Takassyのパフォーマンスに不可欠なダンスと、表現を磨くために下した“ある決断”「私が作る楽曲とダンスは切っても切り離せない」〜【ENGAB♡AtoZ】第4回〜
唯一無二の3人組オネエユニットENVii GABRIELLA(通称エンガブ)のメンバーが愛してやまないヒト・モノ・コトについて、アルファベットのAからZを頭文字に始まるキーワードで紹介していく新連載『ENGAB♡AtoZ』。第4回はTakassyが“D”を担当し、自身のパフォーマンスに不可欠なDance(ダンス)をテーマに綴りつつ、表現を磨くために下したDecision(決断)についても明かします。
【D】Takassyのステージに不可欠なDanceと表現を磨くためのDecision(決断)
私が作る楽曲とダンスは切っても切り離せない。なぜならダンスミュージックだからね。どんなにバラードのような曲でも、曲を作っているときにはその曲のダンスやステージングを脳内に描いて作っている。自然と。
だから、曲を作ってるときは踊りながら作ってることが多いんだけど、激しく踊りすぎて、ヘッドフォンが飛んでいったりする。気にせずに自分のステップで踊っていたら、床に落ちているヘッドフォンを踏んづけてしまうこともある。その衝撃で、ヘッドフォンがバイイィィィンって吹っ飛ぶと、私は突然強盗に襲われたみたいな勢いで驚いて「あぎゃぁ〜!」って叫ぶの。ひとりで。
ひとりで踊って、ひとりで踏んで、ひとりで叫んで、ひとりで虚無。そして、ヘッドフォンの線が中で切れて壊れるってことが何度も起きるの。だから、ヘッドフォンはもうこれまでの人生で何個も買ってる。私は楽曲に関しては、こんなことを繰り返すくらい全力で作っていて、振り付けも舞台演出も納得がいくまで完璧に仕上げたいと思ってる。
高校を卒業して音楽の専門学校に進学したとき、私はボーカルを専攻した。実は、そのときに “ダンス”と“デザイン”の道で悩んだけど、歌うことが自分にとって1番の表現方法だと感じていた私は、ボーカルを自分の中心に据えることを決意した。
理想とするパフォーマンスの実現に葛藤しながら向き合った日々
だけど、歌うことと踊ることは切っても切り離せなかった。私がステージで歌うには、ダンスも必要だと感じた。だから、学内のダンス専攻の教室に行って、仲間を集めて、すぐにダンス&ボーカルチームを作った。オリジナルの楽曲を自ら作って、バックダンサーとともにボーカリストとしてステージに立ち始めたのが18歳の頃。ただ、ここからしばらくのあいだ、私はダンサーとの関係性において何度も挫折を味わうことになったんだけど。
日本で有名な男性ボーカルグループっていったら、すごく男らしくてスーツみたいな服を着ていて、“オラオラ系”って感じじゃない? 私、オラオラするときって言ったら、買いもののときと、マナーを守らない人を前にしたときくらいなのね。そのうえ、自分の歌い方が流行りのスタイルじゃなかった。だって、私はロールモデルが(中森)明菜ちゃんの男子。しかも、MAXとか(クリスティーナ・)アギレラとか、ブリトニー(・スピアーズ)とかが好きなのよ。大体女性アーティストを参考にしてた。そんで、この声。すごく特徴的だし、流行りの声じゃないし。「女性アーティストっぽく歌う男って何?」って感じじゃない?
