一応言っておくが20人グループではない~ザ・ビートルズ『ハード・デイズ・ナイト』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2020/8/12 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第105回:一応言っておくが20人グループではない


今回ご紹介するのはこちら。

ザ・ビートルズ『ハード・デイズ・ナイト』(1964年)

<あの海外セレブの背後に偶然ロバートが写り込む奇跡>

今週は音楽界のピカソ、ビートルズを。

『ハード・デイズ・ナイト』は彼らにとって初主演となる同名の映画のサウンドトラック盤。タイトルは当時彼らが売れっ子としてあまりにも忙しい日々を送っていたなか、リンゴ・スターがふと呟いた「It's been a hard day」という言葉からとったそうだ。まあ当然僕はリアルタイムでの彼らを見てはいないが、映像などで当時の様子を見てみるとその圧倒的な人気っぷりがうかがえる。何しろライブではバンドの音以上に観客の声援のほうがでかく、そんなまともに音を聴かないファンに対しジョン・レノンも皮肉を込めてわざと歌詞を変えて歌っていたというエピソードもあるくらいだ。

しかしそれでもファンは気づかないというのだから、いっそストーンズの曲でもやっちまえばよかったと思う。そんな感じでもはやアイドルを通り越して神のように崇められていた彼らなわけだが、それほどの熱量で誰かを応援しているファンなど現代ではなかなかいないよなーと思う反面、最も肝心の音を聴いてくれないというのは、おこがましくも同じ表現者として哀しく思う。やはり何事も“中くらい”が一番。

ちなみに邦題は『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』。すっごくゴキゲンなタイトルだがダサいぜ!

映画は確かかなり昔に観た記憶があるのだが、リンゴが輝いていたのと、風呂で潜水艦のおもちゃで遊んでいるジョンを見てこいつ4歳だなーと思ったことくらいしか覚えていない(あれってこの映画よね?)。

アルバムはかなり初期の作品だけあって彼らの若々しいエネルギーが充満しており、全13曲、駆け抜けるように一気に聴き通せるロックンロールアルバムである。勢いのあるロックナンバーではやはりジョンのボーカルが冴えるなと思う。

そしてジャケットは映画のエンディングで見られたメンバーの写真をフィルムチックにつなぎ合わせたもの。相変わらずこのあたりのセンスも高い。しかしまだマッシュルームカット時代なのでビートルズ入門者は顔の判別ができるようになるまでかなり時間がかかるだろう。一応言っておくが20人グループではない。

それにしても彼らの音楽に対して個人の好みの差はあれど、少なくとも音楽界に彼らがいて本当に良かったなと思う。どうあがいても彼らの恩恵を授かることになってしまっている彼ら以降のミュージシャンたちは、やはり根っこの部分で彼らに対するリスペクトを捨ててはいけないのだろう。

果たして21世紀のビートルズはやって来る?ナァ?ナァ?ナァ?

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。