デザイナーにアイデアが伝わっていなかった……?〜レッド・ツェッペリン『レッド・ツェッペリン III』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
確かにハードなエレクトリックサウンドこそツェッペリンだと思っている人からすればこの変化にショックを受けるのもわかる。ただ僕に言わせればサウンド面の変化こそあるものの、その完成度に関してはまったく過去2作に劣るとは思わない。彼らの曲ではもっとも有名かも知れない『移民の歌』など、これまでと同様のエレクトリックなサウンドも前半では聴けるし、アコースティックな曲においてもツェッペリンの魔力は健在である。特に古い民謡をツェッペリン節でアレンジした『ギャロウズ・ポウル』(歌詞がすげえ)はジミー・ペイジ本人が「最高傑作のひとつ」と言っている通りの鳥肌ものの名曲である。それにこのサウンドの変化によりツェッペリンは音楽性の幅の広がりをみせ、それがあの『天国への階段』を擁する名作と名高い次回作『レッド・ツェッペリン IV』につながるのだから、改めてこのアルバムの重要性は見直されるべきだと思う。
ただしジャケットはヒドい。とってもヒドい。
そもそもこのジャケット、もともとのジミー・ペイジのアイデアがデザイナーに明確に伝わっておらず、ペイジ的には田舎で感じた自然の営みを表現するためにジャケットに大小さまざまな穴が開いており、中に仕掛けられたディスクが回転して絵が穴から見えるというイメージだったらしいのだが、肝心のデザインがたださまざまなモチーフを掛け合わせただけのコラージュのようになってしまい、ペイジの理想とはかけ離れたものになってしまったらしいのだ。
まあその全体のデザインもそうなのだが、モコモコとしたバンドロゴがまただいぶ変だ。あのハードロックの神様レッド・ツェッペリンのアルバムがこれではまるで子ども向けの童謡集みたいである。母親が子ども向けの曲がたくさん入っていると思って購入して子どもの前で流したら『移民の歌』が始まる……。おそらくその子は数年のうちにアルコールを求めるようになるだろう。
つまりツェッペリンも子どももこのアルバムによって天国への階段に近づくというわけである。
何か?