トリはこちらに締めていただきましょう〜B'z『NEW LOVE』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載〜最終回
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
最終回:トリはこちらに締めていただきましょう
『音楽“ジャケット”美術館』。音楽と絵画が大好きな私こと平井“ファラオ”光が、自身の所持するCDのなかから絵画的な目線で見ても素晴らしいと思うジャケットを紹介するこの連載。もともと所属していたオフィス北野が謎の黒い問題により解体され、サンミュージックに移籍して早速自ら連載の企画書を書いてマネージャーからリットーミュージックさんに売り込んでもらって始まったこの連載。1発目でいきなりスタン・ブッシュという誰も知らないアーティストを取り上げる実はそこそこトガったこの連載。月末には番外編としてダサいジャケットを紹介し、ちょっと怒られそうなことも書いておきながら誰からも怒られることなく逆にちょっと寂しかったこの連載。2018年夏から3年以上続いてきたこの連載。
今週をもって最終回である。
正直これまで『耳マン』の担当の方からああしてくれこうしてくれという注文もほとんどなく、これほど自由に好きなことを書かせていただいたのに、ここまで長く続くとは思っていなかった。寂しいが世の中にゃいろいろな事情ってものがある。仕方のないことだ。
そしてせめて最後の回くらいは美しきジャケットで有終の美を飾ろうかと1秒ほど思ったがやめた。なんかサゲをつけなけりゃすっきりしないおれまじオモシロヒゲメガネ。
ということで『音楽“ジャケット”美術館』、トリはダサジャケに締めていただきましょう。我らがジャパニーズロックヒーロー、B'zの登場だ。
B'z『NEW LOVE』(2019年)
ここ数年のコロナ禍においても決して活動を止めることなく、常に新しいニュースを提供し続けてくれているB'z。おそらくこんなご時世で皆気分が沈みがちな時期だからこそ少しでも楽しい気持ちになってほしいという、アーティストとしての責任感や思いやりから来る行動力だろう。常々頭が下がるというものだ。
今年はさらにニューアルバムも発売されると言われているが、ひとまず本作『NEW LOVE』がフルアルバムとしては現状B'zの最新作ということになる。
B'zといえば正統派の洋楽ハードロックから影響を受けたサウンドに、日本の歌謡曲的なメロディを乗せた独特の音楽性を持つバンドだが、本作においてもその基本路線は守りつつ、ここ最近のなかでは最も1970年代風のクラシックロック的アプローチが強い作風となった。
どこかレイジーな空気を醸し出すパーカッションやレッド・ツェッペリン的な間やリフ、ブルージーさなど、前作『DINOSAUR』の若々しくエネルギッシュなハードロック路線に対し、本作は年齢相応の渋味も感じさせるロックアルバムという印象である。「最新が最高」などとよく言われるB'zだが、実際『NEW LOVE』は全アルバム中かなり上位に入るくらいの名盤だと思う。かつてないくらいにレイジーな雰囲気のオープニング曲『マイニューラブ』や、ブラスセクションがたまらなくかっこいいファンキーな『WOLF』、気持ちいいくらいにJ-POP的なキャッチーなバラード『マジェスティック』などは必聴の名曲である。
このように毎度本当に裏切られることのないB'zだが、裏切らないのは内容だけではない。相変わらずジャケットのセンスもやっちまっている。
まずなぜ宇宙なのか。『NEW LOVE』はこんなスペイシーな音楽性ではない。もっと地に足のついた温度感のある内容なのに、その地がないとはどういうことだ。「ゴールはここじゃない」(『兵、走る』)と言っているが、たぶんそこでもない。戻ってきてほしい。丸々としたタイトルロゴがこれまたあれだ。
まあB'zはよく「ダサかっこいい」などと言われているので、そんなB'zの独特のセンスが発揮されているひとつの味として実はなんだかんだで楽しませていただいている。しかし以前紹介した『BIG MACHINE』のようにたまーにかっこいいジャケットも見せてくれたりするので、今年発売される予定の新作は果たしてどうなるか楽しみなところだ。
というわけで『音楽“ジャケット”美術館』、改めてこれまで読んでくださった皆様、そして『耳マン』担当者様そしてリットー大王様、長い間本当にありがとうございました。記事自体は残ると思うので、あらぽんの『アダチニスト』共々引き続きよろしくお願いいたします。
最後に、
仕事をください。