“ニューウェーブ・ギャル”田島ハルコに「勘違いブス叩き」を絶滅させる方法を聞いてみた

特集・インタビュー

[2019/9/20 12:00]

「人類のワックな所業を56億7千万年後から嘆くlilブッダ(a.k.a弥勒)に成り代わる、ニューウェーブ・ギャルかつ都市型の巫女」

そんな大げさな肩書を名乗るシンガーソング・トラックメイカーの田島ハルコは、「女性のエンパワーメント」が叫ばれる今、もっともチェックすべきアーティストかもしれない。

今夏リリースした最新アルバム『kawaiiresist──カワイイレジスト──』は、田島いわく、「『冷静にこの社会しんどくない?』って感じの皆さん」に向けた作品。ルッキズム(容姿をめぐる差別)など旧来の価値観に対する反骨心を核にしながらも、あくまで軽やかに朗らかに、我が道を進む楽しさを発信する全11曲が収録されている。自分がやりたいなら、やればいいじゃん! そう手招きするような楽曲の数々は、「○○なら~~であるべき」論のぬかるみに足を取られた人間すべてに勇気を与えるものだろう。

限りなく自由に近い人生を面白く生きるニューウェーブ・ギャル、田島ハルコのことが人類にはもうちょっと必要。

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『姉ageha』も再ブーム……いまやギャルは民間信仰?

(田島のスマホが何度もバイブする)

――今チェックしてもらって大丈夫ですよ。

いや、大丈夫です。何か悪いところに番号が出回っているみたいで、めっちゃネット回線の案内とかくるんですよ(笑)。

――悪いところに番号が出回っているのに明るいな~! 最新アルバム『kawaiiresist』でツイート検索してみると、熱量の高い感想がいくつもあって驚きました。流通規模から考えると、“リスナーに刺さっている”率がとにかく高いんだろうなという印象です。

たしかに刺さるべきところに刺さっている感覚があってありがたいです。

――「魂は容姿なんか関係ない」と歌う『ちふれGANG』や、「自分だけのスタイルでキメれ」と歌う『遅咲きGAL』など、現代らしいポジティブなメッセージの楽曲が詰まったアルバムです。

フェミニズムとかをしっかり勉強したわけではないんですけど、SNSをがっつり見ていると、風みたいなものを感じませんか? なんとなくちょっと未来の景色が見える瞬間というか。その“風”を音楽など形に残るものにしたいなと感じています。

――風……。

そうですね、風を……(笑)。

――田島さんの活動のキーワードのひとつである“ギャル”にも風を感じたのでしょうか?

はい。今ってギャルが概念になっていませんか? Twitter上では、良いことを言って励ましてくれる存在としてのギャルが人気ですよね。「職場のギャルがこんなことを言ってくれた」って実在するのかわからないギャルの言葉がバズったりして、けっしてスクールカーストが高かったわけではない皆さんが、ギャルに何かしらの救いを見出している(笑)。一言で説明するのは難しいですが、ある意味、ギャルが民間信仰の対象みたいになっている気がします。

――なるほど。「落ち込んだときは、心の中のギャルに励ましてもらおう」みたいなツイートをたまに見かけますが、それはまさに神に近い存在ですね。

「イケイケじゃなかった人間たちの思いをすくいあげてくれる、イケイケな存在」という幻覚なんですよね。私も学生時代は全然イケてなかったタイプなんですが、そういう“ギャル”が実在したらいいなと感じたのが、現在のスタイルにつながりました。

――かつての『小悪魔ageha』読者以外からも『姉ageha』が支持されるなど、世の中が“ギャル”を求めているのを感じます。

私、『姉ageha』のストリートスナップに参加したんですよ。「自分なりのオシャレをしていれば、ギャルじゃなくてもいいし、年齢・性別は一切問いません」という素晴らしい企画だったんですけど、全然誰もいなくて、私と友達が参加したのを見て、人が集まってきました。「本当はこういうファッションに憧れるけど、自分にはできない」と踏み出せない人が多いんでしょうね。だからこそ架空のギャルが求められるのでしょうが、せっかく自分の中にそういう気持ちがあるなら、実現させていったほうがいいんじゃないかな。

――田島さんが“ギャル”として活動するうえで重視していることはありますか?

現代における“ギャル”の概念は拡張されきって、むしろ私はもう全員がギャルになったと思っているんですよね。だからギャル像は、人それぞれ心の中に持てばいい。誰が何を言おうが、自分を守るためにやっていることなら、それがもうあなたの“ギャル”です。(次ページへ)

原田イチボ@HEW