生命が宿っているかのように“歌う”名演の数々~葉加瀬太郎『The Best Track』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2019/12/18 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第72回:生命が宿っているかのように“歌う”名演の数々


今回ご紹介するのはこちら。

葉加瀬太郎『The Best Track』(2002年)

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日本人バイオリニストと聞いて誰もがまず名前が浮かべるのがこの人だと思う。メディア露出が多いうえ、ボリュームのある髪の毛を激しく振り乱しながら演奏するイメージがものまね芸人などの餌食となりやすいため、キャラクターとしても際立ったところがあるということだろう。

しかし何より重要なのはその音楽性である。この人の音楽はとにかくわかりやすい。バイオリンといえばクラシックのイメージが強く、クラシックは敷居が高いイメージがあると思うが、この人が展開する音楽はクラシックとポップスのちょうど中間のようなところに位置し、クラシックの上品な雰囲気のなかにポップスのキャッチーなメロディが融合した、非常に大衆性の高い音楽なのである。それはあの有名な『情熱大陸』や『Etupirka』を聴けばすぐに理解できると思う。クラシカルクロスオーバーというジャンルがあるがそれに当たるだろうか。(次ページへ)