圧倒的名盤だが気になるのはジャケット右下……〜ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー『チープ・スリル』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2019/10/16 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第63回:圧倒的名盤だが気になるのはジャケット右下……


今回ご紹介するのはこちら。

ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー『チープ・スリル』(1968年)

<耳マンのそのほかの記事>

ロックというカテゴリーのみならず、あらゆるジャンルを含めたうえでも20世紀最高の女性シンガーとして名前があがるジャニス・ジョプリン。ミュージシャンとしての活動期間は極端に短く、27歳で死を迎えるまでのほんの数年間の間に彼女の歌声は音楽界に巨大な足跡を残した。

孤立していた学生時代。校内では「最も醜い“男”」という屈辱的な呼び名を与えられ、愛されることに飢えていた彼女の唯一の心の支えは音楽。そんな彼女の体から発せられる声はただ単に「いい歌声」という範囲を超えた、純粋にして強烈なむき出しの魂そのもの。そんな彼女の歌声が世に与えたインパクトはすさまじく、「白人の女性でもブルースを歌える」ことを見事に証明してみせたのである(ちなみにお笑いコンビ、ゆにばーすのはらちゃんは見た目といい声といい「イエー」の言い方といいジャニスにそっくりなので、絶対にジャニスに憧れていると思って本人に聞いてみたら知ってすらいなかったというどうでもいい思い出があります)。

『チープ・スリル』はジャニスのブレイクのきっかけにもなった大ヒットアルバム。ジャニス加入以前から活動していたロックバンド、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーが、当時勢いのあったジェファーソン・エアプレインのように女性ボーカルを入れようとしていたときにジャニスを誘いこの編成となる。このアルバム発売の前年に行われた音楽フェス、モンタレー・ポップ・フェスティバルでのバンドの強力なパフォーマンスが評判となり、アルバムにはライブ音源が収録され、ジャニスの鬼気迫るボーカルのみならず、バンドの名演も相まってロック史に燦然と輝く名盤として語り継がれることとなった。なかでも『サマータイム』の情感あふれるジャニスの歌声とそれにも渡り合うギターソロは圧巻である。(次ページへ)