「モテたい」が原動力!? 『少年ジャンプ』を地で行くプロレスラー・鈴木みのるが語る主催フェスと“50歳”
カリスマ的人気を誇るプロレスラー・鈴木みのるがフェスを主催!
「世界一性格の悪い男」というキャッチフレーズで独特の存在感を放ち、カリスマ的人気を誇るプロレスラー・鈴木みのる。1968年に神奈川県横浜市で生まれ、1988年にプロレスラーとしてデビュー。その後総合格闘技やさまざまなプロレス団体での活躍を経て、現在は新日本プロレスを主戦場に第一線で闘いを続けている。その傍ら、自身のアパレルブランド・パイルドライバーの社長兼デザイナーも務めるなどマルチな才覚を発揮する彼は、2018年6月に50歳の誕生日とプロレスデビュー30周年を迎える。これを記念して6月23日、24日に地元・横浜の赤レンガ倉庫イベント広場にてプロレスや音楽、お笑いやスポーツなどジャンルの垣根を飛び越えたフェスティバル『大海賊祭』を開催。今回はそんな彼を直撃し、おもしろいことが起こりそうな予感しかしない前代未聞のフェスについてはもちろん、50歳を目前にした現在の心境をたっぷりとおうかがいしましたッ!!
出演者はノージャンル! すべて“俺が好きな音楽”
——まず初めに『大海賊祭』を開催しようと思ったきっかけを教えてください。
今から23年前の1995年、俺が中学生の頃から大ファンだったシンガーソングライターの中村あゆみさんに、自分の入場曲として『風になれ』っていう楽曲を作っていただいたんです。その後もバージョンを何度も変えてずーっと自分とともにある大切な曲で、今や海外で試合をすると世界中の人が日本語で歌ってくれるんですよ。大合唱です。気持ちが悪いですよ(笑)。そんななか、あゆみさんが「『風になれ』30周年記念バージョンのメロディが頭に流れてきたから、作ろう!」って言いだしたんです。せっかく新しいバージョンを作るならそれをお披露目する場が必要だよな、と思いまして。あゆみさんのライブはもちろん、ほかにも俺の好きな音楽家でみんなに聴いてほしい人たちが出演してくれます。そのうちのひとりがファンキー加藤だったりとか。
——ファンキー加藤さんはプロレス好きとしても有名ですよね。
そうですねぇ。でも、プロレスが好きかどうかっていうのは今回『大海賊祭』に出演してくれる人にあんまり関係なくて。とにかく俺がファンキー加藤の歌を好きなんですよ。だからぜひ、みんなの前で歌ってもらえないかなぁと。そしたらノリノリでOKをもらって、そこから一気に広がっていったんです。
——ほかに参加するアーティストのみなさんも、鈴木さんがもともとお好きな方々なんですか?
はい。今回参加していただくアーティストさんがIKURAさん、BinBomBam楽団、さいとうりょうじ、サイプレス上野とロベルト吉野、浅場佳苗。もうジャンルがバラバラ(笑)。でもそれを集めると、俺のプレイリストになるんです。全部俺の好きな音楽なんですよ、普段からいつも聴いてますしね。だから売れていて有名な音楽じゃなくても、俺が好きだからみんなに聴いてほしい。いい歌ってそうじゃないですか。売れてるからいい音楽だって世の中の人は思ってるんですけど、売れててもつまんないやつはつまんないですから。なので、この人選になりました。
——ライブという空間で生で音楽を聴くのはやっぱり重要だと思いますか?
そのアーティストと同じ空間で聴くっていうことに、やっぱりすごく意味があると思いますね。プロレスもそうですけど、東京ドームとかの大きい会場で観たら、出演者が指先くらいの小ささでしか見えないじゃないですか。でも、“観よう”としてそこに行くと感じるものがすごく大きいんで。同じ空間にいれるという感動を体験してほしいんです。あと、今回俺が用意した音楽のなかにはみんなが知らないジャンルもあると思いますけど、実際に聴いたら「あれ? かっこいいなこれ!」ってなると思うんですよ。目の前で全力のパフォーマンスを観たらきっと好きになってくれるんじゃないかなっていうのと、単純に「こんなにいい歌あるよ、これいいでしょ? ねぇねぇ!」っていう自慢と。フフフフフ(笑)。
海外でも人気の『風になれ』、30周年記念バージョン制作秘話
——23日には先ほどおっしゃってたように中村あゆみさんの単独ライブが行われます。『風になれ』30周年記念バージョンには、鈴木さんのアイデアも組み込まれているんですか?
