ねずみ男に長髪、スキンヘッド……人間椅子・鈴木研一が28年の“ビジュアル遍歴”を振り返る!

特集・インタビュー

[2018/4/9 12:00]

人間椅子のMV集を観て鈴木研一の変貌ぶりに注&目

和嶋慎治(ギター、ボーカル)、鈴木研一(ベース、ボーカル)、ナカジマノブ(ドラム、ボーカル)からなる3ピースロックバンド人間椅子が4月4日に初のMV集『おどろ曼荼羅〜ミュージックビデオ集〜』をDVD/Blu-rayでリリース。1990年から2018年までのMVが全16曲収録され、彼らの28年におよぶ歴史も読み取れる同作のなかで、1番ビジュアル面のインパクトと変化があったと感じられる鈴木氏にインタビューを敢行! 彼は一体どのような創意工夫を経て現在のスタイルに行き着いたのか!? その“ビジュアル遍歴”について(覚えている範囲で)語ってもらいましたっ!

人間椅子。左からナカジマノブ(ドラム、ボーカル)、鈴木研一(ベース、ボーカル)、和嶋慎治(ギター、ボーカル)

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鮮烈なインパクトを残したねずみ男の衣装

——今回はMVに登場する鈴木さんの“ビジュアルの変貌ぶり”にスポットを当て、当時のお話をおうかがいできればと思います。『りんごの泪』(1990年)では初期の鈴木さんを印象づけたねずみ男の衣装で演奏されていますが、この衣装にはどんなコンセプトがあったのでしょうか?

『りんごの泪』(1990年)MVより

「とにかく変な格好をしてやろう」って決めたときに、袋状になってるシーツの角を使おうと思ってかぶってみたら、ねずみ男みたいになったからですよ。そのシーツが汚くてすさまじい色をしてて、もうボロボロで。これを衣装にしてなれるのはねずみ男くらいだなって思ったような気もするし、あと水木しげる先生が大好きだったっていうのもあるし……。ピーター・ガブリエルがライブのときにすごいかぶりものをしてたっていうのも頭の片隅にあったぐらいですかねぇ。う〜ん、覚えてないんですよ、ハッキリ言って(笑)。

——ちなみに、鈴木さんが白塗りのメイクを始めたのはいつからなのですか?

メイクを始めたのは、通っていた大学の演劇サークルの人たちに教わったのが最初ですね。きっかけは覚えてないんですけど……やっぱりキッスが好きだからかなぁ。デビューしてからはMVを撮るごとにメイクさんがついてくれるんですが、その手順を見ながら「ここにこうやって影をつければ良く見えるのか」って勉強して、少しずつ自分の腕がレベルアップしたんですよ(笑)。そういう意味では、僕、特殊メイクの学校とかにちょっと行ってみたいんですよ。夏期講習みたいのねぇかなぁと思って(笑)。行ったら相当腕が上がると思うんだけど!

——ぜひその模様を取材したいです(笑)。続いての作品『夜叉ケ池』(1991年)のラストで池に浮かんでいるのは鈴木さんですか?

『夜叉ケ池』(1991年)MVより

これはビデオのなかでも出てくる、石膏で作られた僕の顔のデスマスクなんですよ。マスクを作るとき、ストローみたいなのを口にくわえながらずーっとバケツみたいなところに頭を突っ込んで、すごい苦しかったのを覚えてます。まだ倉庫にありますよ。旅行カバンに、開けたら顔がこっち向いてる状態で入ってる(笑)。

——そのマスクの実物をお披露目する機会はありますか?

(食い気味で)でもでもでも、今と顔の形が全然違うんだけど! どんだけ痩せてるときなのよ、これ。えーと、今より30キロくらい痩せてたんですよ!

長髪、着物、上半身裸!? 試行錯誤の1990〜2000年代

——『ギリギリ・ハイウェイ』(1995年)からは衣装が着物に。

『ギリギリ・ハイウェイ』(1995年)MVより

そうそう、以前実家で両親と話してたときに「お前は高校時代から着物を着てライブをやってた」と言われて。僕は忘れてたけど、親は覚えてたんですよね。それを言われてから何となく思い出したんだけど、学園祭のとき仲が良かった石井くんっていう友達とふたりで、『い・け・な・いルージュマジック』(忌野清志郎+坂本龍一)を教壇の上で着物を着て演奏したんです。衣装を着物にしたのはそれが最初なんですよ! ……石井くんと同じ組っていうことは1年生だから、死ね死ね団(人間椅子の前身バンド)結成前だ! そうだそうだ、思い出した。

