【社長と音楽】あの人気洗剤を開発したのは……元スタジオミュージシャンのギター大好き社長だった!

特集・インタビュー

[2018/5/7 11:30]

“お掃除のプロ”は元ミュージシャン

東急ハンズやドン・キホーテなどの洗剤コーナーでの販売のほか、テレビでもたびたび紹介され、目にしたこともがある人も多いだろう人気洗剤『技職人魂シリーズ』。“お掃除のプロが現場で開発した洗剤”をうたうこの商品を開発した“お掃除のプロ”はなんと元ミュージシャンだった。ミュージシャンを目指して上京後、ハウスクリーニング会社、住宅リフォーム会社を起業、そして『技職人魂シリーズ』というヒット商品を生み出した多才な元ミュージシャン社長の音楽愛に迫るっ!

株式会社允・セサミ 山口崇翅社長

——山口社長はミュージシャンになりたくて山梨県から上京してきたそうですね。

そうなんです。東京でスタジオミュージシャンみたいなことをやっていた時期もありました。

——そもそも音楽に興味をもったきっかけって?

母親も祖父も叔父もギターが弾けたので小さいときからギターに興味を持っていて、高校生のときにエレキギターを買ってもらったんです。丁度その頃バンドブームで、まわりがBOOWYとかZIGGYとかを聴いてるなか、僕はパンクが好きになっちゃったんですよ。それでピストルズとかクラッシュとかダムドとかを聴いたり弾いたりしてたんですけど、最終的にジミ・ヘンドリックスにたどり着いて。

——パンクからジミヘンですか!

ガーゼシャツ、ダメージジーンズに南京錠をつけて、それでジミヘン聴いてるみたいな。なんかヘンな感じになってましたけど(笑)。

——ジミヘンのプレイで人生変わったんですね。

モントレー・ポップ・フェスティバルでのジミヘンの『Killing Floor』に衝撃を受けたんです。それで、この曲がブルース(ハウリン・ウルフ)のカバーだって知ってからは、B.B.キング、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、アルバート・キングとかブルース系のギタリストにどっぷりハマって。

——いちばん好きなギタリストは誰ですか?

B.B.キングですね。ブルースってマイナーペンタで弾くのがお決まり的なところもありますけど、B.B.キングはポジションを変えてメジャーでアプローチしていたりして、彼のプレイはすごく研究しました。僕の師匠です。

——師匠、素晴らしい!

スティーヴィー・レイ・ヴォーンもかなり練習しました。ストラトに彼と同じように013.のヘヴィゲージの弦を張って、『Pride and Joy』とか『Scuttle Buttin'』とかめちゃくちゃ練習しましたよ。実は『Scuttle Buttin'』には秘密があって……。あの曲の有名なフレーズって、押弦する左手は中指1本だけしか使ってないんですよ! 知り合いのおじさんがライブで観てそれを力説してきたんです。だから僕も中指だけで練習してきました。当時はYouTubeもなかったですから、そういう話が貴重だったんです。

会社に置いてあるWashburnのスティーヴィー・サラス・モデルで実演してくれた。さすがに上手い……。うしろのポスターの標語が偶然にもその世界観にマッチ!

——かなりギターお好きですねぇ……。

本当は高校在学中にシカゴに行ってブルースを修行しようと思ったくらいなんですよ。

——わぁ、本場に!?

でも親に「高校はちゃんと卒業してくれ」って言われてそれは実現しなかったんです。卒業後も行くか迷ったんですけど「今のプレイじゃまだ本場では通用しないな」とかイタイ感じに思っちゃって(笑)。それでまずは東京に行こうと。

——それでスタジオミュージシャンになった?

スタジオミュージシャンの事務所に入って、音楽の仕事も少ししました。ほとんどが音響のチェックとか、そういう仕事だったんですけどね。時給1,000円くらいの。で、その事務所でソウルバンドを組まされたんですけど、そのバンドのライブがまた散々で……。そんな頃、今の嫁さんと出会って、結婚することになったんです。嫁さんは9歳上で連れ子もいたので、生活費を稼ぐためにとりあえず大工の仕事をするようになったんですよ。

——音楽の夢を諦めた?

