ZYUN.歌手活動休止への想いと“あの疑問”の真相を語る
4オクターブのレンジと唯一無二の“ミックスボイス”でリスナーを魅了してきたシンガーソングライターZYUN.。歌手としてはもちろん、プロデュース活動や楽曲提供、ミュージックビデオのディレクション、ファッションブランド『XIX』のプロデュースなど、多岐にわたって活躍するアーティストです。しかし3周年を迎えた5月18日に、歌手としての活動を無期限休止することを発表。今回は、歌手活動休止の理由やラストライブへの想いを聞くとともに、デビュー当時から議論となっていた“あの話題”の真相に迫りました!
歌手としての3年間があったからこそ向き合えた夢
――歌手活動3周年の日に、歌手活動を無期限休止するという衝撃の発表がありました。ズバリおうかがいしますが、休止の理由は何だったのでしょうか?
ずっとやりたかったプロデューサーという夢に向かっていこうと思ったんです。
――そもそも、ZYUN.さんが歌手を始めた理由も特殊だったとか?
ありがたいお話なんですけど、デビュー前からメジャーデビューのお誘いは受けていて、そのたびに断っていて。人様より高いステージに立たせてもらうとか、そういうのが自分の性分には合わないなって。人を裏で支えるほうになりたいタイプなので、表に立つという仕事には興味がなかったんですよね。でも当時やっていたバンドが解散することになって、始めたからにはファンへの責任をもたなきゃと思って、ソロでライブをすると宣言して。それがマイナビBLITZ赤坂だったんですけど、ファンのみんなとだったらメジャーデビューという人生もおもしろいかなと思いました。だから自分の意志というよりは、みなさんに用意していただいたり求めてもらった先に自分の歌があったという感じで。
――なるほど。3年間の活動を振り返って、いかがですか?
移籍したり、1年間インディーズに戻って自分と身近なスタッフだけでツアーをやったり、3年といえども自分のなかではメジャーで10年、20年の経験をさせてもらって。ただ、数字として結果が出なかっただけで。
――はぁ……。
ここ、笑うところ(笑)!
――すみません、笑っていいのかわからなくて(笑)。
レコード会社に恩返しをする意味でも、売れる音楽をやるべきだったのかもしれないけど、無理だったんです。僕は作り手志望で、ZYUN.は歌が歌いたくて始まったアーティストではないので、ZYUN.にしか歌えない音楽を提供しない限り歌う必要がなくなってしまう。ZYUN.というアーティストには降りてきたメロディや歌詞をそのまま歌わせてきたので、それを売れるモノとか流行りのモノに変換することができなかったんですよね。それが自分の信念でもあるんですけど、歌手としてはそこを譲っていればよかったのかもしれないっていう気持ちは、ちょっとあります。
――休止に際して葛藤はあったのでしょうか?
音楽を作ってそれによって輝いていくアーティストを見たいというのが僕の夢だったので、歌手活動に関しては“やりきったな”って。世間は結果も出してないのにって思うかもしれないけど、結果なんてものは人生のなかで自分で決めるものだと思うので。僕のなかでのプロの歌手としての結果は最大限に出たなと思います。そして歌手としての3年間の人生があったからこそ幼い頃からの夢に向き合えたので、無期限活動休止を発表しました。だから、寂しいことも悲しいこともないですよ。すかーっとしてる感じです。例えるなら、朝起きて“あ、天気いいから海でも行こうかな”っていうテンション。
――ものすごい軽やかさ!
そうじゃないとファンのみなさんも重たい気持ちになっちゃうし、みんなと明るい未来を作るために音楽を作っているので。僕は「ずっと君たちのそばにいる」とか「絶対ステージを降りません」とか、そういうことは言えないよって公言してきました。ただ、「1秒でも長く歌える選択をしていきます」と、唯一デビュー当時からファンと約束していて。今回の活動休止も、歌うための選択には変わりなくて。このままやらせていただいたら、僕はまわりの人たちの期待に応えたくて、やりたいことを我慢してしまうと思うんです。そうなると、せっかくみんなのおかげで歌うことが好きになったのに、嫌いになっちゃうなって。
――ZYUN.さんのスタンスだからこそ、まわりのことを考えてしまうんですね。
やっぱり、数字をみせたくなるんですよ。がんばってくれるスタッフさんや、応援してくれるファンのために。ランキングに入りたいとか数字を出してあげたいとか、僕もこういう気持ちになるんだなって、自分自身でもビックリしました。それでもやっぱり譲れないZYUN.の歌があって、ZYUN.に対しては職業作家になりきれない僕がいて。それで1秒でも長く歌える選択は何だろうって思ったときに「やりたいことをやりながら歌いたいと思ったタイミングで歌う」という結論が出ました。事務所も退所するし、そういった(売れたいと思わなくていいという)意味で、これからは自由に歌っていける。自由こそ音楽だよねって思いました。
――クリエーターとして活動は続けるけど、事務所はやめちゃうんですね。
甘えてられないなって。社長とかは「(残って)いいよ」って言ってくれるんですけど、そこは礼儀としてやめさせていただきます。ただ、プロデュースしている荒井麻珠がウチの事務所なので、次はプロデューサーとして全力で動いていこうと思っています。
――休止に関してファンのみなさんの反応は?
相当へこませちゃったなと。でも歌手として120%誠実にステージに立ってきたので、後ろめたい気持ちはまったくありません。みんなは歌手をやめても僕の音楽を、言葉を、きっと必要としてくれるし、僕が歌ったときにはきっと喜んでくれる。そんな関係になれていると思っているので、大丈夫だと思いますね。きっと「ZYUN.だから仕方ないか」って思ってくれると思う(笑)。
――今後はやはりプロデュースが軸になる?
そうですね。荒井麻珠の総合プロデューサーとして夢の第一歩を踏み出しました。JUNANASTA.というグループも10年くらいプロデュースしています。プロデューサーって生半可な気持ちでできないので、もちろん売れるためのプロデュースも大事だけど、いくつになっても音楽が好きで、変わらず楽しみながらやっていける空間・環境・その人を作るというのも、すごく大事だなと思っています。とはいえクリエーターなので、いろんな方に楽曲や歌詞を提供させていただいたり、MVの監督もやったり、あとはXIXというブランドもプロデュースしたり。第1にはプロデューサーですけど、創作活動が好きなので自由に楽しみながらやっていきたいなって思います。(次ページへ)