いまだによく知らねえバンドだが、想像力をかき立てられる素晴らしいジャケット〜イトイス『エゼキエル』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第160回:いまだによく知らねえバンドだが、想像力をかき立てられる素晴らしいジャケット
今回ご紹介するのはこちら。
イトイス『エゼキエル』(1980年)
今回紹介するイトイスに関しては完全にジャケ買いである。何ひとつとして前情報のない状態で、ショップでプログレコーナーを見ていてたまたま手に取ったら素敵なジャケットだったので購入させていただいた。過去にもプログレではメロウ・キャンドルなんかで当たりを引いているので、プログレのジャケ買いに関してはちょっと期待できるところが自分的にはあるのだ。
でこのイトイス、日本ではほとんど知られていないバンドで調べても情報があまり出てこないうえ、僕が購入したのは輸入盤でライナーノーツもないので、いまだによく知らねえ。君たちはいったい何者なんだ?
まあ知っている限りの情報を一応書いておくと、スペインのバスク地方のバンドで、1978年デビュー。以上。
バンドの情報に関して知っているのは本当にこれだけである。写真もないのでバンド編成もわからないし、今でも現役なのかどうかもわからない。犬好きか猫好きかもわからない。
このセカンドアルバム『エゼキエル』で見られる音楽性はジャケットの印象どおり、素朴で哀愁のあるプログレフォークといった感じ。バスク語で歌っているため歌詞の意味は理解不能で、その独特の発音のせいかあえてそうしているのかはわからないが、聴き手には単調な歌い方の印象を与える。しかしそれが音楽の性質に非常に合っており、また全体的に曲調やアレンジ面などでの変化が豊富なので聴いていて集中が途切れることはない。フルートなんかも登場しより味わい深い雰囲気を醸し出している。
そして僕に購入を決意させたこの美しいジャケットである。どう見ても今は使われていないであろう駅のホームとまっすぐに伸びる線路。そして物思いにふけるように佇むひとりの男。セピア調の色合いも相まってなんとも言えないノスタルジックさを感じさせる。表情が見えるか見えないかくらいの微妙な男との距離感がちょうどいい。色々と想像力をかき立てられる素晴らしいジャケットだ。
こちら今はおそらく中古市場でしか手に入らないものと思われるが、プログレファンにはお勧めの一枚である。
駅のホームでいつまでも待つ彼を迎えに行ってあげて。