彼らのアルバムのなかでは影の薄い作品?~MR.BIG『アクチュアル・サイズ』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
[2019/12/11 12:00]
ただこの時期はバンド内の人間関係的はかなり悪い時期で、特にボーカルのエリック・マーティンとベースのビリー・シーンの仲が悪く、結局このアルバム発表後間もなくしてバンドは解散してしまう。ちなみにアルバム収録の『SHINE』のミュージックビデオでは普段本当に楽しそうにベースを弾くビリーが完全に無表情の棒立ち状態で、トイレマークがベースを弾いているのかと思ってしまったくらいだ。そんなドロドロした時期に出たアルバムなのでファンからすれば印象がよくないというのもあるかもしれない。タイトルもMR.BIGというバンド名自体にはふさわしい「等身大」という意味だが、よりによってこの時期につけるかとも思う。
しかし純粋にジャケットのデザインそのものはいいと思う。表紙もそうだが、ブックレットのなかでもMR.BIGという名のとおり巨大化したメンバーが当たり前のように普通に街でくつろいだりしていておもしろい。それと個人的によく思うのが、ロックのアルバムはジャケットに子どもを起用するとオシャレになりやすいというのがある気がする。多分ロックのイメージと純粋な子どもというある種ミスマッチとも取れる組み合わせのギャップがいい化学反応を起こしやすいということなのだろう(スコーピオンズの『ヴァージン・キラー』みたいなのは例外)。
彼らはその後和解し2009年にオリジナルメンバーで再結成、順調に活動を続けていたところ、ドラムのパット・トーピーが2018年にパーキンソン病の悪化により亡くなってしまう。偉大なドラマーを失った穴は大きいが、それを乗り越えればバンドはかつてない絆で結ばれ、次回作はすごいアルバムになるのではないかと勝手に思っていたりするので、彼らにはぜひバンドを続けていってもらいたいものである。