永野×金子ノブアキ対談 〜「僕たちが大好きなロックの話」

特集・インタビュー

[2021/11/25 12:00]

ロックフリークとして注目を集めている芸人・永野の初書籍『僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!〜』が音楽ファンのあいだで話題を呼んでいる。ここでは本書の発売を記念して、永野と映画『MANRIKI』(2019年公開)でも共演している金子ノブアキ(RIZE、RED ORCA、AA=)との対談を実施! 1990年代ロックにどっぷりと浸かったふたりのロック談義が止まらない!
※インタビュー:『耳マン』編集部

永野――やっぱりリンプこそロック。あれぞリアル

金子――何周かしてフレッド・ダーストって超アリになってる

――映画『MANRIKI』でも共演されているおふたりですが最近お会いになったのっていつぐらいですか?

金子:えー、最近会ったのっていつでしたかね?

永野:いつだろう。

金子:けっこうメールはしてて。

永野:そうなんですよ!

金子:永野さんのYouTubeすごい観てて、インスタのDMで感想を送ったりとか。

永野:そーうなんすよ!

金子:よ〜くぞ言ってくれました! 成仏できました!っていつも思ってて。

永野:ありがとうございます! YouTube(永野CHANNEL)でレッチリについていい加減に語ったら、めちゃくちゃ熱い感想のLINEがきたりして。

金子:ほんとおもしろいですよ。メディアで『スポーン』のサントラの話をした人なんてこれまでいないでしょ!

永野:1990年代を生きた人の忘れ物を成仏させるチャンネルみたいなところもあって……。

金子:ほかにも『ワン・ホット・ミニット』とか『レネゲイズ』とか。もう、そこなんすよ!っていう。大好きだから。なんでみんなデイヴ・ナヴァロのこと悪く言うの!?みたいな!

――そんな感じの感想がいつもくるんですね(笑)。

永野:もはや参加してくれてるんですよ。

金子:リンプのやつも観てから来たかったな〜。(※本対談は永野 CHANNEL で公開されたリンプ・ビズキット新作レビュー回の生配信前に実施)

永野:一昨日に新作が「急遽リリース!」とか発表されて。生意気だな!と思ったんですよ。誰が急遽リリースすんだお前!って。もっとでかいバンドがやることだろ(笑)! そういうところがもう全部好きなんですよねリンプは。

金子:最近のリンプはほんと最高。フレッド・ダースト初めて好きかもって感じだもん。

永野:ウェス・ボーランドをみんないいって言うし僕も大好きなんですけど、やっぱりフレッド・ダーストですよ。いよいよカツラかぶり出して(笑)。完全にカツラなやつ(笑)。

金子:おじいちゃんみたいな(笑)。coldrainのKatsumaくんがインスタで最近のフレッドの写真をあげてて、「えっ、えっ、これ本人?」って言ったら「これやばくないですか?」って。

永野:そっちのシーンの人もやっぱ好きなんですね! 嬉しいな〜! お笑い的にも悔しかったですもん、あのカツラ。フレッドなんてもはや死体みたいなものだから、カツラつけられても気づかなかったのかな!

金子:何周かしてフレッドって超アリなんじゃないかっていう。

永野:自分がもしハゲた場合、カツラってこんなに堂々としていいんだと(笑)。

金子:ニューエラからのね。

永野:『Gold Cobra』っていう前作の、俺だけが世界で評価してるアルバムも……。

金子:俺も好きだった! 『Gold Cobra』!

永野:初めて会ったわそんな人(笑)! あれも最高で。

金子:あれからもう10年なんですよね。今回も「10年ぶりのフルアルバム!!! ダーン!!!」みたいな感じで。煽られて急に気づくみたいな。

永野:自分から煽ってくるんだよなあいつら! タチ悪いんだよ〜。こっちはなんとも思ってないのに。

金子:リンプだと『Break Stuff』とかは好きだったかも。

永野:デ〜デッ!のやつ!

