非常にシンプルな日本盤ジャケットもとても良い〜ハノイ・ロックス『白夜のバイオレンス』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第161回:非常にシンプルな日本盤ジャケットもとても良い
今回ご紹介するのはこちら。
ハノイ・ロックス『白夜のバイオレンス』(1981年)
ハノイ・ロックスの立ち位置というのはなかなかおもしろいものがある。今回取り上げるデビューアルバム『白夜のバイオレンス』で見られるように、音楽性としては当時隆盛だったパンクロックの影響下にあるストレートなロックンロールスタイルで出てきているわけだが、どちらかというとむしろハードロック業界のレジェンドとして語られることの方が多い。まあ確かにハードロック要素もあるにはあるのだが、音楽性というよりはむしろ後に隆盛を極めるLAメタルによく見られるようなケバ×700しいルックスやファッション、あるいはガンズ・アンド・ローゼズやスキッド・ロウといった有名メタルバンドがハノイからの影響を謳っているところからそうなっているのだと思う。
なので後追いでその路線を期待して彼らの音楽に触れるとやや肩透かしを食らう人も多いかもしれない。それこそ路線は同じだがエアロスミスほどハードですらない。
しかしそのあたりにこだわらず、シンプルにロックンロールスピリットを音で感じたいという人はハノイをぜひ聴いてほしい。『白夜のバイオレンス』はまさにそんな彼らが若さと勢いで突っ走る、荒々しくも情熱的なロックンロールアルバムである。しかしそれでいて意外とメロディアスなところもあったりして、ただ無駄に尖りまくっているわけではなくそれなりの大衆性も持ち合わせていたりするあたりが面白い。『涙のシャイアン』などはそんな彼らの魅力が凝縮された名曲だと思う。
ところで『涙のシャイアン』やら『泣かないでセブンティーン』やら、古い時代の洋楽の邦題というのはなんかこういい意味でグッとくるものがある。サクマドロップス的な感じ。わかるかな?
そしてこのジャケットだが、実はこれオリジナル盤のものではなく、日本盤ならではのジャケットのようだ。ではオリジナル盤はどんなのかというと、
こんな感じ。
こちらの方がストレートにロックンロール的な雰囲気は出ていて、躍動感もあり悪くないジャケットだと思うが、僕は日本盤しか持っていないので「自分が持っている中で」というこの連載のルールに則り日本盤のほうを取り上げさせていただいた(ルールは破るものというロックンロールのルールを破るおれまじロックンロール)。
実際、日本盤のジャケットもとても良いと思う。白地に薔薇の花、そしてバンドロゴのみという非常にシンプルなデザインだが、格調高い花のイメージのある薔薇が実はロックンロールと相性がいいのはガンズ・アンド・ローゼズでもわかるとおり周知の事実。赤い色と棘が潜在的にロックな要素を感じさせるからだろう。バンドロゴもかっこいい。
ところでそんなロックンロールの申し子的なハノイ・ロックスが、実は美しい森や湖の印象があるフィンランドのバンドというのはなかなかギャップである。またボーカルのマイケル・モンローはケバ×900しい見た目に反して、酒、煙草はおろか、ドラッグすらも一切やらない主義らしい。ロックンロールのイメージをことごとく裏切るマイケルまじロックンロール。
もうロックンロールってなによ?