ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第12回:ビー・バップ・小学生(後半)
足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!
「ちょデブっちょ狩り」(仮)の結末は……
(前回からの続き)同級生が「荒木くん探してる人が門にいるよ」と教えてくれた。ものすごく嫌な予感がしたので校舎の3階に登って窓からこっそり覗いてみると、門を完全に包囲した田口一派が集結していた。
まさに「ちょデブっちょ狩り」(仮)最終章。
上からみる陣形がすごかった。校門の両サイドの塀にひとりずつ隠れ、少し離れた場所に数名ずつ配置されていた。そして門の正面には田口と数名。やばいなと思って校内に隠れて覗いていると、田口一派はモラルは守るタイプのようで絶対に敷地内には入ってこなかった。
彼らは帰る生徒たちに「荒木まだいる?」と聞きながら、荒木少年が出てくるのを待っていた。時間が進むにつれて学校内に生徒がいなくなっていく。同級生の相田くんが門を通るときに田口に呼び止められた。
相田くんはクラブ活動帰りで体操着だった。
田口「お前が荒木?」
相田くん「違います」
田口「なんかムカつく」
そして相田くんは体操着に相田と書いてあるのに理不尽な理由でぶっとばされてしまう。完全なとばっちりだ。いよいよ校内には数名しか残っておらず終わりかなと思ったら、ここで登場、みやぞん。
事情を説明すると、田口一派がいなくなるまで一緒にいてくれると言ってくれた。もつべきものは友だなと思っていなくなるのを待っていたが、田口一派がとにかくしつこい。進展のないまま1時間近く待っていると、だんだんみやぞんも暇を持て余し始めた。そして会話もなくなってきたとき、ようやく田口一派が帰り始めた。
これで安心と思ってみやぞんをみたら、何を思ったのか急に窓を開け、田口一派にむかってひと言。
みやぞん「すいませーん、荒木ここにいます!」
あら「なにしてんだよ!」
慌てて隠れるが、ゾロゾロと田口一派が再び陣形を整えた。
あら「まじで何してんの?」
みやぞん「刺激がほしかった」
あら「しらねーよ!」
とりあえずこれからどうするか作戦会議をしようとしたら、みやぞんは「じゃそろばんだから先に帰るね」と言い出した。いやいや、そろばんまでの時間潰しだったんかい!と、まさかこんな近くに違う派閥があったことに驚かされた。
いま思えば信長もこんな感じだったのかなと思いつつ、ひとりで待つこと30分。料理でいえば角煮、煮てます?みたいな長さだ。そこで荒木少年を救う夕焼けのチャイムが鳴り響く。
田口一派はチャイムを聞くと門から離れていく。小学生は門限に弱い。チャイムに救われた瞬間だった。
「いや、救われてない。まだ問題がある」
いなくなったはいいが、田口一派の家は荒木少年と同じ地域。そう、帰り道が一緒なのだ。家に近づきながら待ち伏せできるし、自然と荒木少年も近づいてくるという蟻地獄プランが発動してしまった。
これはもう無理だと判断した荒木少年は職員室へ行き先生に相談することにした。担任の先生に事情を説明すると、家まで送ってくれることになった。片道30分の距離を途中リタイヤしていた先生が、がっつり1日授業したにも関わらず30分も歩くことになってしまった。
「ここからひとりで行けるよね?」
ここから家まであと半分。田口一派の襲撃の警戒と先生への申し訳なさでいつもよりも長く感じた。結局、何事もなく無事に家に到着、先生はそのまま帰っていった。
その後は田口一派も中学生になり、会わなくなってしばらく平和が続いた。
この話で何が言いたいのかというと……
「全部俺が悪い」
みなさますみませんでした。