竹下幸之介(DDTプロレスリング)の『ニシナリライオット』第24回:「2020年正月。近所の公園で寝ているおじちゃんにインタビューしてみた」

連載・コラム

[2020/1/10 12:00]

DDTプロレスリングの未来を担う若き逸材・竹下幸之介。そんな彼が自身の昔のブログを読み返しながらつづる、地元・西成のお話! 今回はお正月スペシャル!


あけましておめでとうございます。ついにやってきた2020年。年末、都市伝説を友人に聞いて、実際にSiriに「戦争はいつ起きるの?」って聞いたら

「2020年1月4日です」

淡々と答えやがった。ふざけんじゃねえ。AIだかなんだか知らねえが、人様の事情を機械が予言なんてするな。人間をなめんじゃねぞ。久しぶりに腹が立ったので、正月に実家に帰った際に近所の公園で寝正月を送っているおじちゃんに聞いてやったよ。

「戦争っていつ起こると思う?」

おじちゃんはしばし考え込んで、ついに沈黙を破った。

「知らん」

そりゃそうだ。明日、生きてるかもわからない西成人にとって私は最悪の愚問を投げかけてしまった。おじちゃんは全身全霊、今を生きている。もし仮に、今まさに戦火の火蓋が切って落とされたとしても、今日生き延びることを考える点では、このおじちゃんも、私も同じなのだ。生きたい、否、生きる。正月早々、大いに気づかされたのだった。

そのおじちゃんからは、大きな生命のエネルギーを感じるとともに、なんとなく話しかけやすさというか、むしろ話してほしそうにしているのでこれを逃す手はないと思いインタビューをしてみることにした。

まずは名前を聞いたのだが、ここはあえて匿名希望のおじちゃんとしてほしい。ただ言うならば、かなり珍しい名前であり、そのイメージからするに貴族かよ、とツッコミたくなる苗字であった。

年齢を聞いても、

「しばらく数えてないなー」

路上生活もそれなりになると、カレンダーを気にすることもなく日付を感じることがなくなるらしい。しかし、ラジオでニュースはチェックしているので、年号が新しくなったことはもちろん知っているし、天気予報にはやけに詳しい。

「雨やったら濡れへんとこに移らなあかんから」

なるほど。そのわりには日付は知らないのかと尋ねると、

「天気予報は明日か、今週末しか言わんから」

とのこと。なるほど、勉強になる。

おじちゃんとナンダカンダ話して打ち解けるうちにその暮らしぶりがいかにロハスで、今の最先端のテクノロジーに逆行しているかが見て取れる。例えば、台風の日はそれでも通勤するOLのパンチラを見るというのだ。これほどまでに、命がけの“エロス”が今の世の中あるということに驚きを隠せないが、同時に畏敬の念も生じる。おじちゃんすげえよ。

その後、明らかに話を盛り始めるのだが、真偽の判別は私に下すことはできないので聞いたとおりにみなさまにお伝えしたく思う。

「俺は昔、よくケンカをしててボコってた。なんかようわからん、アメリカ人をミナミ(なんばのこと)でボコったら、それがボクシングのチャンピオンやって、マフィアにスカウトされたけどそいつらもボコったった」

私はこの話を聞いた際、気づいたときには両手の掌をパチパチと合わせていた。清々しいまでの、武勇伝。信じざるを得ない真っ直ぐな眼。こいつ嘘ついてる!なんて思う暇もなく、伝説のエピソードトークは続けられた。

「大阪万博のときに、月の石盗もうと思ったけど失敗して逮捕された。今は太陽の塔の誰も入られへんとこにあるわ」

急に信憑性をもたせてくるあたりも只者ではない。こいつ、一体何者なんや! ここまでくると、とことん聞きたくなってしまうのが人間の性。

おじちゃんに問う。

「どうすれば幸せになれますかね?」(次ページへ)