ファミコンのクソゲーのパッケージみてえである〜ボストン『幻想飛行』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編(第159回)〜残念なジャケット〜:ファミコンのクソゲーのパッケージみてえである
今回ご紹介するのはこちら。
ボストン『幻想飛行』(1976年)
相も変わらず最終水曜日は残念なジャケットの供養。今月我が御前に差し出されたる愛すべき生贄は、アメリカはボストン出身のロックバンド、その名もボストンだ。
まず地名をそのままバンド名にしている時点でダサい。まあそのタイプはほかにも多く、エイジアやらヨーロッパやらアメリカやらいろいろいるが、それ系の名前は皆ダサい。音楽はいいのに。
なんていきなり悪口から入ってしまったが、軽くバンドの説明をすると、ボストンは名門マサチューセッツ工科大学出身のトム・ショルツが発起人となって結成されたバンドで、耳に残りやすいキャッチーなメロディと、スペイシーな浮遊感のある聴きやすいサウンドが特徴である。その音楽性ゆえ、ジャーニーやTOTOなんかと並んで“産業ロック”とカテゴライズされることも多いが、楽曲は実によく練り込まれていてレベルは非常に高い。
特に同作『幻想飛行』はデビューアルバムにしてロック史に残る名作と謳われ、全世界で1,000万枚以上の売上を記録したモンスターアルバムでもある。この時代特有のブルースロック的なグルーヴ感よりもメロディの美しさに重点を置いて作っているように思うので、どの曲も一度聴いただけで好きになれるわかりやすさがあり、現代の人にとってもクラシックロック入門盤としてお勧めしやすいアルバムだ。
トム・ショルツが多才すぎてもともとは彼ひとりでほぼ原型を作りあげてしまっていたそうだが(そのワンマンっぷりが原因でのちにいろいろモメる。例のごとく)、さわやかなハイトーンが魅力のブラッド・デルプのボーカルは楽曲のメロディを実に美しく引き立たせているし、シャープなギターサウンドも良い。トータル的にバンドとしても非常によくまとまっていると思う。サウンド的にちょっと意外にも思えるが、シンセやコンピューターは一切使用していないらしく、全体を漂うスペイシーな雰囲気のなかにどこか人間的な温かみを感じるのはそういうことかも知れない。
とまあ音楽的には疑うべくもなく最高のアルバムなのだが、そこへきてのこのジャケットよ。ギター型のUFOに地球が侵略されている状況だろうか。意図はまあなんとなくわからないでもないが、デザイン的にファミコンのクソゲーのパッケージみてえである。プレイヤー側が地球で、ギターUFOの攻撃をただひたすら避け続けるだけのゲーム。で1回攻撃を食らっただけでゲームオーバーになりコンティニュー機能もないのでまた一面からやり直しになるやつ。タイトルは『Earth escape』。よくバグる。
まあこの手のジャンルのバンドはジャケットもなかなかなものが多いのである意味様式美とも言える。インパクトはあるので印象には残るジャケットかも知れない。
ボストンはこれ以降かなりマイペースに期間を空けながら『Earth escape2』や『Earth escape3』を発売していくが、ひとまずはやはりこのアルバムから聴くのが無難だろう。
ファミコンの2コンのあのマイクってなんだったんだよ。