ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第17回:UNOの女神(前半)

連載・コラム

[2019/2/6 12:00]

足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!


足立区にいた『UNOの女神』

ある日、中学校の同級生の吉井が言った。

吉井「ゲームで買ったらご褒美くれる先輩がいるって知ってる?」
あら「なにそれ? どういう意味?」
吉井「先輩に聞いたからほんとかわかんないけど、UNOで勝ったらやらせてくれるらしいんだよね」
あら「絶対うそ」

吉井は女の子が大好きだ。でもその頃は体験したこともなく、すべてが想像でファンタジーな世界で生きていた。誰よりも早く女の子関係の話に食いつき、すべてを聞き出すまで離さない。管理釣り場のニジマスばりに腹を空かせていた。そんな吉井が『UNOの女神』の話を仕入れたのは同じ小学校の先輩・境川くんからだった。境川くんは中学生にもかかわらずチョビヒゲを生やし、THEヤンキーという出で立ちの先輩だった。

ある日、みんなで直接、境川くんに話を聞いてみることになった。その女の子は他校に在学中の同い年、見た目は清楚だがとんでもない肉食系、家に遊びにいくとカードゲームのUNOが用意されていて勝負で勝ったら本当に始まるというのだ。中学生の僕たちには衝撃すぎる話だった。

でも、境川くんはその女の子が誰なのかは教えてくれなかった。どうしても突き止めたい吉井はそれから必要以上に境川くんとつるみ、誰なのか聞き出そうと毎日必死だった。そんな生活をしばらく続けたある日。満面の笑みを浮かべた吉井が近づいてきた。

吉井「試合決まりました」
あら「まじで!? どうしてそうなった?」
吉井「境川くんが仲介してくれた」

吉井の執念が勝った瞬間だった。詳しく話を聞くと、その女の子に会う条件は、携帯を持っていて家電を使わずに連絡をとれる人、そしてその子のタイプであることだった。吉井は携帯なし、タイプかもわからない、その女の子に会ったこともない状態だったが、境川くんが彼女を説得してくれて実際に会うことになったらしい。

その日から吉井は三度の飯よりもUNO! UNO! UNO! カード刷りきれるまでスキップ! スキップ! スキップ! 毎日UNO三昧だった。

そんな吉井を見ていたら、みんなが自然と応援態勢になり、身のまわりにいるUNOが強いやつを探しはじめた。UNO猛者探しはどんどん広がり、学校内に限らず知り合いの知り合い、後輩の兄貴、時にはカラオケボックスでUNO部屋を作って同い年くらいの人がいる部屋に声をかけて勝負をさせたこともあった。

その日は突然きた。

吉井「みなさん、ありがとうございました」
あら「まじ?」
吉井「昨日、試合が終わりました」(次回に続く)

芸人仲間と初詣

あらぽん

1985年10月13日生まれ、東京都・足立区出身。幼馴染のみやぞんと2009年11月にANZEN漫才を結成。みやぞんの特技であるギター、そしてあらぽんのラップを組み合わせた音ネタで活動するようになり、『足立区の歌』などのネタで注目を集める。『とんねるずのみなさんのおかげでした』『世界の果てまでイッテQ!』などでみやぞんの激烈天然キャラが爆発して話題となり、今や大注目コンビのひとつとなっている。