【社長と音楽】インスピレーションの源は楽器!? 木を使ったファッション小物などを扱う株式会社Leawoodの社長を直撃!
今回の『社長と音楽』で紹介するのは、株式会社Leawood(リーウッド)の吉田翔太社長。木製のファッション小物を展開しているブランドsciva(シーヴァ)やボルダリングに使われる木製のホールドなどを扱うブランドMONKEY-HOLD(モンキーホールド)を立ち上げた社長です。社長は楽器製造の会社で働いていたという経歴があり、現在の事業を始めるに至った最初のきっかけにはバンド活動があるそう。そんな気になるバックグラウンドをもつ社長に、音楽のことや物づくりのことをたっぷりと聞いてきました!
自分の好きなことを探求し、楽器製作を学んだ学生時代
――吉田社長はかつてバンドマンだったとおうかがいしたのですが、どのようなきっかけでバンドを始められたのでしょうか?
中学3年生の終わり頃に中学校の同級生の友人に誘われてベースを始めました。高校時代にはより精力的に活動するようになって、その頃はHi-STANDARDやMONGOL800などのカバーから始めて、レッド・ホット・チリ・ペッパーズに影響を受けたバンドメンバーが作ったミクスチャー的なオリジナル曲も演奏していました。ベースが難しくて大変でしたけど、楽しかったです(笑)。
――高校卒業後は進学されたのでしょうか?
バンドをやりながら、中部楽器技術専門学校という楽器のクラフトマンを育てる専門学校に通うことにしました。当時、ふと「何かを作るのって素敵だな」と思ったんです。僕は“ルーツを探る”ことが好きな性格でもあるので、楽器製作の世界に踏み込んでみようかと思いまして。
――専門学校では楽器を作っていたのですか?
「どんなに出来が悪くても卒業までに5本の楽器を作りなさい」というカリキュラムがありまして、ギターもベースも作りました。最初に作ったギターは思い出すのも嫌なくらいの恥ずかしい出来でしたが……(笑)! 卒業作品となった5本目はベースを作りまして、好きだったBacchusのベースをイメージしてバインディング仕様にしたり、ゴールドパーツを使ったりして仕上げました。スルーネック仕様にしたのもこだわったポイントでした。
楽器製造や家具製造、ペンキ屋を経て会社を立ち上げ
――かなり本格的な仕上がりですね! 卒業後も楽器製作に関わっていたのでしょうか?
卒業後は長野県松本市にあるDeviserという会社の傘下の飛鳥というところに勤めました。Bacchusを扱っているのがDeviserなんです。地元の岐阜県からは遠いところでしたが、自分の好きな楽器を作れるところに行こうと思いまして。岐阜にあるギターメーカーの面接に落ちたっていうのもあるんですけど……(笑)。
――(笑)。そちらではどういったお仕事をされていたのでしょうか?
塗装を中心にやっていました。とはいえ、塗装を塗り重ねていく途中には研磨の作業が必ず入るので、研磨も同時にやっていました。現在は木工製品を作っていますが、その頃から木に触っていましたね。
――当時の印象的だったエピソードはありますか?
有名なミュージシャンの楽器製造に携わる機会が何度かあり、その楽器がMVにも登場したときは嬉しかったですね。あとは、飛鳥にいらっしゃるビルダーの百瀬恭夫さんが手がけたギターには100万円を超えるものもあったので、そういったギターの製造に携わる際には緊張しました。
――それは緊張しますね……。そんな社長が楽器の世界から離れようと思ったきっかけは何だったんでしょうか?
楽器製造の仕事は「おもしろいな」と思っていたのですが、一人っ子ということもあり、将来的に自分が優先すべきことを考えたときに、職を変えてでも一旦実家の岐阜県に戻ろうと思ったんです。
――また楽器を作りたいと思ったりはしませんか?
ほぼゼロですね(笑)!
――ゼロですか(笑)!
はい(笑)。飛鳥の同期で現在は独立して楽器を作っている人もいますが、やっぱりそういう人って楽器についてだったり、楽器理論みたいなところを喋りだすと止まらないみたいな人が多くて。そういう人を見てると「この人には楽器づくりでは敵わない」って思うんです。そういう人たちは私よりも何段も何段もすごい上のほうで考えながらギターやベースを作っているので、もし自分が楽器を作りたいなと思ったら、その人たちにお願いするのが一番いいかなと思ってます。
――なるほど。楽器の世界を離れて、どのような経緯で現在の会社を立ち上げたのでしょうか?