最初は掛け持ちしてやってたんですけど、疲れてるときとかツラいときに弾くギターほどヘタクソだし、楽しくないってことに気がついちゃったんですよね。そのときKRAMERのアルミネックのめちゃくちゃ重いギターを使ってたりもしていて、大工の仕事のあとにそれを担いで練習に行くのも本当にツラくて。

——「ツラいときに弾くギターほどヘタクソ」ってなかなか染みますね……。

楽器を弾く人ならわかると思うんですよね。そのあたりでプロ志向ではなくなって、バーでたまにセッションしたり、趣味として楽しくギターを弾くようになりました。娘がフィギュアスケートをやっていてお金もかかるので、ギターも売っちゃいましたし。ストラトもレスポールもSGもES-335も売っちゃいました。

——今使ってるギターは?

新しく買ったレイ・ヴォーン・モデルです(笑)!

——でたレイ・ヴォーン(笑)!

ヴィンテージより弾きやすいですし、めちゃくちゃいい音するんですよ!

『ギター・マガジン』を嬉しそうに読む社長。ジミヘン特集号にご満悦

——御社の商品紹介映像のBGMはすべて山口社長が作っているんですよね? ギターも炸裂していますがこれはそのギターで弾いたものですか?

そうです! どこかで仕事にしてやろうっていう気持ちがずっとあって、ここでその気持ちをぶつけています。

——素晴らしいですね! 結婚されてからは、大工を経てハウスクリーニング会社を起業、住宅リフォーム会社として事業拡大、そして今の仕事(洗剤『技職人魂シリーズ』の開発)で大活躍されていますが、ギター好きな部分が仕事に生かされているのはどんなところですか?

ギターが弾けない人はギターを作ることはできないですよね。それは掃除に関しても同じで、プロの掃除屋だから作れる洗剤があると思ったんです。僕はギター以上に掃除を研究して、プロが現場で必要とする本格的な洗剤を開発しました。プロが考えた洗剤は今まであまりなかったので、とても多くの人に喜んでいただける商品になっています。

——それにしてもギター少年がお掃除のフィールドで活躍するなんて……。

こだわりをもってコツコツとやっていく部分はちょっと似てるところはあるかもしれないです。そう言えばリフォーム会社を起業した頃、換気扇を取り付けに行くだけなのに稼いだお金で買ったポルシェで現場に行っちゃって。それをお客さんに見られたことで仕事にかなり支障が出たことがありました……。

——ロックスターへの憧れが出ちゃった(笑)!

当時は稼いだら思いっきり使ってやろうって気持ちがあって……(笑)。反省してます。

——それもカッコイイと思いますけどねぇ……。やはり掃除もギターと同じようにお好きなのでしょうか? やっぱり好きだからこそ続けられている?

僕この仕事が大好きなんです。だからやれてるんだと思います。さっき「ツラいときに弾くギターほどヘタクソだ」っていう話をしましたけど、ツラいと思ってやる仕事は上達もしないし、ただツラいだけだと思います。だから僕は好きなことを仕事にしたい。熱中できる仕事を選べばみんな上達するし、いい仕事がずっとできるんじゃないかと思っています。

(おわり)

ブルースで培われたアドリブ力!?

「掃除は儲かる」という話を聞いてハウスクリーニングの世界に飛び込み、自己流でありながらも丁寧な仕事で顧客の信頼を得て事業を拡大、そしてヒット洗剤を開発するにまで至った山口社長。もちろん困難もあったというが、柔軟に局面に対応して常に前進してきたその姿に、アドリブ力が必須なブルースマンとしての一面をみた。最近もときどきセッションバーで演奏しているというが、さぞ素晴らしいブルースギターを響かせていることでしょう。機会があったらぜひ聴いてみたいです。山口社長、ありがとうございました! ギターについて語しているときの少年のような表情が忘れられません!

プロフィール

やまぐちたかし●1974年山梨県甲府市生まれ。上京後音楽活動の傍らビルクリーニング、大工などを経て1999年ハウスクリーニングセサミを開業。2002年住宅リフォーム部門を設立し2004年に株式会社に法人成り。自分たちのスキルアップの為に開発した洗剤を一般販売する為2007年に洗剤事業部を設立。現在は、大手企業の技術者を迎え一般メーカーでは作れない洗剤を開発しおそうじ界の活性化と発展を願う。

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