キースの目つきにだけはロックを感じるけど……〜ザ・ローリング・ストーンズ『ダーティ・ワーク』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編(第60回):キースの目つきにだけはロックを感じるけど……
今月もやってきたるは番外編。どうせ本人は見ていないであろうことをいいことに今月も好き勝手書かせていただきます。ひどいね現代人。
ザ・ローリング・ストーンズ『ダーティ・ワーク』(1986年)
今回は大好きなローリング・ストーンズから1980年代の問題作『ダーティ・ワーク』を。この作品が問題作と言われているのはまず当時のメンバー間の関係、特にミック・ジャガーとキース・リチャーズの確執によるところが大きい。ソロ活動に意識が向いているミックとストーンズとしてのアルバム製作にこだわろうとするキース。そんなバンドの中心ともいえるふたりの確執は音楽性にも影響し、キース主体で作ったアルバムだけにストレートなロックンロールがメインとなってはいるが、いかにも1980年代らしいダンサンブルなシンセサイザーサウンドを取り入れた曲などあまりストーンズらしくない面もみられ、少々散漫な印象を受けるアルバムとなった。
ただ『ONE HIT(TO THE BODY)』や『DIRTY WORK』などの名曲もありかっこいいギターフレーズも随所で聴けはする。ちなみに『ONE HIT(TO THE BODY)』のミュージックビデオではミックとキースが当時の仲の悪さを表すかのようにガンを飛ばし合ったりどつき合ったりしている。かと思ったら急に笑いあったりもしているのだが(情緒不安定か)。
だた何よりもストーンズにとって大きな事件となったのが、アルバム完成直後に初期の頃から縁の下の力持ち的にストーンズを支え、6人目のストーンズとも言われたピアニストのイアン・スチュワートが心臓発作で亡くなったことだ。メンバーの誰からも信頼される男だっただけにこれには皆精神的に相当堪えたようで、それもあってこの時期がストーンズ最大の低迷期と言われている所以である。(次ページへ)