——着物の衣装にはそんなに長い歴史が! 『ダイナマイト』(1995年)の鈴木さんもインパクトがありますね。

『ダイナマイト』(1995年)MVより

わけのわからない水中メガネをしてますねぇ。確かスタッフが持ってたのを見て「これ、いいなぁ」ってかけて、そのまま撮影したんですよ。

——プレシジョンベースを弾かれているのも珍しいのではないでしょうか。

そういえばこの頃フェンダーのプレベを使ってたんですよ。でもいまいちネックが良くなくて、これを撮ったあとに確かスタッフにあげちゃったんです。僕は使っているものが気に入らなくなるとすぐ人にあげちゃうっていう悪い癖があって(笑)、ベースも相当人にあげちゃったんですよねぇ。でも今使ってるB.C.リッチには愛着がありますよ。コレクションしたいんだけど、なかなか売ってなくて……(ハッとした表情で)そうだ。このインタビュー、ビデオについてだった! ビデオについて何も触れてない!

——(笑)。MVでは上半身裸でライブをされてますね。

これ、すげぇ嫌なんだよ……。タイムマシンがあったら「なんでこんな格好したんだ!」って言って、昔の自分をぶん殴りたい気分ですよ(笑)。普通、こういう身体で上半身裸にならないですよねぇ。もっと、OUTRAGEの安井(義博/ベース)さんくらいムキムキだったらわかるけど、こんなにガリガリで脱ぐなよと思っちゃうんだよなぁ。……(小声で)あばらが浮いてるよ。

——『幽霊列車』(1999年)では電車内で演奏をされるシーンや、鈴木さんが幽霊役を演じるシーンが出てきます。

『幽霊列車』(1999年)MVより

『幽霊列車』だから幽霊と列車って、安直な気がするんだけど、そんなことはないですかねぇ(笑)。

——和嶋さんの衣装についてはどう思いますか?

(沈黙)……まぁ、いろいろあったんでしょうねぇ。ヒッピー風の衣装を着てますけど、和嶋くんのなかでそういうのが流行ってたんじゃないですか。みうら(じゅん)さんとも親交があっただろう時期だし。でも、これは自分が「和嶋くんがこうやれば1番かっこいいのになぁ」って思う格好ですよ。今は髪の毛を束ねてるじゃないですか、僕はしょっちゅう「ほどいて、落ち武者みたいにすればかっこいいと思うんだけどな」って言うんだけど、受け入れてくれなくて。もっとこう、汚い感じの落ち武者みたいなのがかっこいいと思うんだけどなぁ。

——当時のエピソードでほかに印象的だったことは?

そうそう、この頃の作品だと『見知らぬ世界』(2001年)のビデオは青木ヶ原樹海で撮ったんですけど、和嶋くんが「亡霊の声が聞こえる」とか言って、すごい本気で怖がってたのを覚えてますね。

『見知らぬ世界』(2001年)MVより

——さて、ノブさんが加入されてから初のMVが『洗礼』(2004年)です。3人でおにぎりを食べているシーンの和やかな雰囲気も素敵ですね。

『洗礼』(2004年)MVより

僕にはこのシーンが、自分のうちに集まってツアーの曲決めをしてるときのように見える。ふっふっふ。今もセットリストは3人で相談しながら決めてます。最初にセットリストを決めたら、リハーサルをしながら少しずつ変えていって。リハを重ねてこの曲はイマイチだって外したり、この曲はやっぱりやりたいって加えたり、けっこう時間をかけて改良していってるんですよ。

突然のスキンヘッドォ! お坊さんの衣装で現在のスタイルが確&立

——そして『品川心中』(2006年)から鈴木さんがスキンヘッド&お坊さんのような衣装という、現在のスタイルに急変します。前作から2年の間に何が起こったのでしょうか!?

『品川心中』(2006年)MVより

もう、長髪が面倒臭くなったんですよ。温泉行くときも束ねないといけないとかね。あと当時の職場(郵便局)でも、上司とすごい嫌な関係になっていて、ずーっと注意されてましたよ。まぁ本当は意地でもそんなことで切りたくはなかったけど、そうじゃなくて、ちょうどこの時期にスキン(ヘッド)でお坊さんになったらかっこいいんじゃないかなって思ったんですよね。だから渡りに船じゃないけどちょうどいい具合に、やりたいものとのタイミングが一致したといいますかね。

——だんだんと短くカットしていくのではなく、一気にスキンヘッドに。

中途半端なのが1番かっこ悪いと思ったんで。切るならスキン、伸ばすなら長髪だと思ってたので潔く切りました。今後はもう一生スキンのつもりです! でも、僕は今でも演奏中は自分の髪の毛が長いつもりで頭を振り回してますよ。ふふ、エア長髪(笑)。

今後“絶対やりたい” MV撮影のシチュエーションは……?

