“史上初の現役アイドル総合格闘家”川村虹花を直撃! 今年の目標は? 筋肉女子ブームは追い風?

特集・インタビュー

[2020/4/19 12:00]

2020年を勝ち星で埋め尽くしたい! ケガによる欠場もあって2019年は戦績が振るわなかった現役アイドル総合格闘家・川村虹花だが、2020年2月に行われた『DEEP JEWELS 28』での坂本美香戦では久々の勝利を飾った。

筋肉女子ブームが追い風になり、NHK『みんなで筋肉体操』にも出演するなど、芸能活動も順調な川村。アイドルとしても、総合格闘家としても重要な時期にある彼女は、「強くないと意味がありません」と意気込む。

復帰戦は「本音を言えば、怖かった」

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――2018年末の『RIZIN』から黒星が続き、2019年は未勝利という厳しい状況でしたが、久しぶりの勝利、おめでとうございます。

いや~、本当に去年は首のケガでなかなか自分の思うように練習もできず、結果もあまり残せず……。とにかく止まっていちゃダメだと思って、下半身を使ったステップの練習だったり、欠場中でもできることをして気を抜かないようにしていました。悔しかったぶん、今年こそはやってやりたいですね。

――欠場から復帰後の試合は怖くありませんでしたか?

本音を言えば、怖かったです。復帰戦はどうしても自信をもって試合に挑めなかったせいで、攻めきれずに負けてしまった。これじゃダメだと次の試合は積極的に仕掛けていったんですが、それでも判定負けで……。とにかく悔しかったですね。試合って、自分に自信がもてていない状態でするのが一番ダメなんですよ。でも久々に試合に勝って、しかも宣言どおり1ラウンドで終わることができたのでひと安心です。やっぱり勝つのは気持ちがいいですね。倒されたのは予想外の展開だったんですが、相手の下になってしまったときの対策も練っていたので、冷静に練習の成果を出すことができたんじゃないでしょうか。

――現役アイドルとしても活動しているぶん、連敗中は厳しい意見に晒されたのでは……?

それが思ったより批判ばかりじゃなかったんですよね。試合を観たら私の本気が伝わったみたいで、逆にファンになってくれる方もいました。

――もともと“アイドル・川村虹花”のファンだった方が試合に足を運んだり、“格闘家・川村虹花”のファンの方がライブに足を運んだりということもあるのでしょうか?

ありますよー! 初めは「殴られる虹花ちゃんを見るのがつらい」と言いながら試合を観てくださっていたアイドルのファンの方が、そのうち格闘そのものが好きになったりするんです(笑)。逆にライブを楽しんでくれる格闘ファンの方もいます。

1日の消費カロリーは日本でもトップクラスに多い!?

――2017年12月に総合格闘家としてデビューしました。たまたま総合格闘の試合を観たことがきっかけで、自分も格闘家になってしまったとか。

親が格闘好きで、小さな頃から試合の映像を横で観たりしていたので、もともと素養みたいなものはあったんですよ。私は15歳でアイドルになったんですが、20歳を超えて、「このままアイドルを続けていいのか?」と悩むようになりました。大勢アイドルがいるなかで、“自分だけの武器”がないと埋もれちゃうなって……。そんなときに偶然試合を観て、「これだ!」と思いました。

――試合を観て、いきなり「自分もやろう!」と思えるのがすごいですね。

ふふふ(笑)。人と違うことをするのが大好きなんですよ。運動神経にも自信がありましたし、“現役アイドル格闘家”になったら、これは相当インパクトあるなって(笑)。

――一度プロレスデビューもしましたが、やはり総合のほうが性に合っている?

そうですね。プロレスも楽しかったんですけど、個人的には、観客を意識した戦いよりも、対戦相手だけに集中した1対1の殴り合いのほうが合っています。

――アイドル活動と総合格闘家としての活動、両立で大変なことは何でしょうか?

とにかくスケジュールがキツいですね。今は格闘を優先しているので、試合前はライブをお休みさせてもらっているんですが、朝から夕方まで練習して、その後ライブ2公演とかだと体力的にヤバい! 私が所属している仮面女子は劇場公演を大事にしているので、そもそも単体でやるにしても大変なアイドルなんですよ。プラス格闘だから、体ひとつじゃ足りませんね。ジムの人たちには、「1日の消費カロリーが日本でもトップクラスに多い人間じゃないか」って言われています(笑)。大変だけど、やっぱり格闘は楽しいんですよ。「誰も挑戦しなかったことを私が成し遂げてやる!」という気持ちがモチベーションです。

所属事務所は「好きなだけムキムキになっていいよ」

――試合だと、顔を殴られますよね。

全然がんがん殴られます(笑)。

――アイドル活動に支障が出たりは……。

とりあえず、あざは全然隠していません。あざだらけなのが普通になって、もはやファンの方も気にしなくなりました(笑)。事務所の人たちが、ライブとかイベントを考慮して、いろいろ隠し方とかを考えてくれるのでありがたいです。

――おおらかな事務所だ!

