錚々たる顔ぶれはまさに妖怪大戦争〜スラッシュ『スラッシュ』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2019/11/13 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第67回:錚々たる顔ぶれはまさに妖怪大戦争


今回ご紹介するのはこちら。

スラッシュ『スラッシュ』(2010年)

言わずと知れたハードロック界屈指のギターヒーロー。ロン毛にシルクハットにグラサンという姿がもはや記号のように定着している個性的な出で立ち。世界一レスポールが似合う男。1980年代最強のバンド、ガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト。

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1980年代のロックギター界といえばイングヴェイ・マルムスティーンやエディ・ヴァン・ヘイレンの台頭により、彼らの表面上の個性のみをなぞるように真似するギタリストが続出し、まるで競技のようにいかに速く、いかにテクニカルに弾くかが重要視される時代であった。そんな時代にスラッシュはまるでジミー・ペイジのごとくテクニックは二の次、個性重視のブルージーでエモーショナルなプレイで世のロック小僧たちに古典的なスタイルの素晴らしさを思い知らせたのである(芸人も見習うべき)。

ガンズ・アンド・ローゼズ自体は数枚の世を騒がせるカリスマ的なアルバムをリリースしながらも、スラッシュとボーカルのアクセル・ローズの不和により長い間活動休止状態になっていた。その間スラッシュはいくつかの別プロジェクトをこなすことになるのだが、そのひとつがこれ。純粋なソロアルバムとしては初となる同作だが、最大の特徴は曲ごとにさまざまなゲストミュージシャンが参加したお祭り的なアルバムであるということ。これは過去にはサンタナなどもやっていたことだ。そしてさすがはスラッシュ、そのゲストの顔ぶれがすごい。オジー・オズボーン、レミー・キルミスター、イギー・ポップなどのレジェンド級からデイヴ・グロールやキッド・ロックといった大物、有名ではないがのちにスラッシュのお気に入りとなりライブやアルバムでメインボーカルを務めることになるマイルス・ケネディ、女性ではブラック・アイド・ピーズのファーギー、そして唯一の日本人としてB'zの稲葉浩志という、まさに怪獣大戦争ともいうべき錚々たるメンツを呼び寄せているのである。しかも驚きなのは、楽曲が各ゲストの個性に合わせ様々なタイプのものが混同しており、しかもスラッシュのギタープレイもあらゆるタイプの楽曲にすんなりと馴染んでいるのである。正直これほど器用なギタリストだとは思っていなかった。本当に底の知れない男である。(次ページへ)