ジャケットの美しさもまた……~オフコース『オフ・コース1 ⁄ 僕の贈りもの』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第97回:ジャケットの美しさもまた……
今回ご紹介するのはこちら。
オフコース『オフ・コース1 ⁄ 僕の贈りもの』(1973年)
日本のフォーク全盛の1970年代に活躍したアーティストにここ数年興味が湧いている。きっかけは何となく買ったかぐや姫のベストアルバムがあまりにも素晴らしかったことだが、当時のレジェンド級のアーティストのなかでもオフコースはやはり避けては通れないところだろう。現在はソロで活動しているリーダーの小田和正という人も含めて今の若い人でも名前くらいは知っているのではないだろうか。
『オフ・コース1 ⁄ 僕の贈りもの』は彼らの記念すべきデビューアルバム。1973年に発売されたものだが、彼らがデビューしたのは1970年(シングル『群衆の中で』)である。非常に遅咲きというか、ブレイクまで時間がかかったタイプらしく、このアルバムもまだ彼らが世間的に日の目を浴びる前のアルバムということになる。それゆえに『さよなら』や『言葉にできない』のような誰もが聴いたことのあるほどの知名度のある曲も入っていない。
しかしその完成度の高さははっきり言って言葉にできない。小田和正と鈴木康博のそれぞれ透明感のある歌声から生み出される極上のハーモニーと美しいメロディ、優しく響くアコースティックサウンド。聴きやすいが流し聴きよりもじっくり聴き込みたくなるタイプのアルバムで、さりげないようでいて一曲一曲の強さが尋常ではない。このときまだ売れていなかったというのが信じられないほどのレベルの高さである。
それにしてもこの時代の音楽というものは、例えばロックなら人間的な温度を感じるものが多いが、フォークは自然の温もりを感じさせるものが多いような気がする。かぐや姫にしてもオフコースにしても当時の生活や景色が目に浮かぶような曲が多いのだ。やはりデジタル技術が発達していない時代だからこその魅力、これはとても言葉にできない。
ジャケットの美しさもまた言葉にできない。音楽そのものの美しさをそのまま表したかのような優しく、温かいジャケットで、まるで天国のような風景である。ジョン・レノンの『ジョンの魂』を彷彿とさせる写真だが、ジャケットの美しさに反して内臓をさらけ出すようなヘヴィな内容であったあちらに対して、同作は純粋に音楽と調和させている。個人的にはジャケットも内容もこちらのほうが好きである。
古き良き時代の景色を見せてくれる当時の日本のフォークをもっと深く漁りたいが、何しろほかにも聴きたいものが多すぎてなかなか進まない。贅沢な悩みだが。
言葉にできないできない言っといて言葉にしまくっちゃってすいません。これからも言葉にできないほど素晴らしい音楽やジャケットを言葉にして紹介していくので、今後ともよろしくお願いいたします。
でも来週は悪口です。