いっちばん最初に『風になれ』を作るときはありましたけど、今回のバージョンは完全にあゆみさんの頭のなかに流れた音楽のイメージです。俺は彼女に、ここ最近海外でやった試合の映像を送ったりもするんですね。それを観てなんか、“世界に飛び出した鈴木みのるの音楽”がこう、流れてきたみたいで。バロック音楽とか言ってましたね、クラシカルで壮大なイメージで。映画音楽にちょっと近いかもしれません。使ってる楽器の数が多いんで。
——鈴木さんのSNSにはスタジオに立ち会われた様子も綴られていましたね。
実はこのビル(取材場所のパイルドライバー原宿)の奥に音楽スタジオがあって、そこでマスタリングに立ち会いました。レコーディングはまた別のところでやってて、最後の仕上げの部分に立ち会わせてもらって。「曲が完成したから」って言われて試合後に来て、スピーカーの1番よく聴こえるところでこうやって(ソファーに深く座る仕草)、目つぶって聴きましたよ。
——どんなお気持ちでしたか?
いやぁ、すごい感動しましたね。うん。……かっこよかったです、本当に。そんなに感動した曲、聴きたいですよねぇ?(にやり)
——聴きたいです!
あるんですよ(iPhoneで曲を聴かせてくれる鈴木さん)。こんな感じです。いいスピーカーで聴いたらすっごい音が、いっぱい鳴ってました。たくさんの音の重なりがブワッてきましたね。これのお披露目は『大海賊祭』で。
——今後このバージョンが鈴木さんの入場曲に使われるんですか?
今後はもうこのバージョンに切り替えます。
——同じ楽曲でもバージョンが違うとガラリと空気が変わりそうで、楽しみですね。また、最近の試合でも時折流れている鈴木軍(※)のテーマ楽曲についてもおうかがいしたいんですが……。
はい。(またもやiPhoneで曲を流しながら)この曲のこと? これは完全に、俺が埠頭の倉庫からガラガラガラーって金属バットを引きずって出てきて、ほかの奴らはバイクに乗ってて「オラ、行くぞー!」ってやってるっていうイメージです(笑)。映画『マッドマックス』とか、ああいうのに近いイメージだったりしますね。
(※鈴木軍……鈴木みのるが率いるヒールユニット)
——中村さんも鈴木軍の試合をご覧になられたりして、いろいろとイメージが湧いたのでしょうか。
そうじゃないですかねぇ。「絶対このイメージだよ!」とか言って、押し付けが多いんですよ、あの人(笑)。でもあゆみさんが「絶対こっちのほうがいいって!」とか言うと、本当にそのほうが良かったりするんです。感覚の人なんで、理詰めの人じゃないんでね。
——その、中村さんの感覚で作ったものを聴くと、不思議と鈴木さんのイメージとも合致すると。
そうですね。俺は割と感覚派に見られがちなんですけど、実はけっこう理詰めなんですよ。で、俺が持っているものとあゆみさんのその感覚のものが一致したときってすごいパワーを生み出して、良い作品ができるんです。じゃないと『風になれ』を試合で20年以上も流さないですよ。
50歳を迎える鈴木みのるのこだわり
——今回鈴木さんの50歳、デビュー30周年記念ということで……。
(食い気味に)どうですか? こんな50歳。
——最高にかっこいいと思います! 心境はいかがですか?
いや、一緒。ずーっと変わらない。
——何歳頃からずっと同じ感覚なんですか?
40歳くらいから一緒。45歳くらいのときに1度大きなヤマがきて、そこで自分をもう1度作り直そうと思って、食事とかトレーニング方法を全部見直してやり直したんです。そこからはまたガーッと上がってきてますね。
——体力的にも45歳くらいで1度落ちる部分があったのでしょうか?
