彼の職人っぽさがよく表れているジャケット~エリック・クラプトン『ミー&Mr.ジョンソン』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第99回:彼の職人っぽさがよく表れているジャケット
今回ご紹介するのはこちら。
エリック・クラプトン『ミー&Mr.ジョンソン』(2004年)
クラプトンのようながっつりブルースの影響を受けている世代のミュージシャンにとって、ブルースのカバーというのは僕らが思っている以上にチャレンジ的意味合いが強いものだと思う。それはブルースという音楽の偉大さを理解し、リスペクトの気持ちが強い者であればあるほどだろう。
『ミー&Mr.ジョンソン』はまさにブルースに憧れブルースを追究し続けたクラプトンによるブルースのカバーアルバム。それもクラプトンが最も敬愛し、ブルースの歴史のなかでも、いや、20世紀以降の音楽史においても最も偉大な存在とも言えるロバート・ジョンソンの楽曲のみを取り上げたカバーアルバムだ。
27歳でこの世を去るまでの間に遺した曲はわずか29曲。クロスロードで悪魔に魂を売るのと引き換えにギターの腕前を手に入れたとも言われる謎多きブルースマン、それがロバート・ジョンソンである。還暦を迎える直前にそんなロバート・ジョンソンと真っ向から向かい合おうと思ったクラプトンの覚悟は並大抵のものではなかったはずだ。
しかし、蓋を開けてみるとこれが意外というか何というか、非常に肩の力の抜けた等身大のクラプトン流ブルースで、変に気負うことなく仲間たちと楽しみながらセッションをしているような印象を受けるアルバムである。強烈なインパクトはないが良質ではある。まあクラプトンのレベルならばこのくらいの質は初めから保証されているようなものなので、そう考えると少々物足りないともいえるかも……。
ジャケットの素晴らしい絵はポップアートの巨匠ピーター・ブレイクの手によるもの。彼はほかにも多くのミュージシャンのアルバムジャケットを手がけており、最も有名なのはビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』だろう。ポップアーティストとはいえスタイルは幅広く、ここではおそらく作風に合わせてのことだと思うが、落ち着きのあるシンプルな肖像画を描いており、クラプトンの職人っぽさがよく表れていると思う(ギターがなければただの係長にしか見えないが)。現存するたった2枚のロバート・ジョンソンの写真もいい味を出している。今後クラプトンを敬愛するギタリストがこのジャケットをロバート・ジョンソンの位置に配して同じ構図で使ったら面白そうだなーとか何となく思った。
それにしてもクロスロードの伝説にはロマンを感じるね。スクランブル交差点あたりにパンか何かと引き換えに笑いの腕を与えてくれる悪魔でもいないものか。
魂は怖いからあげないよ。