でも、そのときは「自分は自分」って思って突っ走ってたし、歌い方を変えなかったの。今思うと私、時代を先取りしすぎてたのね。はぁ。それで、その頃にダンサーに言われたのが、「タカシの歌のバックで踊りたくない」って言葉。今でも忘れない。「タカシは好きだけど、おかまっぽくて恥ずかしい」って最後に言われたこともあった。何度も新しいバックダンサーと一緒にやっては、仲違いしての繰り返し。でも、私がやりたいステージにダンスは絶対に不可欠。この循環をずっとさまよってた。ある日、ダンサーが突然リハーサルに来なくて、電話をかけたら着信拒否されていたこともあったし、人づてに「辞めるって言ってる」って聞かされたこともあったな。
私、すごいかわいそうじゃない? 不幸じゃない? それで、とうとう“ダンサー”という人々をまったく信じられなくなりました。ダンサーっぽい格好をしてる人もダメだし、道端で踊ってる人を見ると殴りたくなるほど、ダンサーが嫌いになったの。極端なところも昔からよ。それで、歌って踊るボーカルグループのほうがいいと思って、ダンス&ボーカルグループを作りまくる人生が開幕しました。
ダンスを諦めないためにも重要となったボーカルに対する気づきと意識改革
今に至るまで、私がパフォーマンスをするうえで重要だと気づいたことがふたつあるので、それをお伝えします。
ひとつ目は、私はあくまでボーカリストなんだということ。私が当時作ったグループはボーカルグループだから、メンバーがみんな歌うわけ。だけど、私は歌がみんなより上手くなかったのね。そして、ダンスはほかのみんなより踊れるんだけど、ダンサーよりは踊れなかったわけ。「ダンスも踊りたい」っていう欲求が勝ってしまっていて、ボーカルを疎かにしていたの。それに気づいてからは、ボイストレーニングに死ぬ気で通いました。そしたら、不思議とどっちも成長しはじめたの。それで、「あぁ、私にはやっぱりボーカルが1番重要で、そこからダンスが生まれるんだ」と気づいたのでした。それから、私はダンスで表現するためにも歌に集中するようになった。
ふたつ目は、私は男だから声も男の声だということ。ずっと女性ボーカルばかり聴いて真似していたから、“男声で女性の声域を女性の真似をして歌う”っていうよくわからない状態になっていたのね。さらに、高音がそこそこ出たから、ハイトーンばっかり出してたの。それって自分で満足してても、客観的に聴いたらすごく不自然で、歌の良さが聴き手に伝わらないのね。バーで歌のお仕事をしてたときに、リクエストを受けてあらゆる世代の洋楽・邦楽のカバーを歌っていたんだけど、ある日お客さんに言われたの。「叫ぶな、うるさい」って。ウケる。今振り返ると、その頃はハイトーンを出すことだけを考えていて、“歌”になっていなかったということだったと思うんだけどね。
そうやってハイトーンばかり出していたら喉を壊してしまって、仕方なくミドルキーの歌をしばらく歌っていたんだけど、そしたらすごく褒められるようになったの。ハイトーンを出していたときより褒められたのね。だから、ボイトレの先生にそのことを伝えたら、「本来、すごく高いキーは感情の昂揚を伝えるときにこそ引き立つものだから、人が話すときの音域でちゃんと歌えない人がハイトーンを出してもただの曲芸なのよ」って言ってた。
それで、渋々男性の歌を歌うようになったんだけど、ある日気づいたの。「歌いやすい!」って(笑)。だろうね。それと、男性特有のストレートに歌う歌唱法を真似しまくってたら、自分の歌が自然になってきて、それどころかオリジナリティまで出てきたの。「あぁ、お手本を間違えてた。自分が聴いて好きな歌と、歌っていてしっくりくる歌は違うんだ」って気づいた。
そんな感じで、ボーカルに対しての気づきや意識改革があったことから、またソロアーティストとしての活動を始めたとき、バックダンサーと活動することを決めた私。あの頃とはメンタルの強度が違うから、「もし断られたら次!」って思ってたんだけど、蓋を開けたらそんなことなかった。「私の歌と曲、世界観が好きだから」と言ってくれて、その後何年も今に続くまでともにいてくれるダンサーたちと出会うことができました。彼らが私のうしろから全身全霊でエナジーを注いでくれたステージを初めて体験したとき、「これだ!」って思った。これが求めてた“ダンス&ボーカル”なんだって。
ボーカル力を上げたことで、パフォーマンスに自信がついたし、踊っても歌がブレない身体にもなった。私が本当に表現したいこと、やりたいことは“歌で想いを伝えて、ダンスを世界へ届けるエンターテイメント”。「二兎追うものは一兎も得ず」って言うけど、人生で欲しいものがいくつもあるなら、自分の軸をしっかりさせないといけないよね。表現をするうえでダンスも諦めたくなかった私が、成し得たいことのために“自分の歌”に集中すると決断したという話でした。
(Takassy)
Takassy(タカシ) プロフィール
3月24日生まれ、神奈川県出身。音楽ユニット・ENVii GABRIELLAのリーダーで、YouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』のママ。同ユニットの楽曲やアートワークを担当している。専門学校でボーカルを専攻し、卒業後はsouljuice(ソウルジュース)名義でアーティストとしての活動を開始。楽曲やデザイン、ステージングなどのセルフプロデュースを行うほか、メジャーアーティストへの楽曲提供も行う。2022年12月には自身初となる著書『私は私の幸福論を歌うから、あなたはあなたの幸福論を歌えばいいの』を発売した。