金子:歌詞も「俺はチェーンソー持ってるんだぜ。お前の皮を剥いでやる」みたいな。「ぜってー持ってねえだろ!」みたいな感じで。で、そういうやつらが集まって、ライブでめっちゃ盛り上がってるっていう。

永野:そうそう!

金子:あの美しき負け犬たちの世界。最高にイケてますよね。

永野:本当の負け犬って白人なんだなって教えてもらったバンドですよね。黒人に見つからないところでイキがってて。

金子:(笑)。

永野:お母さんとかがちゃんと近くにいる状況でイキがっている感じがもう最高。あれぞロックですよ。あれぞリアル。お母さんいるんですよ、たぶん2階に。2階建てなんですよ家も。

金子:悪いことがドンシャリすぎてもう。急にチェーンソーとか言うなよ!みたいな(笑)。

永野:そうなんですよ。自分もそれで言うと、全然腹とか減った経験がないんですよ。だから『8 Mile』のエミネムとか観て引いちゃって。「マジじゃんお前!」みたいな。でもリンプってちゃんと「うるさいよ!」ってお母さんに言われてそう。だから好き。

金子:中学とか高校のときの自分たちみたいな。

――『Break Stuff』のお話が出ましたが、1990年代のリンプって金子さん的にはどうだったんですか?

永野:それすごい聞きたくて!

金子:やっぱり永野さんの本に書いてあったみたいなことはなんとなく感じてたんだと思うんですよね。シャンプーとかタトゥーとか(※どちらもアーティスト)と同じ部類っていうか。ただ、まあリンプに関しては、バンドの演奏がむちゃくちゃかっこよくて。

永野:へえ〜!

金子:当時のイケてる楽器メーカーの、ドラムだったらオレンジカウンティ、ベースだったらワーウィック、ギターはPRSっていう、いわゆるミクスチャー時代の三種の神器みたいな機材を使ってて。311とかもそうだったんですけど。

永野:311! 懐かしい!

金子:楽器好きバンドキッズからするともう本当に尊敬の的。で、DJリーサルがいるわけでしょ。「なんでハウス・オブ・ペインが急にここにいるんだ!」みたいな。路地裏のコミュニティみたいなのってそんなにすげえんだなって思って。タトゥー屋さんでしたよねフレッドって?

永野:そ〜なのよ!

金子:コーンのメンバーがそこでタトゥー入れてて、その流れでデビューしたみたいな感じでしたよね?

永野:……って言われてますけど、最近知った情報では嘘だったみたいな(笑)。

金子:やったか。

永野:タトゥー屋は本当みたいなんですけど、コーンに音源を渡したみたいなのはカマしてたんじゃないかっていう。そういうところも大好きですけどね。ドラムのジョン・オットーってどうなんです?

金子:ジョン・オットー最高!

永野:見た目は七福神でしょあれ(笑)?

金子:本にも書いてありましたよね(笑)。幸福度、高い顔。幸福な顔してる。

永野:そう(笑)!

金子:でもプレイはとにかくソリッドで。今回のアルバムの頭2曲くらい聴いて「うわっ、ジョン・オットー帰ってきた!」ってテンション上がりましたもん。

永野――俺、曲を出すならブレンダン・オブライエンにミックス頼みたい!

金子――永野さん、引くくらい詳しすぎ!

永野:レッチリはやっぱりドハマリですよね?

金子:レッチリはそれこそ『ワン・ホット・ミニット』大好き。でも今ってあのアルバムはオワコンみたいに言われてるじゃないですか。だから永野さんのYouTubeでよく言ってくれた〜!と思って!

永野:本当そう!

金子:ジョン・フルシアンテが復帰したらあのアルバムの曲は1曲も演奏しなくなっちゃって。

永野:恥ずかしかったことみたいな感じになってて。

金子:もちろん「やっぱジョンだよね〜!」ってところはわかるけど、1曲ぐらいやってよ!っていう。レッチリといえばやっぱり、ジョンが帰ってきたとき(1998年)のチベタン・フリーダム(・コンサート)の映像が最高で。

永野:わー! YouTubeとかにあります!?

