人間椅子・和嶋慎治が学ぶ大人のテルミン講座〜摩訶不思議な世界へようこそ〜

特集・インタビュー

[2019/6/6 12:00]

人間椅子がデビュー30周年記念アルバム『新青年』をリリース!

3ピースロックバンド人間椅子が6月5日にデビュー30周年記念アルバム『新青年』をリリース。同作は彼らによる無二のハードロックサウンドに加えてギター&ボーカルの和嶋慎治によるテルミンや大正琴の演奏なども織り込まれ、バラエティに富んだ1枚となっている。そんななか、今回『耳マン』では和嶋氏を直撃。同作について語ってもらうほか、同氏が現在注力しているテルミンの魅力に迫ります!

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——『新青年』のタイトルは大正から昭和にかけて実在した雑誌の名前からとられていて、1曲目が『新青年まえがき』というタイトルだったり、さまざまな曲調の楽曲が収録されていたりと、短編集のような内容に仕上がっています。このアイデアを思いついたきっかけを教えてください。

僕たちはそもそもバンド名が江戸川乱歩の小説『人間椅子』からとっているし、デビューの頃からいろんな小説のタイトルを借りて楽曲を作ってきたんですけど、今回は30周年記念ということで、その感じをアルバムタイトルでも表してみたくて。ただ小説のタイトルをつけるというよりは、短編集みたいなタイトルにするといいと思ったんですね。そこで、江戸川乱歩や夢野久作がデビューしてその後も執筆していた雑誌『新青年』からタイトルをとると、非常に包括的に表現できるかなぁと考えました。この雑誌を知らない人はちょっと不思議な感じがするかもしれないけど、知ってる人は聞いただけで「乱歩だな、夢野だな」ってイメージしやすいかなとも思ったんです。知らない人だとしても、30周年なのに新青年っていうことでインパクトがあるかなって。また、元号が変わったのでそれともリンクするんじゃないかなぁとも思いました。いろんな意味で非常にいいタイトルだと思っています。

——リード曲の『無情のスキャット』はやはりスキャットが印象的です。最近では『命売ります』(2018年)など、和嶋さんのスキャットが魅力的に楽曲を彩っていると思うのですが、これらはどのように生まれたんでしょうか。

『人造人間キカイダー』や『マジンガーZ』などのテレビ番組の主題歌を手がけた渡辺宙明っていう作曲家がいて、その人の音楽のなかで“宙明節”って呼ばれるものがあるんですね。マイナーのメロディやリフで、ブルーノートスケールを効果的に使って、例えば『秘密戦隊ゴレンジャー』の主題歌では「バンバラバンバンバン」とか入ってるんですけど、そういう意味不明な言葉を使うのが“宙明節”で。なんか自分と近いなぁと思って、そこを強力に作ってみようと思って意識しました。歌詞に関しては報われない人のことを歌おうと思ったのですが、本当に辛くなると多分言葉なんか出ないよなぁ、ため息や叫び声にしかならないよなぁと思って、あえて歌詞のない感じのサビにしたんです。

——同作では『新青年まえがき』『宇宙のディスクロージャー』『地獄のご馳走』(ボーナストラック曲)でテルミンが取り入れられています。和嶋さんがテルミンを演奏し始めたきっかけは何だったんですか?

ギターはピッチが正確な楽器なので、ギターだけだとどうしても表現しきれないところがあったりして。効果音的な感じで不思議な音を出したいなっていうときに、テルミンがよいのではないかと思ったことがきっかけです。それに、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが『ホール・ロッタ・ラブ』という曲でテルミンを弾いていて、その影響もありますね。だけど僕、独学で弾いているから、一度誰かにテルミンを教わってみたいんですよねぇ。できれば音程をとった演奏もしてみたいし。

——そんな和嶋さんのために今回は特別に『耳マンテルミン講座』を開講します! 先生もお呼びしましたよ!

和嶋:えっ! いいんですか!?

特別企画!〜人間椅子・和嶋慎治が学ぶ大人のテルミン講座〜

\ジャーーーン!!!/

【テルミンとは】

1919年にロシアの発明家レフ・セルゲーエヴィチ・テルミン博士が発明した世界初の電子楽器。本体に直接手を触れずに、空間中の手の位置を動かすことによってピッチ(音程)やボリューム(音量)を操ることができる。

【講師・大西ようこプロフィール】

神奈川県逗子生まれ。御茶ノ水女子大学・東京大学大学院で物理学を学んだのちテルミンと出会い、テルミン奏者となる。効果音的な使い方だけでなくきちんと音楽も演奏できるテルミンという楽器の魅力を伝えるべく、日本全国で演奏活動を展開中。

和嶋:本日はよろしくお願いいたします。

大西:こちらこそ、よろしくお願いいたします。

ボリュームはどうやって調節するの?

