まさに彼の人生の変化が描かれたジャケット〜バディ・ガイ『ザ・ブルース・イズ・アライヴ・アンド・ウェル』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2019/9/11 12:00]

しかし2018年に発売したバディの新譜『ザ・ブルース・イズ・アライヴ・アンド・ウェル』では、およそ80歳を超えているとは思えないほどの若々しさをみせつけてくれている。声だけ聴いてもまだ30代か40代くらいに聴こえるし、ギタープレイも50年前と比べてもいまだに瑞々しくパワフルである。『エンド・オブ・ザ・ライン』では「自分は終着駅のようだ」と歌いながらも、「この世を去るその日まで俺はブルースを守り続けよう」とも言っている。ここでの彼からは取り残された者の感傷的な気持ちのようなものはあまり感じられない。むしろどこか能天気な印象さえ受ける。まるで人生を全力で生きた男のある種の悟りの境地のような。

ジャケットではまさに彼の人生の変化をわかりやすく描いている。ブックレットの表紙と初めのページでは彼が生まれ育ったアメリカ南部の土臭い風景と地味な服装。

みかんとかくれそう。

後半のページでは大都会シカゴでプロミュージシャンとして大成功を収め、服装もハイセンスに決めたオシャレな姿。

いいバー知ってそう。

とりあえずどの写真でも笑顔でいることから、つらい極貧時代も含め今となってはいい人生だったと思えるようになったということなのだろう。そう考えるとシンプルながら彼だからこそ深みのあるジャケットになっていると思う。

そして彼がこんなにも笑っていられる一因として、頼れる素晴らしい息子たちの存在があるような気がする。1950年代、ブルースは『ロック』という名の最高の息子を生み出した。そして父であるブルースを大尊敬するストーンズやクラプトン、他多くの優秀な息子達の功績によってブルースの遺伝子は脈々と後世に受け継がれている。最高の息子から最高の孫へ。そして最高の孫からさらにその子へ……。

例え本物はいなくなってもその偉大なる青い血は決して絶えることはない。少なくとも僕はそう信じたい。

・・・・・・

何かもう死んだみたいな書き方になってしまった。バディおじいちゃんはまだまだ元気です。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。