獄中カースト話ではなく少年漫画のようなさわやか展開にグッときた……『監獄のお姫さま』第2話

連載・コラム

[2017/10/25 19:00]

漫画家の鈴木詩子が話題のドラマ『監獄のお姫さま』を語るッ

宮藤官九郎が脚本を担当し、小泉今日子が主演を務め、10月17日の初回放送から早くも話題を賑わせているドラマ『監獄のお姫さま』。女子刑務所の中という過酷な状況でたくましく生きる女たちの群像劇を描いた作品です。今回はそんな同ドラマの第2話の感想を、漫画家の鈴木詩子氏に素敵なイラストとともに熱く綴っていただきました!

獄中カースト話ではなく少年漫画のようなさわやか展開にグッときた……

いや〜、観ましたか? 火曜ドラマ『監獄のお姫さま』第2話! 同ドラマは脚本が宮藤官九郎で主演が小泉今日子という豪華な組み合わせが話題の“おばさん犯罪エンターテイメント”ですが、ストーリーも俄然盛り上がってきましたよ!

馬場カヨ演じる小泉今日子(画:鈴木詩子)

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第1話では、刑務所で知り合った馬場カヨ(小泉今日子)、 “財テク”こと勝田千夏(菅野美穂)、“姐御”こと足立明美(森下愛子)、“女優”こと大門洋子(坂井真紀)、“先生”こと若井ふたば(満島ひかり)の5人が計画を練り、失敗しながらも、まだ獄中に居る“姫”こと江戸川しのぶ(夏帆)の冤罪を晴らすために板橋五郎(伊勢谷友介)を拉致ったところで終わったのですが……第2話では6年前にさかのぼって彼女たちの出会い、そして獄中での生活が描かれています。

カヨは、殺人未遂事件を起こしてしまいます。原因は夫の浮気、ということになっていますが“いろいろあった”と彼女は語るのです。ほとんどの揉めごとの原因はさまざまな事柄の蓄積で、ひと言でなんて言い表せないことばかりですよね。

同僚や部下にバレバレで浮気をした夫とカヨの話し合いは、“のれんに腕押し”感満載の逃げ発言の連続で、しまいには「要点をまとめてから話して」と夫に言われる始末。「要点しかしゃべっちゃいけないの? 要点以外はどうすればいいの? 誰に話せばいいの? 全部要点なの!」と思わず声を荒げてしまうカヨ。ダメ押しで背を向けた夫を思わず包丁で刺してしまったのです。そして彼女は刑務所に収監され、「69番」と囚人番号で呼ばれるようになります。

そこで、カヨは有名な経済アナリストの千夏(菅野美穂)に出会います。元々彼女のファンだったカヨは「本にサインをしてもらえませんか?」と声をかけるも、なぜかこの日から千夏によるカヨへの嫌がらせが始まるのです。

う〜ん、これは陰湿な獄中カーストストーリーになってしまうのかな?と思って観ていたら……お互いに罵りあったあとに、ふたりは刑務所内でもできる範囲のことで勝負をし始めたんですよ。徒競走、デコピン対決、どっちがマッサージが上手いか、梅干しの種飛ばし対決など、一見バカバカしいような戦いですが、肝心なのは“お互い大真面目に取り組んでいる”ということです。やがてふたりは勝った、負けたを繰り返しているうちに、だんだんそんなことがどうでもよくなってきて、いつの間にかグッと距離が近づいているという……殴り合って仲直り、みたいな少年漫画のようなさわやかな展開が待っていたのです!

こんな風に言いたいことを言ってガッツリ向かい合い和解しあうことをカヨは切に望んでいたんじゃないでしょうか? 相手に、自分の思いを受け止めてほしかったんだと思うんです。

ラストの、カヨに隠れてコソコソ何かをしていた同室の仲間が、実は食事のときに出たコッペパン&ジャムや甘く煮た豆を少しずつ集めてミルフィーユ状に重ねて座布団の下に入れ、お尻で押し潰した“歓迎スイーツ”を作っていたというサプライズもとても良くて……。プレゼントされたカヨが「ちゃんとケーキの味がする〜」と笑いながら食べる姿にも、グッときてしまいました。

こんなに不自由な環境で限られた食材しかなくても、やる気や相手への気持ちがあればサプライズスイーツをプレゼントすることができるんですね。普段、何かとバタバタして心の余裕がなくなっていた私には突き刺さってくるエピソードで、できる範囲からでもまわりの人に気を配りたいものだと反省してしまいました。

さて、これからこのメンバーはどのように関係を育んでいくのでしょうか? ワクワクしますね! 来週の火曜日が待ち遠しいです!

[鈴木詩子]