いや、自分では変わらないと思ってるんですけど、変わらないから飽きられちゃう。まわりはどんどん変わってくんで、自分がずーっと高いテンションでいても変わらないとつまらないと思われるんですよ。上がり続けないと使われないっていうことに45歳で気付いたんで。「よし、もう一段階変わろう」と。
——45歳からまた新たな努力をされるだなんて、なかなかできることではないですよね。
歳は関係ねぇなとは思ってますけどね。まぁ、そんなことやってるから白髪が全然ないんです、ほぼないんです!(帽子を外しながら)
——おぉぉ、本当ですね!
ほとんどないです、たまにポチンて1本あっても毛抜きでピッてやったらもう終わりですよ。
——鈴木さんといえばヘアスタイルも特徴的ですが、どんな方が担当されてるんですか?
この髪型は、横浜の美容師さんでもう20年くらいの付き合いの人が、突然バリカンで(ラインを)入れだしたんですよ。ビィーンって。「いいじゃん、いいじゃん! 線1本入れようよ!」って。次行ったら2本になって、そのうち絵描き始めて(笑)。
——そんなノリで生まれたスタイルなんですか!
今は俺が引っ越したり忙しかったりしてなかなかそのお店に行けてないんで、自分でやってます。
——えっ! ご自分でヘアカットされてるんですか?
最近は全部自分で大きめのバリカンで、それこそあの東京ドーム(※)のときに使ったバリカンを……。
(※2018年1月4日の新日本プロレス東京ドーム大会でのNEVER無差別級選手権試合 敗者髪切り&ノーセコンド・デスマッチ 鈴木みのる(王者)vs後藤洋央紀(挑戦者)のこと。鈴木が敗れ、リング上で自らの後ろ髪をバリカンで刈った)
——えぇぇぇ! 敗者髪切りデスマッチで使ったあのバリカンですか!?
最終的に、控え室にあったんでパクッて持って帰りまして。
——さすが海賊!
あのバリカン、業務用のめっちゃいいやつなんで。あれでまず形整えて、そのあと幅の狭いやつでビーッて、自分でイメージして刈ってます。合わせ鏡して後ろまでビーッてやるんですよ。
——恐るべし……。鈴木さんは髪型もそうですし、黒のショートタイツに黒のブーツというご自身のスタイルがあるところも素敵ですよね。
実は俺も若いときはいろんな色を着てたんですよ。ピンクや蛍光色、青や黄色とかいろんな色を着たんですけど、あるとき気付いちゃったんですよね。俺自身が1番ガチャガチャしててうるさいんですよ。
——ご自身の個性が強いから。
いろいろ試したあとに黒を着てみたらつじつまが合っちゃったというか。こっちのほうが自分自身を表現することができるぞって思ったら、色がいらなくなっちゃったんですよね。その代わり、シンプルだからこそちっちゃなこだわりがあるんですよ。タイツの裾のちょっとしたカットとか幅とか、ブーツのステッチとか、誰にもわからないようこだわりがありますよ。ブーツは半年に1回新しくしてますし。
——半年に1回ってけっこう高い頻度じゃないですか?
ほかのレスラーは1足の靴を大体5年くらい履くんですけど、俺は半年に1回変えます。履き慣れて柔らかくなったものが嫌いなんですよ、古い靴を履いてるとかっこ悪いっていう気持ちがあって。だから新しいのをいつも履いてますね。
鈴木みのるの重要ワードは「モテたい」&『週刊少年ジャンプ』!?
——今後についてもおうかがいできればと思います。鈴木さんの理想って、例えばどんな人間なんですか?
