竹下幸之介(DDTプロレスリング)『ニシナリライオット』第45回:「現TTTのTORUと夜行バスで行った大晦日の後楽園ホール」

連載・コラム

[2020/12/11 12:30]

DDTプロレスリングの未来を担う若き逸材・竹下幸之介。そんな彼が自身の昔のブログを読み返しながらつづる、地元・西成のお話!


2008年01月02日

537話『GOOD BYE TOKYO 』

12月31日~1月1日朝を書いた日記

いや~後楽園ホール入った時は興奮で失神しそうになった・・・

例えとか冗談じゃなくてマジでヤバかった(>_<)

で肝心な試合は・・・

もうー完璧!!!

一列目だったのでひな壇からの雰囲気に押されながらも思いっきり堪能してハツレツしながら思いっきり応援した!!

サミット見終わって新木場へー

プロレスターミナルは思い出したくありません・・・

それからダッシュで東京駅!!

2日寝てなかったんで爆睡してしまい岡山まで行ってしまいました・・・

睡眠は恐ろしい・・・

いやー後楽園はすごかった(*_*)

あのプロレスサミットの大晦日の後楽園ホールという舞台に立ってみたいです!!

追記 東京バナナうまい


<「お胸が豊かすぎる」「鼻血がでそう」華原朋美のセクシーショットに動揺コメント続出!?>

小学校生活最後の年越しは後楽園ホールだった。両親にお金を前借りして(お年玉で返しました)、大阪発の高速バスで東京に行き、プロレスを見て、正月の始発の新幹線で大阪に帰るという弾丸ツアー。

このツアーに同行してくれたのが現・TTTプロレスリング所属のTORU選手。当時、大阪プロレスの観戦仲間であり、プロレスごっこにおいて竹下少年のライバルを務めてくれていた。

年齢は4つくらい離れていて兄貴分だったTORUは、大阪を発つ前に情熱ホルモンに連れて行ってくれた。おそらく、初めて深夜バスに乗ることと、たかが1日であっても親元を離れて東京に行くことに緊張していた私を察してくれたんだと思う。このとき初めてコリコリとウルテというホルモンを食べた。その異様な姿形にビビりながらも、口に入れてみると、実家の食卓に並ぶ、牛すじ肉がかわいく思えるほどに固くて噛み切れなかった。

今では焼肉屋に行って、メニューを手に取るとコリコリとウルテを目で追ってしまう。あったら絶対注文するし。

初めての高速バスは一睡もすることができなかった。緊張で眠れないというよりも、朝になったら東京に着いていて、夜は後楽園ホールでプロレスが見られるという高揚感でアドレナリンがあふれんばかりに出ていたことが、眠りを大いに妨げてくれた。これは今でも同じで、地方大会に向かうバスの中では試合のことを想像してしまって眠ることができない。帰りのバスの中では、電源が切れて意識を失うように目を閉じる。

12月31日の朝の6時くらいに東京駅に着いて、マンガ喫茶で仮眠を取ることに。TORUのプランでは、開場時間の1時間前まではマン喫でゆっくりする予定だったそうだが、憧れの花の都・大東京にドキのムネムネが鳴り止まない私は、2時間くらいでTORUを叩き起こし、東京を観光しよう!!と誘った。

「こんな朝からどこもあいてませんで」

と、指摘されるが何のその。強引にチェックアウトを済ませるや否や、大晦日の朝の9時の水道橋に出た。確かにチェーン店以外は軒並み閉まっていて、だから言わんこっちゃない。とブツクサ言うTORUを連れて、マクドナルドで朝マックを食べることにした。

真顔で、

「やっぱ東京の朝マックは味がちょっと違うな!」

と言った竹下少年に対して、

「マクドはどこも一緒や」

と返すTORU青年。

このとき(マクドはどこも一緒なんや〜へぇ〜)と思ったことを、なぜか今でも覚えている。朝マックを食べるたびに、マクドはどこも一緒なんや〜へぇ〜が頭の中の引き出しを開けてくる神様は悪戯好きだな。そういえば、マクドナルドのドナルド以外のキャラクター最近見ないな。太った鳥の女の子とか、目の周りのクマがすごいやつとか、紫色のナスみたいな化け物とか。

マクドナルドをあとにした我々御一行はプロレスショップ巡りに行くも、残念ながらどこも大晦日でCLOSE。まだ午前中だというのに万策尽きた。残り7時間は黄色いビル内にある、ゲームセンターで潰すことに。お互いに2000円近くを投資することで、ダイナマイト刑事をクリアして、メダルゲームなんかをしていると、思ったより有意義に過ごすことができたが、それと引き換えにとてつもない疲労感に襲われる。

これはもしかすると、プロレス見ながら寝てしまうんじゃないかと思ったのも束の間。

初めての後楽園ホール。何度も何度も、映像でだけ見てきたその会場が目の前に広がった。その瞬間、時が止まったような感覚が身体を包み込んで、ひな壇から真ん中にそびえ立つリングを眺めていた。

この日の試合内容はほとんど覚えていないが、とにかく会場の熱気が作り出すグルーヴに感動していて、プロレスラーになりたいという夢を明確化した瞬間だった。この日の日記は"年越しの後楽園ホールに立ってみたい"という憧れが書かれていて、今その想いが叶ったことを知っている2020年の私が書いている。

今年ももう12月。大晦日はもちろん後楽園ホールで。

竹下幸之介

1995年5月29日生まれ、大阪府大阪市出身。身長187センチ、95キロ。現役高校生レスラーとして2012年8月の日本武道館大会でデビュー。高校卒業後、日本体育大学へと進学し、学業とプロレスの両立に励み、2018年3月に無事卒業した。卒論のテーマは『ジャーマン・スープレックス』。2018年4月に入江茂弘に敗れるまで、KO-D無差別級王座11回防衛の最多記録を樹立した。地元西成への愛が深く、2018年大みそかの『年越しプロレス』には、「西成魂」の刺繍が入ったオーダーメイドの特攻服をわざわざ作って参戦。“西成のエリートヤンキー幸之介”として愛されている。