大西:まずは和嶋さんの機材について教えてください。

和嶋:僕はいつもMoogのイーサウェーブテルミンスタンダードを使っています。なぜかギタリストにはテルミンを弾く人が多くて、まわりにも同じものを使ってる人がいますね。

大西:セッティング、おもしろいですね! スタンドが三脚じゃなくて丸型なんですね。

和嶋:ディレイのエフェクターとボリュームペダルを使ってます。スタンドを丸型にしたのは、ボリュームペダルが収まりやすいのと、なんとなく古いロックの雰囲気が出るかなって。

大西:ディレイのエフェクター、ナイスアイディアです! ボリュームペダルはどうして繋げているんですか?

和嶋:テルミンのボリュームのつまみを0にしても、常に音が鳴っちゃうんですよ! だからボリュームペダルを繋げてるんです。

大西:うふふ! それはそうですよ。テルミンのボリュームのつまみは音の大きさを変えるのではなく、音がどこから出るか、そしてどこまでの間に一番小さな音から一番大きい音に変化するかっていう幅を決めるものなんです。

和嶋:なるほど! 左手に連動している感じがありますもんね。それ、説明書読んでなかったんでわかりませんでした! ボリュームのつまみっていうと、固定観念で出力の音量のことかと思ってました。

大西:左手のタッチを決めるものなんですよね。

和嶋:先生の楽器にはいろんなつまみがついてますね。この機種は初めて見ました。

大西:今回はKORGさんより、Moog社のイーサウェーブプロをお借りしました。私が普段使っている機種です。現在は製造・販売を中止している貴重な楽器で、プリセットの音色やエフェクトなどが内蔵されてるんです。音域を切り替えることもできるんですが、そのつまみもこの機種にしかついていないですね。

ピッチのとり方を学ぼう

和嶋:今日はとにかくピッチの正確なとり方を教わりたくて。テルミンならではのピッチのスムーズさってあるじゃないですか。きっと、チェロやバイオリンみたいにフレットがない楽器に近いんですよね?

大西:そうなんです。テルミン博士もチェロを弾く方なので、近いところがあるんだと思います。和嶋さんがライブでテルミンを弾かれている映像を拝見したんですけど、和嶋さんは右手を横(自分と並行)に動かしていらっしゃいますよね。音階をとるには、縦(自分に垂直)に動かすほうが楽だと思うんです(お手本を見せながら)。

和嶋:あぁ、なるほど! (先生に倣って音を出しながら)こうか! 僕、今後これでいきます! ジミー・ペイジが手を横に動かしてるから、マネしちゃったんですよね。

大西:自分とテルミンの間に4オクターブくらい音程をとるイメージで、自分の近くに0ポイントがくるようにピッチのつまみで調整すると、大体均等な幅に鍵盤が並ぶんです。

(ドレミファソラシドを弾く先生に続いて、和嶋も同じように弾く)

大西:いい感じじゃないですか!

和嶋:本当だ、今までより音がとれるようになった! なんか、上手い人のあとをついてスキーとかバイクとかやると上手くなるみたいに、先生のあとを追うと上手く弾ける気がする!

手以外でも演奏できる自由な楽器

大西:私、映像で拝見した和嶋さんのテルミンのライブパフォーマンスが本当に素晴らしいと思って。ハンドサインを作りながら弾いてらしたり、あんなふうにロックな奏法を逆に教えていただきたいくらいなんですよ。

和嶋:(すごく照れながら)ピッチが上手く出せないんでとにかく動きでごまかしてるっていうか……即興でやってるだけなんですよ。なんか恥ずかしいわぁ(笑)。自分としては、大げさに動くっていうか(笑)。

大西:マネして手をハートにして弾いてみたりしたんですけど、上手くいかなくて……。

和嶋:あの、別にマネしなくていいと思います……。ライブではギターを近づけてテルミンの音を出したり、ベースの鈴木(研一)君が近づいて音を出したりもしてるんですけど、手以外で音を出すのは邪道ですか?

