こんなの年末に見せるもんじゃない〜ブラインド・フェイス『スーパー・ジャイアンツ』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編(第177回)〜残念なジャケット〜こんなの年末に見せるもんじゃない
というわけで2021年最後の回である。今年もここまで連載を続けさせてくれた耳マン様及びリットー大王様には本当に感謝の意を表したい。もちろんいつも読んでくださっている読者のみなさまにも。なので今回は感謝の意味を込めて最悪のジャケットをご覧いただきたい。
ブラインド・フェイス『スーパー・ジャイアンツ』(1969年)
1960年代後半というのはロック界にとって激動の時代であった。ウッドストック・フェスティバル、ブライアン・ジョーンズの死、レッド・ツェッペリンの登場にサイケデリックブーム。背景にはさまざまな文化的要因があるのだろうが、後追いでロックの歴史を学んでいった僕から見てもこのあたりの時代というのは非常に混沌とした時代であったという印象だ。
そんななか、3大ギタリストのひとりであるエリック・クラプトンもずいぶん忙しい時期だったようで、ロック界最強のトリオと語り継がれるクリーム、今回取り上げるブラインド・フェイス、1970年のデレク・アンド・ザ・ドミノスと短命のバンドをいくつも渡り歩いてきた時期だった。
このブラインド・フェイスに関しては、クリーム解散後に同じくクリームのメンバーだったジンジャー・ベイカーと元トラフィックのスティーヴ・ウィンウッド、元ファミリーのリック・グレッチを迎え結成された、クリーム同様スーパーグループと呼ばれるバンドである。魂を燃やすようなクリームのスタイルと比較するとやや落ち着いたブルースロックといった感じだが、クラプトンのギターは個人的にクリーム時代より好みかもしれない。ただ『君の好きなように』では15分にも及ぶクリームばりのインプロヴィゼーションも展開される。ちなみに僕の持っている盤ではオリジナル未収録の2曲が追加されており、『エクスチェンジ・アンド・マート』という曲が全曲のなかでもトップクラスに良い。
まあ本当に正直に言うと個人的にクラプトンはクリームやブラインド・フェイス、デレク・アンド・ザ・ドミノスよりも、ソロになった1970年代以降のレイドバックスタイルのほうが格段に好きだったりするのだが。あ、デラニー&ボニーのバックも良かった。
さて問題のジャケットである。こんなの年末に見せるもんじゃない。ぽかぽか陽気のなか全裸で飛行機を持つ少女。ギャグマンガか。しかし一応れっきとしたプロの写真家のボブ・サイデマンという人物がしっかりとした意味を込めて撮ったものではある。まあ言うまでもなく芸術というものは作者の込めた意図の深さと作品自体のレベルが必ずしも比例するものではないので、これに関しては最終水曜日行きになっても仕方がないレベルだと思う。スケベだからとか以前に作風に合ってない。まあ実際スケベだからという理由で当時もまあまあ物議を醸したデザインではあったようだが(ヒッピー文化の影響などもあったりするのだろうか)。
そんなわけで年の暮れに変なものをお見せしてしまったが、時期の変わり目に現れる変質者のようなものと思ってどうぞご勘弁を。
そして2022年も引き続き素晴らしき音楽とジャケット、そして皆様の目を汚すジャケットを紹介していこうと思うので、どうぞよろしくご贔屓のほど。
そういえばすでにクリームより長く続いてるなこの連載。やはり必要なのはリットー大王様へのブラインド・フェイス(盲目的信頼)。