サザン・ロックの三種の神器がまったく見当たらない〜リトル・フィート『ディキシー・チキン』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2020/1/29 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


番外編〜残念なジャケット〜(第77回):サザン・ロック三種の神器がまったく見当たらない


光陰矢の如し。年が明けて早速最初の最終水曜日である。今年もヒドすぎるジャケット紹介のコーナーがきてしまった。一度きりの人生、無駄な時間など使ってはいられないという人も多いだろうが、残念ながらこれを読んでいる時点ですでにあなたは無駄な時間を過ごしている。

というわけで新年最初のヒドすぎるジャケットはリトル・フィートである。

リトル・フィート『ディキシー・チキン』(1973年)

<あの海外セレブの背後に偶然ロバートが写り込む奇跡>

いわゆる「サザン・ロック」と呼ばれるジャンルのロックが大好きだ。アメリカ南部の乾いた空気と広大な大地を想像させる、ブルージーでレイジーなサウンド。現代においては流行からはかけ離れたジャンルではあるが、自然の空気と人間の体温を強く感じさせてくれる素晴らしい音楽である。

1970年代に隆盛を極めたサザン・ロックの代表格といえばオールマン・ブラザーズ・バンドにレーナード・スキナード。それにザ・バンドや1970年代のストーンズやクラプトンにもその要素はある。リトル・フィートもそのひとつである。もともとはフランク・ザッパのバンドでギタリストとして活動していたローウェル・ジョージが発起人となって結成したバンドで、『ディキシー・チキン』(サザン・ロックど真ん中のタイトル)は彼らの代表作に数えられる名盤。またローウェルはスライドギターの名手でもあり、スライドギターの生み出す独特の気だるいサウンドはサザン・ロックとの相性が抜群に良いのである。ちなみに彼は日本の音楽にも精通しており、日本人の尺八の先生に師事し尺八を学んでいた経験もあるという。

そんなリトル・フィートの名盤『ディキシー・チキン』は確かに充実した内容のアルバムではあるが、ジャケットがどうも個人的に好きになれない。(次ページへ)