグ!」のルール上で戦う。「アンディ・フグ!」「アンディ・フグ!」と言い合いながらかかと落としをやり合うが、戦ってるうちに「上、攻められたら下、攻めたい」みたいな感覚になるのか「アンディ・フグ!」がきたらカウンターを合わせるような感じで「アーネスト・ホースト!」でローキックをするようになった。

アーネスト・ホーストは当時のK-1でローキックを駆使してバンバン敵をリングに沈めていたので「アーネスト・ホースト!」の掛け声はローキックに最適だった。「アンディ・フグ」に比べて「アーネスト・ホースト!」はネーミングは長いもののキックを繰り出すまでの時間が短く、「アンディ・フグ!」よりもミート率が高かった。

「アーネスト・ホースト!」の出現により格闘技ごっこがスピーディーになった。「アンディ・フグ!」は繰り出すまでの時間の長さが非効率であり、1アンディに対して2~3アーネストの攻撃になっていた。テンションがあがってくるとスピード重視になるのか、後半はほぼアーネストの打ち合いになる。

「アーネスト・ホースト!」「アーネスト・ホースト!」

K-1ごっこは進化が止まらない。

いつものように「アンディ・フグ!」から始まり「アーネスト・ホースト!」で蹴り合っていると、昨日の夜から考えてましたばりのひと呼吸空けた間合いで「マイク・ベルナルドッ!」の掛け声でひとりが正拳突きを繰り出した。

その瞬間、くらった本人は痛いと言っていたが、くらった本人も見てたみんなもツボだったのか廊下で笑い転げた。「マイクベル・ナルド!」はすぐに導入されK-1ごっこがさらにアップデートされた。

基本的な戦いの素材がすべて揃い、喧嘩がルール化された。そしてK-1ごっこが始まるといつしか喧嘩まで発展しないと物足りなくなっていた。毎日毎日、男くせー空き教室でそんなことばかりしていたあるとき。携帯に知らない番号から着信がきた……。(後半へ続く)

お正月なので静岡からみた富士山

あらぽん

1985年10月13日生まれ、東京都・足立区出身。幼馴染のみやぞんと2009年11月にANZEN漫才を結成。みやぞんの特技であるギター、そしてあらぽんのラップを組み合わせた音ネタで活動するようになり、『足立区の歌』などのネタで注目を集める。『とんねるずのみなさんのおかげでした』『世界の果てまでイッテQ!』などでみやぞんの激烈天然キャラが爆発して話題となり、今や大注目コンビのひとつとなっている。