【オネエの映画レビュー】『ロケットマン』と『ボヘミアン・ラプソディ』の違いとは!? ドキドキしたのはあのシーン

連載・コラム

[2019/9/2 12:00]

社会現象とも言える異例のヒットを記録した映画『ボヘミアン・ラプソディ』に続く、ミュージシャンの伝記&LGBTを扱った映画『ロケットマン』が公開となった。同作は同性婚を公にしている伝説的アーティスト、エルトン・ジョンの半生を描いた作品となっているが、新宿2丁目の住人の目にはどう映ったのか!? ドラァグクイーンとして活躍し、コラムニストとしても著書『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。新宿2丁目も愛した歌姫』を発売したアロム奈美江が『ロケットマン』の魅力をつづる!

Photo Credit:David Appleby Copyright (c) 2018 PARAMOUNT PIC

敬意を評してエルトン姐さんと呼ばせていただきます!

2019年夏公開の映画のなかで個人的に注目していたのは、テレビドラマ放送時から大ファンの『おっさんずラブ』だったし、実際真っ先に観るつもりだったのだけれど、奇しくも『おっさんずラブ』と同日公開となった『ロケットマン』をついつい先に観てしまった私……。気持ちをもっていかれた理由は、「本当にあった”おっさんずラブ”」だから……にほかなりません。

LGBTって言葉が浸透してきた日本でも、いまだゲイをカミングアウトしながらも第一線で活躍している歌い手はほぼいないに等しい(バレバレって人はまあまあいる)のだけれど、海外はやはり早い! その代表格が、イギリスが誇るエルトン・ジョン! 敬意を評して、これからはエルトン姐さんと呼ばせていただきます! そんなエルトン姐さんの半生を描いた『ロケットマン』。観ておかねばオカマがすたる!

とはいえ、30代のオカマである私からすると、エルトン姐さんに関する知識って以下のようなことしかなかったの。

・1997年に事故死したダイアナ妃へ捧げた『キャンドル・イン・ザ・ウィンド』がヒットしたベテラン歌手
・同性婚を公にしている
・代理母に出産してもらった子どもがいる

この程度よ、お恥ずかしい……。同時期に活躍したフレディ・マーキュリーの半生を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』を観たときも予備知識ほぼなしだったけど、エルトン姐さんに関してはそれ以上かも!? 実際、映画を観ていても、劇中に使用されているエルトン姐さんのヒット曲たちも私が存じ上げていたのは『Your Song』くらいだったわ。

フレディ・マーキュリーの人生と類似する点が多い

でも、映画は別にエルトン姐さんのことを知らなくても十分に楽しめる内容。ミュージカル要素強めで飽きさせないし、当然ながらエルトン姐さんの楽曲は素晴らしいし、映画を観てるだけで瞬く間に世界のトップスターへとのぼりつめたエルトン姐さんの偉大な功績はうかがい知ることができちゃうの。

ただどうしても既視感が……なんなのこの既視感は!? と思ったら、やっぱり『ボヘミアン・ラプソディ』でした。題材が題材なだけにどうしても比較されがちだろうけど、私もまた映画を観ながらずっと『ボヘミアン・ラプソディ』が頭をよぎっていたわ。

幼少期からの父親との確執であったり、自分のセクシュアリティを受け入れるまでの葛藤、カミングアウトしたことで大切な人から拒絶されたり心無い言葉を投げられ絶望してしまうなど……。エルトン姐さんが辿って来た人生は、フレディ・マーキュリーのそれと類似する点が多いので、映画のストーリーもなんだか似通ったものに感じてしまったのよ。(次のページへ)

アロム奈美江

ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。現在は、流しの女装パフォーマー、ホステス、MC、イベントオーガナイザーとして節操なく小銭を稼いでいる。