地元に帰ったとしても木工には携わりたいと思って、まずは4年ぐらい家具屋さんに勤めました。私ができることは塗装と木工で、現場仕事みたいなことがあれば食い繋げるんじゃないかなと思ったんです。そのあとは塗装というところからペンキ屋さんに転職して7ヶ月くらい勤めました。そして、そこで出会った親方からのアドバイスもあって「自分のやりたいことをやろう」と思い、1年たたないうちにペンキ屋さんは辞めさせていただいて、事業を立ち上げるに至りました。
――音楽活動が今と繋がっていると感じることはありますか?
ペンキ屋を辞めたあとに立ち上げたscivaというブランドは、当初はあくまでファッションブランドということを意識していたのですが、無理をしていたというか、なかなかうまくいかなくて。そんなときに、あるデザイナーさんとお話をしていたら「お前はギターやろ?」と言われたんです。そのときに、自分がやってきたことを商品やブランドに落とし込むべきだと気づいて、私にとって身近なフェンダーやギブソンを代表する3トーンサンバーストのカラーなどを商品に落とし込むイメージが湧いてきたんです。そういう部分はまさに音楽との繋がりだと思いますね。
――改めてscivaの木製のファッションアイテムの魅力について教えてください!
木が好きな人ってたくさんいらっしゃると思うのですが、木が嫌いな人ってなかなかいないと思うんです。やっぱり木が人にとって身近な存在であることは間違いないのかなと。そういった木で作られた物を、カバンやポケットに入るサイズに落とし込んで商品化していること自体がひとつの魅力かなと思っています。それから、私は“木の可能性を追求する”という理念を大切にしているのですが、硬くて直線的という木のイメージをぶち破るようなアイテムが作れたらいいなと思っているんです。名刺入れや財布などにはスライスした薄い木材を使っていて「木なのにこんなにやわらかいんだ」という驚きを感じていただけると思いますので、ぜひお手にとっていただきたいです。
――とても素敵です。木製のファッションアイテムはどんな人におすすめでしょうか?
ありふれたものは嫌だけど、何かちょっとこだわっているものをお探しの方にはかなりおすすめです。皮製品もそうですが、木も触っているとツヤが出てくるんです。わかりやすくいうと、おばあちゃん家にある手すりがツルツルになるみたいな感じで、財布がツルツルになっていくんですね。なので、物を育てて経年変化を楽しみたい方にはかなりおすすめです。それから、やっぱり変わったものが日常ですっと出てくるようなことっておもしろいですし、馬鹿みたいな話ですがモテることにも繋がってくると思います。実際に、私の知り合いでキャバクラが大好きな人がいて、うちのアイテムを使うとキャバクラでちょっとモテるって言っていました。
――ははは(笑)。
これは余談ですけど、やっぱり目につくアイテムだと思うんです。そういうものはアイテムとしてすごく優れていると思いますし、名刺交換のときに話のネタみたいなるとか、そういうポテンシャルもあるなと思います。
――Leawoodではボルダリングの木製のホールドも商品として展開していますが、吉田社長はボルダリングを実際にやられていたのでしょうか?
はい。バンドと一緒で、人に誘われてなんとなく始めました(笑)。体を動かすこと自体がすごく好きで、チームではなく自力で何とかするような競技っておもしろそうだなと思って。あと、少年的な思いなのかもしれないですが、登るが楽しくて(笑)。ただ趣味で始めたことだったのですが、そこで出会った人のなかにファッションについてすごく教えてくれる方がいらっしゃったんです。その方との出会いがscivaのアイテム製作に繋がっているんです。
――木製ホールドの商品を実際に使っている方からはどういった声が多いのでしょうか?
