アイデアはともかくデザインがどうにも古臭い~フェア・ウォーニング『オーラ』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2020/8/26 11:30]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


番外編~残念なジャケット~(第108回):アイデアはともかくデザインがどうにも古臭い


今月もやってきてしまった最終水曜日。というわけでコロナも逃げ出すダサいジャケットを見せてやるぜ!

フェア・ウォーニング『オーラ』(2009年)

<あの海外セレブの背後に偶然ロバートが写り込む奇跡>

今月は番外編2回目の登場となるフェア・ウォーニング。通常回に取り上げるアーティストの幅広さに比べてこの番外編のバリエーションのなさよ。やはりジャケットのセンスに関しては作品単位というよりアーティストの問題のような気がする。

フェア・ウォーニングはドイツのメロディアスハードロックバンドで、ドイツよりも日本でのほうが人気の高いバンドである。やはりある種歌謡曲にも近いキャッチーで美しいメロディが日本人の琴線に触れやすいからだと思う。実際メロディの美しさという点で彼ら以上のものを生みだせるアーティストを僕はちょっと知らない。

『オーラ』は彼らの6枚目のアルバム。過去の作品に比べて幾分バラード系の楽曲が多くなったぶん、一聴するとややおとなしめのアルバムといった印象を受けるかもしれない。しかし1回、2回で諦めず何度も聴き込んでいけば彼らならではグルーヴ感と相変わらず質の高いメロディがしっかり備わっていることに気づき、いつの間にか虜になってしまっている、そんなタイプのアルバムである。

個人的には毎回曲数は少ないがそのぶん完成度の高い曲に仕上げてくるギタリスト、ヘルゲ・エンゲルケ(ドラクエのモンスターみてえな名前)の曲が好きで、今回も『WALKING ON SMILES』と『AS SNOW WHITE FOUND OUT』の2曲を提供しているが、特に『AS SNOW WHITE FOUND OUT』に関してはBメロの胸を締めつけられるような切ないメロディがたまらない超名曲で、個人的には彼らの歴史のなかでも3本指に入るほど好きな曲である。

さて、充分褒めたところで手のひらを返そう(マスコミスタイル)。相変わらず作品のクオリティは高いがジャケットのセンスは悪い。彼ら曰く、オーラというものは円形に発せられるものであり、つまりジャケットはメンバーの体からオーラが出ている状態というわけだ。アイデアはともかくデザインがどうにも1980年代のB級SF映画で、別の惑星で行方不明になった仲間を助けに行くために選ばれた4人のソルジャーたちが宇宙船に乗り込むときみたいで古臭い。ヘルゲ(左から2番目)は写真映りが悪いので多分途中で死ぬ。

ただこのアルバム、初回盤は赤いベロア生地の箱に入ったボーナスCD付きの2枚組として発売されており、そのベロア生地の箱のデザインはシンプルながら上品な雰囲気が出ていていい感じだったりする。なのに肝心の本編がこのB級感という。ちなみに僕はファンなので初回盤を持っており、ボーナスCDに入っている新曲も良い曲なのでやはり音楽としての質そのもので言えば本当にすごいバンドなのである。

そういえばリーダーのウレ・リトゲン(ベース)は優れた画家としても活躍しており、彼らと関係のあるバンドのジーノやウリ・ジョン・ロートのアルバムジャケットなんかも手がけていたりするので、フェア・ウォーニングのアルバムも彼の絵を使えばいいのにと思ってしまうが、そのあたりの事情は不明である。

というわけで何かSF映画観たくなってきたので今週はこの辺で。皆、夏バテに気をつけて。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。