形容するのは難しいが「何かいい」アルバム〜ドリームタイド『ドリームス・フォー・ザ・デアリング』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2019/10/9 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第62回:形容するのは難しいが「何かいい」アルバム


今回ご紹介するのはこちら。

ドリームタイド『ドリームス・フォー・ザ・デアリング』(2003年)

<耳マンのそのほかの記事>

この連載で2回目の紹介となるドイツのメロディアス・ハードロックバンド、ドリームタイド。もともとはフェア・ウォーニングという日本でもかなり人気のあったバンドのギタリストである“メロディの魔術師”ことヘルゲ・エンゲルケ(妖怪みてえな名前)が中心となってフェア・ウォーニングの活動休止後に始めたバンドである。

大空を飛翔するかのようなフェア・ウォーニングの音楽性とは対照的に、ドリームタイドには大地を一歩一歩進んでいくようなヘヴィさと男臭さがある。そのぶんメロディもフェア・ウォーニングのように一度聴いただけで大きなインパクトを与えられるキャッチーさはないが、聴きこんでいけばフェア・ウォーニングをすら上回る素晴らしいメロディがあることに気づくはずだ。彼らのセカンドアルバムである『ドリームス・フォー・ザ・デアリング』も、しっかり聴き込めば全編が素晴らしい楽曲ばかりであり、また数曲のキラーチューンともいえる曲があるのがわかる(個人的には『MAN ON A MISSION』『SWEET BABYLON』はロックの歴史に残したいほどの名曲)。また、ファーストアルバムではボーカル、オラフ・ゼンクバイルのやや苦しそうに高音を出しているところが気になったが、本作では彼の歌唱力も飛躍的に上がっており、高音にも無理がなく、もう「この曲をフェア・ウォーニングのトミー・ハートが歌っていたら……」などと思うこともないくらいに彼独自の魅力を打ち出すことに成功している。(次ページへ)