大西:もちろんそれも極めていただければ! 例えば鳥が近くを舞っても音が出ますし。

和嶋:それ、いいですね。鳥が……。

今回の講座を踏まえて、摩訶不思議なテルミンセッションをしてみよう!

——それでは今回の講座で学んだことを踏まえて、最後におふたりでセッションをしてもらってもいいでしょうか?

和嶋:いざ本番になると上手く弾けないかもしれない!

——素晴らしいセッションでした!

和嶋:(先生の楽器を指して)これ、すげぇ! 綺麗な音が出るわぁ。(興奮気味に)僕、ドレミを初めて弾けましたわぁ!

——和嶋さん、今日の感想は?

和嶋:新譜の取材といえば作品をアピールしたり、作品についてのインタビューを受けることが多いと思うんですけど、あの、今までにないくらい自分の勉強になった取材でした(笑)! 僕はずーっと独学でいろんな楽器を弾いてきたので、ちゃんと習ったことがなかったんですよ。でも、やっぱり習うって大事だなぁって思いました。自分の身体と楽器との距離でボリュームやピッチをつかむんだとか、すごくためになりました。ありがとうございました!

——『新青年』のリリースツアーでもテルミンが披露されますか?

和嶋:おそらく全箇所どこかしらでテルミンが登場するんじゃないですかね。テルミンに関してはいつもステージで練習するみたいな感じだったんで(笑)、ワンツアーで後半にかけて段々上手くなっていってたんですけど。今回は自宅で練習しようかな(笑)。

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人間椅子、30周年記念アルバム『新青年』リリース&全国ツアー開催!

人間椅子。左から鈴木研一(ベース&ボーカル)、和嶋慎治(ギター&ボーカル)、ナカジマノブ(ドラム&ボーカル)

30周年記念アルバム『新青年』(21枚目オリジナルアルバム)

『新青年』 ジャケット

2019年6月5日(水)発売
初回盤(CD+DVD)TKCA-74791 ¥3,241(税別)
通常盤(CD)TKCA-74792 2,685(税別)
CD:全13曲収録/DVD:レコーディングドキュメンタリー映像
*ジャケットは初回・通常共通

<CD 全13曲収録>
M1.新青年まえがき(作詞・作曲/和嶋慎治)
M2.鏡地獄(作詞・作曲/和嶋慎治)
M3.瀆神(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M4.屋根裏の散歩者(作詞・作曲/和嶋慎治)
M5.巌窟王(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M6.いろはにほへと(作詞・作曲/和嶋慎治)
M7.宇宙のディスクロージャー(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M8.あなたの知らない世界(作詞・作曲/和嶋慎治)
M9.地獄小僧(作詞/和嶋慎治 作曲/ナカジマノブ)
M10.地獄の申し子(作詞・作曲/鈴木研一)
M11.月のアペニン山(作詞・作曲/和嶋慎治)
M12.暗夜行路(作詞/和嶋慎治 作曲/鈴木研一)
M13.無情のスキャット(作詞・作曲/和嶋慎治)

<DVD>
「新青年」への軌跡

『三十周年記念オリジナルアルバム『新青年』リリースワンマンツアー』(全12公演)

6月26日(水)千葉・千葉ルック(ソールドアウト)
6月28日(金)兵庫・神戸Chicken George
7月1日(月)福岡・福岡DRUM Be-1
7月3日(水)京都・京都MUSE
7月5日(金)愛知・名古屋E.L.L.
7月7日(日)香川・高松オリーブホール
7月11日(木)山形・山形ミュージック昭和セッション
7月13日(土)青森・青森Quater
7月15日(月)宮城・仙台CLUB JUNK BOX
7月19日(金)北海道・札幌cube garden
7月23日(火)大阪・大阪umeda TRAD
7月26日(金)東京・豊洲PIT
*一般チケット発売中

インストアイベント スケジュール

6月 5日(水) ヴィレッジヴァンガード渋谷本店
6月 9日(日) タワーレコード渋谷店 B1F「CUTUP STUDIO」
6月13日(木) タワーレコード難波店
6月14日(金) タワーレコード名古屋近鉄パッセ店
6月30日(日) タワーレコード福岡パルコ店
7月20日(土) タワーレコード札幌ピヴォ店

詳細は人間椅子オフィシャルサイトをチェック!

榊ピアノ