ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第24回:足立区モンスターハンター(4)
足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区のリアルをつづっていく新連載!
足立区合コンがはじまる
(前回からの続き)そう、僕らの中学時代はパラパラが大ブームを起こしていた。携帯電話から単音の『ナイト・オブ・ファイヤー』を流してパラパラの練習をはじめた女番長と女舎弟。しばらくするとついに荒木JAPANが現れた。
『ナイト・オブ・ファイヤー』の音がフェードアウトして「テーテーテテーテテーテレレレ」という荒木JAPANのテーマが流れた気がした。
吉井「遅れてごめん」
河津「……」
篠木「こんちわー」
3人とも見たことないおNEWな洋服でばっちりキメていた。気持ちテンションも高かったと思う。吉井と篠木は上野の外国人の店で買ったというB系ファッションで気合いの現れがすごかった。だが、河津は少し様子がおかしく髭のおじさんがプリントされたトレーナーを着ていた。
あら「それなに?」
河津「うちのお父さんがたまたま持ってたんだよね」
あら「え? だからなにそれ?」
河津「サンタフェ」
あら「そんなんじゃないでしょ」
吉井「それサンタフェじゃなくてキャプテンサンタじゃない?」
河津「違うの?」
吉井「違うね。というかサンタフェ超高いよ」
あら「お前、日曜大工じゃん」
河津「まじか」
中学生の河津にはキャプテンサンタを着こなすにはまだ早いなと感じながらも、キャプテンサンタ河津とメードイン上野なB系吉井と篠木、女番長、女舎弟、インテリ眼鏡のみき、個性あふれるメンバーが揃い初めての合コン的なことがはじまった。
ロン毛がひととおりメンバーを紹介し、それぞれが話をはじめる。しかし、荒木JAPANは緊張なのか照れなのか荒木JAPAN同士でしか話さない。女番長たちからはこれなんなの?という空気とパラパラがガンガンに流れていた。すると無口だったキャプテンサンタ河津が勝負に出た。
河津「みきちゃんはなに中?」
嘘だろ! 河津、そこは負け試合だぞ!
キャプテンサンタ河津はインテリ眼鏡のみきをロックオンしはじめた。ほんの数分前の出来事を知らないキャプテンサンタ河津がインテリ眼鏡のみきをグイグイ攻める。そして吉井と篠木はふたりで話し込み、まさかの同中の女子の話をはじめて、挙げ句の果てには
「ヤンキー苦手なんだよね」
「なんか話しにくい」
と愚痴をこぼしはじめた。まじか。まったく役にたたない荒木JAPAN。残すはキャプテンサンタ河津。奇跡を見届けようと河津方向に視線を移すと、なんと攻めた河津がインテリ眼鏡のみきちゃんを別のベンチに誘ってふたりで座っていた。
あら「ロン毛キレたりしない?」
ロン毛「なんで? 別にいいよ。たぶん無理だけどね」
女番長「ロン毛~」
ロン毛「お前らしゃべれよ」
女番長「先輩に呼ばれたから帰るわ~」
ロン毛「は? まじねーよお前ら」
女番長「しょうがないじゃん」
ロン毛「うぜーよ。いけよ」
しびれを切らし携帯の充電も切らした女番長が帰宅宣言。ロン毛、俺たちのせいだ。ごめんなロン毛。ロン毛は原因はわかっているのに俺らを責めないという男気をみせ、女番長たちに強く当たった。当たられた女番長たちはムッとしながらもハイビスカス号に乗って去っていった。
あとは河津の恋の行方だ。甘酸っぱい恋を想像したが、次に聞こえてきたのはインテリ眼鏡のみきちゃんの悲鳴だった。
インテリ眼鏡みき「キャ~~」
一同「!?」
インテリ眼鏡のみき「まじ無理なんだけど」
ロン毛「どうした?」
インテリ眼鏡のみき「まじキモいんだけど」
ロン毛「なになに?」
インテリ眼鏡のみき「なんかいきなりキスしようとしてきた」
どういうことか聞いてみた。話によると攻めすぎた河津が距離感も流れもすべて見失い、いきなり手を握りキスを求めたらしい。
ロン毛「ウケる。しろよ」
インテリ眼鏡のみき「ないでしょ。私帰る」
ロン毛「一応番号だけ交換しろよ」
インテリ眼鏡のみき「教えといて」
教えんのかい!
河津の勝利なのか?よくわからない展開で話は進み、女番長含め会話もほぼない人同士で番号だけ交換することになった。そんなことも知らず、インテリ眼鏡のみきちゃんがいなくなったベンチでずっとうなだれているキャプテンサンタ河津。誰もかける言葉がみつからなかった。少し間を置き、キャプテンサンタ河津は恥ずかしくなったのか何も言わずに自転車に乗って帰ってしまった。こんなときでもバックプリントのキャプテンサンタは微笑んでいた。
ロン毛「もっと話せばよかったのに」
吉井「なんかヤンキーすぎてうまく話せなかった」
ロン毛「お前らのほうがガラわりーよ」
あら「惨敗でよろしいですか?」
吉井「惨敗です」
こうして僕たちの初めての合コンはなんともいえないあと味の悪さを残して幕を閉じた。荒木JAPANの土ー手の悲劇である。