あのコンビを彷彿とさせる家族写真~デラニー&ボニー『オリジナル・デラニー&ボニー』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第109回:あのコンビを彷彿とさせる家族写真
今回ご紹介するのはこちら。
デラニー&ボニー『オリジナル・デラニー&ボニー』(1969年)
確かこの連載初登場のデラニー&ボニー。ついこの間の100回記念ディスクユニオンセコセコショッピング企画で購入した彼らのアルバムとはまた別のやつ(あちらはあちらでいずれ取り上げます)。
アメリカ南部の土臭い空気感を前面に押し出したサウンドを特徴とするサザンロック、スワンプロックを代表する存在としてはオールマン・ブラザーズ・バンドやCCRなどが挙げられるが、このデラニー&ボニーもそのうちの重要な存在として忘れるわけにはいかない。サザンロックとスワンプロックの明確な違いについてはよくわからないが。
彼らはあの大助花子師匠よりも前から夫婦で活動しており、『オリジナル・デラニー&ボニー』は彼らのデビュー作にあたる。ロックを軸としながらもブルースやソウル、ゴスペルまでをも融合させた音楽性が彼らならではの特徴で、土臭さを前面に押し出した他のサザンロックバンドらにはあまりみられないゴージャスさ、華やかさを感じさせる。力強くポジティブなメッセージを込めた歌詞も多く、ボニー・ブラムレット(嫁)の黒っぽいソウルフルな歌唱の素晴らしさも相まって、気持ちの良い聴後感で包んでくれる名盤である。
ジャケットはメイプル超合金を彷彿とさせる家族写真。お子様が実際にふたりの子なのかどうかはわからないが、同作ラストを飾る素晴らしき名曲『愛の贈りもの』がまさに子を授かる喜びを歌っていることから、おそらく本当にふたりの子なのだろう。この時代ならではの独特の画質の粗さ、手作り感の強いまわりの装飾も温もりが感じられて良い。
ちなみにこのアルバムのデモを聴いて惚れ込んだビートルズのジョージ・ハリスンは、彼らをアップルレコードからデビューさせようと目論んだが、すでに別のレコード会社と契約済みだったため断念したという逸話が残っている。しかしその後ジョージからエリック・クラプトンに彼らの話が伝わりクラプトンとの共演に至り、デラニーがクラプトンにデュアン・オールマンを紹介しデレク・アンド・ザ・ドミノスが結成され、有名な『いとしのレイラ』が生まれたことを考えると、やはりこのアルバムの存在はロック界にとって重要な意味があり、彼らにとってもまさに手応えありもういや~ブパパなアルバムだったのだろうと思う。
しかし彼らの活動は長くはもたず、その後数年の間に解散し夫婦も離婚している。そして彼らの意志は大助花子師匠に受け継がれるのであった。