彼らのアルバムのなかでは影の薄い作品?~MR.BIG『アクチュアル・サイズ』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2019/12/11 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第71回:彼らのアルバムのなかでは影の薄い作品?


今回ご紹介するのはこちら。

MR.BIG『アクチュアル・サイズ』(2001年)

<耳マンのそのほかの記事>

過去に一度この連載でも紹介した一般知名度も高く日本でも大人気のアメリカンハードロックバンド。ハードロック、ヘヴィメタルが衰退し始める1990年代に入る少し前に滑り込みでデビューしてブレイク。アコースティックバラード『To Be With You』は全米ナンバーワンヒットとなった。

このバンドの最大の特徴はなんといってもそのずば抜けた演奏テクニック。メンバー全員が圧倒的な超絶技巧の持ち主で、ただでさえテクニックが重要視されるメタルの世界でも技術面で彼らを超えるバンドは存在しないかもしれないほどのレベル。しかし音楽性は1970年代風の古典的なハードロックで、毒々しさを感じさせない健康的で大衆性の高い音楽スタイルなので、ロック初心者にも安心して勧められるバンドである。

『アクチュアル・サイズ』は彼らの6枚目のスタジオアルバム。もともとのオリジナルメンバーだったギタリストのポール・ギルバートが脱退し、前作『ゲット・オーヴァー・イット』から後任として参加したリッチー・コッツェンを迎えての2枚目のアルバム。ポールもリッチーも圧倒的なテクニックを誇るギタリストだが、華やかなプレイスタイルのポールに比べてリッチーはどちらかというとブルージーで渋味のあるプレイをするタイプなので、ポール時代からのファンからすればリッチーが加入したことで全体的に地味になったという印象があったようだ。

しかし作曲能力も高く歌も上手いリッチーがバンドにもたらした色は決してマイナスなものではなく、作品の質も昔より劣っているということはまったくない。むしろ個人的には瞬時に彼とわかる個性的なギターサウンドはポールよりも好きだったりする。『アクチュアル・サイズ』も彼らのアルバムのなかでは割と影の薄い扱いをうけてしまっているが、実際は楽曲も粒揃いで聴きどころの多い充実した内容のアルバムである。(次ページへ)