今後も出てはこないだろう非常に貴重なバンド~ZIGGY『KOOL KIZZ』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第107回:今後も出てはこないだろう非常に貴重なバンド
今回ご紹介するのはこちら。
ZIGGY『KOOL KIZZ』(1990年)
日本のマイケル・モンローこと森重樹一(もりしげじゅいち)率いるロックンロールバンド。ハノイ・ロックスやモトリー・クルーなどの1980年代のグラムロック、LAメタルからの影響下にある派手なルックスとストレートでゴージャスなロックサウンドが特徴。しかしそれでいて歌謡曲的な要素を取り入れたメロディアスさも持ち合わせているところが彼らならではの個性となっている。ちなみにバンド名はデヴィッド・ボウイのアルバム『ジギー・スターダスト』からとっているようだ。
『KOOL KIZZ』は彼らの4枚目のアルバム。まさにZIGGYというバンドの個性を象徴するようなアルバムで、若々しく疾走するロックンロールスタイルを軸に、ヒットチャート上位に食い込んでもおかしくないような歌謡曲的でキャッチーな楽曲もバランス良く配置されており、見た目以上に聴きやすいアルバムである。歌詞を読めばロックの基本である反体制的なトガりも見られるのだが、LAメタル勢のような毒々しさはそれほど感じない。まさに日本という特殊な環境で生まれたロックンロールバンドならではの絶妙なラインを突っ走っている気がする。オリコンではバンド初の1位を記録した記念すべきアルバムである。
そしてジャケットは『KOOL KIZZ』というタイトルのとおりクールなキッドがクールにキメたクールなデザインだ。1曲目『WHISKY,R&R AND WOMEN』(タイトルから曲調が余裕で想像できるぜ)における「何にも縛られたくない ガキのままでいたいのさ」という一節のとおり、年齢的には大人になっても心は若くありたいという逆コナン的発想を表現していると見て間違いないと思う。スーツは大人の象徴、そしてマシンガンは自分を縛りつけようとする者への反抗の象徴だろう。まさに本来のロックの思想そのものである。
日本では意外といそうでいないタイプのバンドであり、時代的にもおそらく今後も出てこないタイプなので非常に貴重な存在だと思う。
ところで実は最近まで「もりしげきいち」だと思っていたうえに、昔ZIGGYとZYYG(これもバンド)がよくごっちゃになってました。ごめんなさい。マシンガンで撃たないで。