いないんですよ。俺は例えばプロレスができるし、パイルドライバーのアイテムのデザインをすることもできるんですけど、ほかのことできない。それってやっぱりマイナスじゃないですか。でも、人間ってみんなデコボコだから別にそれでいいんじゃないかな。だから理想系とか究極系みたいのがないんです。俺、好きな女性のタイプもないんですよ。好きになっちゃったらその人が好きなタイプなんで。
——これからご自身がどういう風になりたい、というのも特にはないのでしょうか。
どういう風になりたい……漠然とはしてますけどね。
——漠然としたイメージはおありなんですね。
あります、あります。今自分が歩いているところが、プロレスの世界で前人未踏の場所だっていうのはわかってるんですよ。歴史に名を残した名レスラーたちが誰も歩いたことのない1歩を俺が今歩いているっていうのは、自分で感じているんで。もちろんこれを「さぁ、どこまで行けるかな」ってワクワクしてるのと、はたまた「この先、実はすげぇことが待ってるんじゃないか」っていうドキドキしてるのと、半々ですかね。
——『風になれ』の歌詞にも通じる世界観があるような気がします。
同じことを60歳のときに言ってたいです。そのときに「若い者には負けない」とは言いたくないですね。若い者に負けたくないっていうより、俺は誰にも負けたくないんで。そのためにはやっぱり練習しなきゃいけないし、そう思ってる分キツい練習やってる自信はありますね。“歳の割には”じゃなくて、全レスラー合わせたなかで、1番とは言わないけどまぁまぁやってるほうだとは思います。
——そう思って努力できる原動力には何があるのでしょうか。
これ、1番大事なポイントなんですよ。(真剣な眼差しで)モテたい。
——モテたい……!
真面目に、男の原動力って実はすべてここなんじゃないかって思うんですよ。俺もよく女の子に言われるの、「もうモテてるじゃないですか」って。違うんだよ。“モテたい”っていう願望を持ち続けることが、男にとってどれだけプラスをもたらすかっていうこと。俺は、“モテたい”は実はいいことなんじゃないかなぁって思うんです。実際、俺は子どもの頃からモテたことがないですけど。
——そんなことはないと思いますが……。
ないんです、本当に。ずっとフラれてるんですよ。もちろん女性のファンも、いいなって言ってくれる人もたくさんいるんですけど、それは“モテてる”という基準のなかにはないんですよ。ファンがいることとモテることはまた別じゃないですか。(ため息混じりで)モテたいですよ……。
——『大海賊祭』を開催するのもやっぱりモテたいからですか?
(小声で)モテたいッ!!
——そういうことだったんですね(笑)!!
(モテたいという心を)持ち続けてますねぇ。
——素敵です。
あとねぇ、これは俺いろんな人に言われるからきっとそうなんですよ。例えば漫画家さんだったら、『スラムダンク』の井上雄彦さん、それから『ONE PIECE』の尾田栄一郎さん。そのふたりに言われました。「正しい少年ジャンプ」って。
——友情・努力・勝利!
「『週刊少年ジャンプ』のままの人間」と言われたんです。
——最高の褒め言葉ですね。
それを現実の世界の女性に言わせると「“少年のような人”はかっこいいけど、“少年”はめんどくさい」って(笑)。
——あちゃー! 難しいですねぇ。
しょうがないんですよね、これが俺なんで。でも、最近大人になればなるほど実は自由になっていくのを感じているんですよ。歳をとればとるほどできなくなってくるんじゃなくて、その逆でやれる範疇がどんどん広がっていくんで。今のほうが何でもできるよっていう気持ちはあります。
——これからもどんどん自由になっていく鈴木さんの新しい挑戦や進化に期待ですね。
誰も見たことのないものを見たいですね。
——最後にひとつだけ。そんなバイタリティあふれる鈴木さんですが、この先もまた違った新しいことを始められる可能性はありますか?
今回、30周年記念としてこれだけ大きな規模のイベントを自分で仕掛けてやるんで「40周年どうするの?」って言う人もいるんですよ。普段だったら俺は「そんな先のこと考えられないよ」って言うんですけど、パッと浮かんじゃったんです。浮かんじゃったから、俺はきっとこの先それに向かっていくと思いますね。それが何なのかはまだ言えないですけど、前人未踏で、絶対に楽しいことですよ。(にやり)
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イベント情報
『大海賊祭』
日時:2018年6月23日(土)、24日(日)10:00〜19:00
※最終日は18:00まで
会場:神奈川・横浜赤レンガ倉庫イベント広場(神奈川県横浜市中区新港1-1)
入場料:入場無料
詳細は『大海賊祭』オフィシャルサイトをチェック!!