Takassyが敬愛するふたりの歌姫、中森明菜とアギレラ「いつでも私の人生をときめかせてくれている」〜【ENGAB♡AtoZ】第1回〜
唯一無二の3人組オネエユニット・ENVii GABRIELLAのメンバーが愛してやまないヒト・モノ・コトについて、アルファベットのAからZを頭文字に始まるキーワードで紹介していく新連載『ENGAB♡AtoZ』。第1回はTakassyが“A”を担当し、敬愛するふたりのアーティスト、Aguiera(クリスティーナ・アギレラ)とAkina(中森明菜)について綴ります。
【A】Takassyが愛するアーティストAguiera&Akina
私の好きなもの。ちょっと影のあるものや、「太陽と月」だったら月のイメージを連想するほうを選んできた。なんだろうね。私、生まれたときから厨二が爆発してて、中2を超えても永遠にマインドが成長してないのね。だからちょっと影のある人だったり、メインストリームから外れたものだったり、誰も支持しないものだったり、魔法唱えそうな人だったりが好きなわけ。“王道”が嫌い。誰かと同じになるのも嫌。私自身もいずれ超能力とか使えるようになると思ってる。とりあえず永遠に“選ばれしもの”だと思ってるよ。
そんな私は、中森明菜さんがルーツ。この流れで明菜ちゃんの名前出すとすごい失礼な感じはあるけど、とりあえず黙って聞いてて。ゲイのなかで四半世紀以上トークテーマになっている、“聖子ちゃん(※)明菜ちゃん論争”では「光の聖子、影の明菜」なんて比喩されるときもあって(それは互いの存在が唯一無二だというリスペクトなんだけれども)、私は幼い頃から明菜ちゃんに魅力を感じていた。スーパースターなのに「孤高」という言葉がぴったりなほどの、そこはかとなく漂う気高さと闇。笑顔なのに時に見える切なげな表情に、幼い私のセンサーが反応したわけ(生まれ持ってのゲイだったということだわ)。
※アイドルで歌手の松田聖子
そしてもうひとり、私が影響を受けたアーティストのひとりがChristina Aguilera(クリスティーナ・アギレラ)。彼女がデビューした当時は、世界はアイドルが群雄割拠の時代。ブロンドヘアをなびかせて、ビビッドなスウェット的な何かを履きながらへそ出して踊るティーンアイドルがじゃんじゃか出てきてた。そんななかで、彗星のようにデビューして瞬く間に世界中から羨望を浴びていたのがBritney Spears(ブリトニー・スピアーズ)。顔面からはおよそ想像もつかないような特殊な歌声で「オッベイベオッベイベ」とか歌って速攻天下を取った。びびったね。初めてあの声聴いたときは。そして彼女のデビューからしばらくして、続いてデビューしたのがクリスティーナ。このふたりはこのあと、世間で言う「ライバル」として新時代の2大ポップクイーンの道を歩みます。
雷に打たれたような衝撃を受けたクリスティーナ・アギレラとの出会いとその魅力
私は偶然ケーブルテレビでクリスティーナのMVを見て、雷に打たれたような衝撃を受けました。衝撃を受けたショックでオネエになりました。嘘です。その頃にはきっちりヘアブラシ片手に腰くねらせて部屋で踊ってた。彼女の何に衝撃を受けたかって、デビュー曲なのに“地味”。十分キャッチーではあるけれど、流行りのキラキラポップスではない。でもクール。そんでとんでもなく可愛い。そして、1番の衝撃はその歌声。どうやって出してるのか謎だけど(失礼)、とりあえずパワー!!
彼女は、ファーストアルバム『クリスティーナ・アギレラ』(1999年)、そこからシングルカットされた楽曲3曲『ジニー・イン・ア・ボトル』『ホワット・ア・ガール・ウォンツ』『カム・オン・オーヴァー・ベイビー』を全米ナンバーワンにしている。さらに1999年のグラミー賞ではブリトニーとともに最優秀新人賞にノミネートされ、誰もがブリトニーが受賞すると思っていたなか、堂々受賞を勝ち取った。ダークホースが受賞するなんて、もうロマン以外の何物でもないわ。実はよく比較されるブリトニーよりも実績があるにもかかわらず、世間はなぜかいつもブリトニーに多く注目する。その様を俯瞰で見ると、私にとってクリスティーナはその時代の“月”そのものだった。
そんな彼女は、作品ごとにイメージを一新する。同じイメージで作品を出したことは過去に一度もない。「これがクリスティーナ・アギレラ」というサウンドが実は無い。ヒットした曲はその都度違うジャンル。ブロンドヘアでポップスを歌っていた彼女は、デビューから2年も経たずに『レディ・マーマレード』(2001年)という楽曲でキャバレースタイルの際どい衣装で歌い、歌い方もさらにワイルドになった。アイドルとは思えないシャウトをぶちかます姿はもはや清純でもアイドルでもない。
その翌年、セカンドアルバム『ストリップト』(2002年)では、黒髪でほぼ布無しの衣装と、全身ボディピアスという大変身を遂げた。楽曲はポップスから本格的なR&B、ロックなどに進化。MVでは謎設定のファイトクラブで暴れ倒し、蛾にまみれて黒い液体を出したりしてた。シャウトする姿は狂気を帯びてたし、もうヴィラン。全曲に自身が携わり、デビューから3年足らずでセルフプロデュースを始めた。そして、そのアルバムでも大成功を収めた。私はそんな彼女にゾクゾク、ワクワクした。次は何を魅せてくれるんだろう。どんな音楽になるんだろう。どんな衣装で、どんなメイクでどんなMVになるんだろうと。
多大なインスピレーションを与えてくれた彼女たちの共通点
実は、私の敬愛する明菜ちゃんも、同じ時代に華やかなライバルがいる、楽曲ごとに全く違うコンセプト、セルフプロデュースという点が共通している。でも、このふたりの最大の共通点は、“アンダーグラウンド”と“歌”だ。世間の声なんて気にしない。我が道を歩む。そしてどんなにジャンルが変わろうと、イメージが変わろうと、彼女たちの作品の主役はあくまでその声。誰が聴いても一瞬でわかる声。
私は、自分の作品を作るときに、そんなふたりのアーティストの精神から多大なインスピレーションを受けている。彼女たちの仕掛けるサプライズ。それを受け取ったときのあの気持ちは例えようもないくらいのワクワク感があった。どの曲でも彼女たちの声によって演じられたストーリーに没頭することができた。流行りの一歩先へ……いや、彼女たちのなかに“流行”などという無粋な考えはなかったかもしれない。だからこそ、孤高を感じ、品格を感じたのだと思う。
私も、作品を生み出すアーティストとして、受け取る人たちへサプライズの喜びを提供したいといつも思っている。それは私が心から愛せる作品で、歌詞で、ジャンルで。私のこの声と歌を。いつでも私の人生をときめかせてくれている彼女たちのように。
(Takassy)
Takassy(タカシ) プロフィール
3月24日生まれ、神奈川県出身。音楽ユニット・ENVii GABRIELLAのリーダーで、YouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』のママ。同ユニットの楽曲やアートワークを担当している。専門学校でボーカルを専攻し、卒業後はsouljuice(ソウルジュース)名義でアーティストとしての活動を開始。楽曲やデザイン、ステージングなどのセルフプロデュースを行うほか、メジャーアーティストへの楽曲提供も行う。2022年12月には自身初となる著書『私は私の幸福論を歌うから、あなたはあなたの幸福論を歌えばいいの』を発売した。