私が格闘やりたいと言い出したときも「好きにしな」って感じで、今も「好きなだけムキムキになっていいよ」みたいな感じです(笑)。だからこそ、格闘をがんばっていることが結果的に『筋肉体操』とか新しい芸能のお仕事にもつながってよかったなぁって。

――いまや“筋肉女子”の代表格ですもんね。

アイドルが普段出ないような媒体にも出させていただいて、活動の幅が広がってありがたいです。現役アイドルで総合格闘となると少しは注目されるだろうとは思っていたんですが、ここまで筋肉女子に需要があると思っていませんでした。私が格闘を始めてから筋肉女子ブームが来て、上手く時代が追いついてくれたというか(笑)。

――いわゆる“見せ筋”も意識しながらトレーニングしているのでしょうか?

いや、純粋に練習だけでついた筋肉です。自撮り写真をSNSにアップすると、よく女子から「どうしたら腹筋が割れますか?」みたいな質問が来るんですが、特別そのためのトレーニングはしていないので、「同じくらい練習したら自然と腹筋割れます!」としか答えられないんです……(笑)。

――体形が変化したぶん、アイドルの衣装が入らなくなったりしませんか?

意外と大丈夫です。ただ腕が出る衣装だと、みんなと腕が違うので目立っちゃう……。仮面女子は、「顔を隠すことで個人のアイデンティティを捨て、代償に群れとしての強烈なアイデンティティを手に入れた」というコンセプトでメンバー全員が仮面をつけているんですが、私だけ体形で誰かわかっちゃう。だから長袖の衣装のほうが好きです(笑)。

RENA、浅倉カンナ、浜崎朱加たちトップ層に食い込みたい

――仮面女子は2018年から神谷えりなさんや立花あんなさんといった主力メンバーの卒業が続きました。仮面女子も大事な時期ですし、格闘家としても大事な時期ですし、川村さんはバランスをとるのが難しいだろうなと。

そうなんですよ。もう初期メンバーが私しかいないのに、格闘の練習でライブのリハにあまり出られなかったりして……。でも私がいなくても、グループを引っ張ってくれるメンバーはいるんですよ。だから仮面女子は任せて、私は私にしかできないことをやろうと、今は格闘優先で活動させてもらっています。

――今の川村さんは、仮面女子を世間に知ってもらう“入り口”の役割を果たしていますよね。

仮面女子が私をきっかけに広がってほしいです。メンバーたちも「ソロの仕事、がんばってね」とか「また『RIZIN』でさいたまスーパーアリーナ連れて行ってね」とか応援してくれています。さいたまスーパーアリーナは、『RIZIN』の会場でもありますし、仮面女子が2015年にライブを開催した会場でもあります。ふたつの意味で大事な会場に、またメンバーたちと一緒に立ちたいですね。

――ソロの仕事も増えるなかで、それでもグループ愛が強いんですね。

私は仮面女子のなかでも“アリス十番”というグループに所属しているんですが(※)、事務所に入ったときから憧れのユニットだったので、加入できたときは本当にうれしかったなぁ……。その初心を忘れたくないんですよね。私の憧れた先輩たちが残してくれたユニットを、かっこいいままずっと残したいんです。
(※仮面女子は、アリス十番、スチームガールズ、アーマーガールズ、イースターガールズの4つのユニットが合体した大型グループ)

――今の川村さんはとてもストイックですが、アイドルを始める前からそうだったんでしょうか?

……うーん、昔の私は何もありませんでした。めちゃくちゃ人見知りで、最初は何もしゃべれなかったし。憧れのアリス十番に加入することができたときも、とにかくついていくのに必死で……。でも努力を続けるうちに、ファンのみなさんも「虹花ちゃんがいないとアリスじゃない」と言ってくれるようになりました。アリス十番が私を成長させてくれました。

――人と違うことをするのが好きなのは昔からですか?

それは昔からですね(笑)。でも高校に入るまでは、将来の夢もとくになく。でも高校のクラスメイトがアイドルで、私も誘われて試しに事務所を探してみたら、たまたま見つけたアリス十番に「何だ、これは!」と惹かれて……。でも変わったアイドルグループで活動しているうちに、それだけじゃ足りなくなって、格闘を始めました。現役アイドル総合格闘家という史上初のことができるのは、すごく気持ちいいです。

――最後に、総合格闘家としての目標を教えてください。

とりあえず今年は連勝! 総合格闘家になれたのはうれしいですが、強くないと意味がありません。勝って結果を残していきたいです。そして、ゆくゆくはRENA選手や浅倉カンナ選手、浜崎朱加選手たちトップ層に食い込みたい。彼女たちと勝負できる存在を目指しています。

川村虹花

1995年12月26日生まれ、神奈川県出身。2013年にアリス十番に加入。2017年9月にガンバレ☆プロレスにてプロレスデビュー。同年12月に総合格闘家としてデビューし、女子格闘技イベント『DEEP JEWELS』を主戦場に活動。2018年末に『RIZIN』初参戦。近年は“筋肉女子”としても注目を集め、NHK『みんなで筋肉体操』第3シリーズに番組発の女性アシスタントとして出演。

取材・文 / アイドルライター原田イチボ@HEW