華やかすぎて皆様子がおかしかった時代なので……〜ジャーニー『フロンティアーズ』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2021/11/23 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


番外編(第172回)〜残念なジャケット〜華やかすぎて皆様子がおかしかった時代なので……


最終週です。今月も呼吸するかのように残念なジャケットをご紹介します。

ジャーニー『フロンティアーズ』(1983年)

<あの海外セレブの背後に偶然ロバートが写り込む奇跡>

この連載では初めて取り上げるバンド、ジャーニー。先週のボン・ジョヴィ同様、わかりやすいメロディとポップさでMTV全盛の1980年代を駆け抜けたハードロックバンドである。そのヒット志向の音楽性と実際に爆売れしたという事実から「産業ロック」などという括りに当てはめられてしまうことも多いバンドだが、例のごとく実力は本物。中心人物であるギタリストのニール・ショーンは10代でサンタナのバンドに参加しており、その腕前は「天才」と称されるほどだし、全盛期を支えたボーカリストのスティーヴ・ペリーはロック界最高レベルの歌唱力を誇るボーカリストとして評価されている。

ちなみに絵に描いたようなアメリカンドリームエピソードとして、スティーヴ・ペリー脱退以降ボーカリストの入れ替わりを繰り返していたバンドだが、2007年にたまたまYouTubeでジャーニーの曲をカバーしているバンドの映像を見たニールが、そのボーカルの上手さに衝撃を受け、直々にメッセージを送りそのままフィリピン人ボーカリストのアーネル・ピネダを正式加入させたというエピソードがある。アーネル・ピネダ本人は最初イタズラかと思って無視していたらしい。あたりめえだ。

もちろんこんなのは宝くじ並みにレアなケースだし、そもそもアーネル本人の努力と実力があってこそ掴めた夢だと思うが、このニュースは世の人に夢を与えたとも思う。ちなみにアーネルはいまだにジャーニーのボーカルを務めているので、バンドとも上手くいっているっぽい。

さて本作『フロンティアーズ』だが、前作『エスケイプ』が大ヒットを記録しバンドへの注目と期待が最高潮に高まっていたなか、見事にその期待に応えた作品となった。ポップでありキャッチーであり、シンセを多用した音作りも時代の流行に合っており、これまた大ヒットを記録。マイケル・ジャクソンの『スリラー』に阻まれ全米1位は逃したものの売上は文句なしの好成績で、日本でもよくテレビなどで使用されている『セパレイト・ウェイズ』などの有名曲を生み出した。僕個人としてはその1980年代ならではのシンセ多用の音作りがあまり好みではなかったりするのだが。

ジャケットはまあなんというか、安心と信頼の1980年代というか。華やかすぎて皆様子がおかしかった時代なので、この時代のジャケットセンスをひとつひとつ細かく分析してつついていくのは実はちょっとズレていて、「そういう時代だった」がたぶん一番的を射ているのだと思う。でも音楽性とはとても合っているよ。

そういえばジャーニーのアメリカンドリームのこと書いてたらちょっと前にSNSに届いた簡単に大金を稼げる方法ってメッセージのやつ思い出した。よし、いっちょ夢掴むために連絡してみっか。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。