——ほかにもこのMV集に収録されている作品の思い出はありますか?

このなかでは、『浪漫派宣言』(2009年)が1番貴重な映像なんじゃないですか。高円寺のShowBoatっていうライブハウスで撮ったんですけど、ビデオを作ったはいいけど時期が悪かったのか、とにかくどこにも流れなかったんですよ(笑)。今ならYouTubeにアップするとかできますけど、多分まだそんなに流行ってなかった時期だと思うし。だから、誰の目にも止まってない幻のビデオです。

『浪漫派宣言』(2009年)MVより

——『なまはげ』(2014年)以降はコンスタントにMVが発表されていますね。

この時期からはガンガン流してもらってるから、いろんな人の目についてると思うんですよ。そういう意味では、改めてこのDVDを買う意味もないんじゃ……。

『なまはげ』(2014年)MVより

——いやいやいや!

でも、いい画質で観れるし、新曲の『命売ります』(2018年)もフルサイズで入ってるしね(にっこり)。印象的だった作品で言うと、『宇宙からの色』(2014年)の撮影はすごく寒い場所でやって。暖房もないところでメイクして、これ以上やったら低体温症で倒れるかと思うくらい寒かった! そぉ〜だよ、ここから2度と野外では撮影しないと誓ったんですよ!

『宇宙からの色』(2014年)MVより

——ということもあり、『宇宙からの色』以降のMVはスタジオ撮影なんですね。今後はどんな場所で撮影したいですか?

温かいところでしょう。砂漠、荒野。あと車……走ってる車の荷台で演奏したいよねぇ。それは絶対やりたい! 自分のなかではクイーン『ブレイクスルー』のビデオみたいなイメージなんだけど。海外で撮るのはいいと思いますよ。ロシアとかいいんじゃないかなぁ(スタッフさんのほうを見ながら)。

——車の荷台で演奏する人間椅子、観てみたいです! さて、先ほどツアーのセットリストの話も出ましたが、春のワンマンツアーはどんな内容になりそうですか?

今回のツアーではこのMV集の収録曲と、あと少しレア曲を披露します。MV集にもライブでやらない曲がいっぱい入ってるんで、これらの楽曲を網羅するだけでもほぼレアライブですけどね。昔の曲から最新曲までをたっぷりと演奏します!

人間椅子MV集リリース&春のワンマンツアー開催!

『おどろ曼荼羅~ミュージックビデオ集~』 ジャケット

『おどろ曼荼羅~ミュージックビデオ集~』2018年4月4日発売
Blu-ray/TKXA-1119/3,704+税
DVD/ TKBA-1251/2,778+税
全16曲を収録! ※()内は、オリジナル作品リリース年
『りんごの泪』(1990)、『夜叉ヶ池』(1991)、『ギリギリ・ハイウェイ』(1995)、『ダイナマイト』(1995)、『幽霊列車』(1999)、『怪人二十面相』(2000)、『見知らぬ世界』(2001)、『東洋の魔女』(2003)、『洗礼』(2004)、『品川心中』(2006)、『浪漫派宣言』(2009)、『なまはげ』(2014)、『宇宙からの色』(2014)、『恐怖の大王』(2016)、『虚無の声』(2017)、『命売ります』(2018)

『おどろ曼荼羅~人間椅子2018年春のワンマンツアー』(全11公演)
4月1日 高松 Olive Hall
4月3日 神戸 Chicken George
4月5日 博多 DRUM Be-1
4月7日 沖縄桜坂 セントラル (沖縄公演のみオープニングアクトあり)
4月9日 大阪 umeda TRAD(前AKASO)
4月11日 名古屋 Electric Lady Land
4月18日 札幌 cube garden
4月20日 仙台 CLUB JUNK BOX
4月22日 青森 Quarter
4月24日 宇都宮 HEAVEN’S ROCK Utsunomiya
4月27日 東京渋谷 TSUTAYA O-EAST

『おどろ曼荼羅~人間椅子2018年春のワンマンツアー』の会場で『おどろ曼荼羅~ミュージックビデオ集~』をご購入で、先着にて会場限定特典“アナザージャケットをプレゼント。
ほかにも同作をお買い上げいただいた方のなかから抽選で素敵なプレゼントが当たるスペシャル企画も決定。
詳しくは人間椅子オフィシャルサイトをチェック!

榊ピアノ