木製のホールドはとても珍しいですし、壁についたビジュアルもすごいので「なんじゃこりゃ」というお声をよく聞きます。それから、「室内にボルダリングを取り入れたい」という方は、どうしても樹脂製のカラフルなホールドを取り入れなきゃいけないので、理想としている空間デザインとが合わないことがあるんです。カラフルなものでは合わないという方も結構いらっしゃって、そういった方にとってはすごく調和が取れるアイテムだと思います。あと、木製のホールドだと靴を履かずに裸足でも良いですし、滑り止めのチョークも不要なので、遊びや教育としてボルダリングを取り入れたいという方に対してもとても良い商品だと思っています。
「ブランドを通して木の魅力を感じてもらえたら」
――吉田社長の今後の会社としての展望を教えてください!
このような商品展開をしていると、真似をするブランドさんが出てくるかもしれないと思うのですが、木の可能性を追求するのは別に私だけじゃなくていいとも思っているんですよ。みんなで切磋琢磨することは業界全体が盛り上がるきっかけになるので、そこで負けちゃわないようにがんばっていきたいですね。それから、生産先を外国にして人に任せてしまうと、数を作って、利益率を下げてでもガンガン売らなくてはいけなくなると思うんです。それは嫌なので、価格的には高くなるかもしれないですけども、それを欲しいと思っている人に「むしろ安かったな」って思わせるぐらいのブランディングと製造に対する思いを積み重ねていきたいです。そして、最終的にscivaというブランドを通して木の魅力を感じてもらえたら素敵だなと思っています。持っているだけでテンションが上がるような感覚を楽しんでいただけるブランドになりたいですね。
――素晴らしいです。
それから、どうにか地元貢献もしたいんです。それを表しているのが、scivaのロゴで。うちの会社の住所って大垣市築捨町5丁目なのですが、実はこの区画の形がそのままscivaのロゴになっています。
――わー! なるほど! オシャレですね!
このクロスしている部分が会社の場所でなんです。ロゴじゃなくて地図になっているんです。大垣市築捨町5丁目なんて、どうスポットライトを当てたらいいのかわからないような場所ですが、これは私だからこそできることかなと。私が死んだとしても、scivaっていうブランドが残れば、全世界の人が大垣市築捨町5丁目がわかるっていうロゴになっています。
――素敵なお話です! 最後に、音楽好きな吉田社長としての今後の目標はありますか?
現在はアイテムを楽器店でも取り扱っていただいているのですが、3月で楽器店での取り扱いを一旦終了させていただくんです。というもの、バイヤーさんにとって「どう扱っていいのかわからない」というブランドになってしまいがちなので、あくまでファッション業界として一旦勝負させていただきたいなと。そして、scivaのブランドのイメージを確立させることができたら、有名な楽器メーカーさんとファッションアイテムとしてコラボができたらおもしろいなと思います。お互いのブランドイメージを崩さないところまで僕がいけることが大切だと思うので、そこを目指していきたいです。
(おわり)
ファションもお洒落! エネルギッシュな社長のアツい想いに感銘
ボルダリングで出会った仲間の影響でイタリアンファションが好きになったといい、とてもお洒落な吉田社長。お洒落な佇まいで生き生きと物づくりへのアツい想いを語ってくれる姿が印象的でした。「楽器はもう作らない」と言いながらも、現在もたまに家でベースを弾くこともあるようで、レッチリのフリーさながら(!?)のスラッププレイを楽しんでいるそうです。自分の好きなことや作りたいものに向き合い続けてきた社長だからこそ生まれた魅力たっぷりなアイテムは、これからもより多くの人たちに愛されると思います! scivaと楽器メーカーのコラボもとても楽しみです。吉田社長、たくさんのお話を聞かせていただきありがとうございました!
プロフィール
よしだしょうた●1987年生まれ35歳。高校在学中の16歳のときに友人と4ピースのロックバンドを結成してベースを担当し、高校卒業後は愛知県名古屋市にある中部楽器技術専門学校にてギター製造についての勉強を開始。専門学校卒業後は長野県松本市にあるギター製造工場にて国産エレキギター、エレキベース、アコースティックギターの製造の仕事を開始する。25歳のとき岐阜県揖斐郡揖斐川町にある家具工場にて家具製造の仕事を開始し、その後、岐阜県安八郡神戸町にある塗装工の会社にて外装塗装の仕事を開始する。30歳のときに岐阜県大垣市にて個人事業主としてLeawoodを立ち上げて木製の財布の製造と販売。翌年、株式会社Leawoodを設立しsciva(木製ファッション小物製造、販売)を立ち上げる。
株式会社Leawood
https://leawood.jp