地味なのに印象的という珍しいパターン〜ジュディ・シル『ハート・フード』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
[2019/11/6 12:00]
『ハート・フード』はそんな彼女のセカンドアルバム。内容的には僕はファーストアルバムのほうが優れているとは思うが、ここは『音楽“ジャケット”美術館』。ジャケットという観点でこちらを取り上げさせていただいた。
はっきり言って決してストレートにオシャレとは言えない。むしろ地味なほうである。それはおそらく写真のせいだろう。ファーストアルバムでは彼女の表情や角度的にもアーティスト然としたオーラを発しているのだが、このアルバムでは顔もうつむいていてとてもアルバムジャケットのために撮られた写真とは思えない。むしろ何気ない日常の瞬間を切り取っただけの写真のようにみえる。しかし、狙ってのことなのかどうかはともかく、結果的にこの写真のほうがジュディ・シルという人間の内面をストレートに映し出しているようにみえるのだ。彼女の人生を情報だけで幸せだったか不幸だったか決めることなどできないが、この物憂げな表情とどこか陰のあるオーラ。こちらのほうが彼女らしいと僕は感じてしまうのである。地味なのに印象的、というちょっと珍しいパターンかもしれない。
彼女のように優れた才能を持ちながらそれに見合った評価を生前にされなかったアーティストはいつの時代もあとを絶たない。そしてこれからもずっとあとを絶たないのだろう。
この問題は非常に根深いのでうかつに発言はできかねるところだが、ひとつだけ言えるとしたら「とりあえず聴け」。