金子:ありますあります! 『カリフォルニケイション』の裏ジャケの肩組んでる写真、あれがそのライブなんですけど。

永野:はいはい!

金子:ジョンの復帰戦のはずだったのに、レッチリが出る2日目が雷雨で中止ってことになっちゃって。で、パール・ジャムが優しいから。

永野:出た! パール・ジャムいい人(笑)!

金子:本にも書いてありますよね(笑)。で、1日目でパール・ジャムがレッチリをサプライズで呼び込んで。

永野:パール・ジャムが機材を貸して!?

金子:そうそう! パール・ジャムの機材で数曲やったんですよ!

永野:わー!(拍手)

金子:すごい!(涙を抑えながら)

永野:絶対観よ!

金子:そのときのジョンのペナペナ具合もカッコよすぎて。まだこう、自信がないから。

永野:そういうジョンわかる! ソロアルバムとかも!

金子:ジョンのソロのアルバム大好きなんですけど、ファーストとセカンドなんてもうむちゃくちゃじゃないですか。

永野:寝起き?みたいな。

金子:お風呂?みたいな。

永野:お風呂で寝てた人にギターを持たせたみたいな。

金子:酷すぎるだろっていう(笑)。

永野:でもサードから急になんか……

金子:そうそう! サードはレッチリに復帰したあとだから。

永野:楽しく作り出して(笑)。

金子:喜びが……喜びがすごい。

永野:正直なミュージシャンだなぁ!

金子:パール・ジャムの話でグランジあるあるなんですけど、MTVのアンプラグドを経ちゃうと大好きになっちゃうところがあって。グランジとカントリーとかって超密接なとこにあるから、演歌を感じるんですよね。そういうところがアンプラグドだとめっちゃ出て。

永野:なるほど。パール・ジャムは演歌っていう。でも同じグランジでもパール・ジャムとニルヴァーナってやっぱちょっと違いますよね?

金子:ニルヴァーナは……演歌ではないですね。ニルヴァーナはもっとパンクっていうか、なんて言うんだろう、超突然変異的なイメージ。

永野:やっぱりそうですよね。

金子:ニルヴァーナは『イン・ユーテロ』が好きで、あのサウンドも好きなんですよ。グランジって時代とともに音の正解を見つけていった感じがあるのかなと思って。ブレンダン・オブライエンとかアンディ・ウォレスとか大好きなエンジニアなんですけど。

永野:ブレンダン・オブライエン! アルバムのクレジットめっちゃ見てたから、ブレンダン・オブライエンわかりますもん! 俺、自分の曲を出すならブレンダン・オブライエンにミックスしてもらいたいですもん!

金子:うわあ、絶対やってもらいたい(笑)! 永野さんのデビューアルバムがブレンダン・オブライエンってすごいな!

――永野さんからエンジニアの名前が出てくるのやばいですよ(笑)。

金子:引くくらい詳しすぎ!

永野:でも全然あれは知らないんですよ……えっと、メロコア。

金子:そこは俺もですね。本当に有名なもうグリーン・デイとかしか。

永野:オフスプリングとか。

金子:俺が好きなミクスチャーって言われてるジャンルって、やっぱり1970年代からのソウルとかファンクとか、あとはハードロックとかそういうエッセンスがあって。俺はミュージシャンの2世だから、親の影響で思いっきりそういう音楽にも影響を受けてて、だからすごく馴染むんですよね。レイジとかも。

永野:レイジやっぱり好きですか!

金子:もうめっちゃ刺さって! レイジは一番好きかも。レイジなんてニューオリンズファンクをむちゃくちゃでかい音でやってる感じですもん。『シシー・ストラット』でしょあれ。

金子――レコーディング中に「ザックがやめちゃった」みたいな電話がきたりして

永野――わ〜! すごい話!

金子:そうそう、レイジといえば思い出ばなしがあって。

永野:はいはい!

金子:RIZEのセカンドとサードをアメリカのスタジオでレコーディングさせてもらったんですよ。

永野:うんうん。

金子:そうしたらアシスタントでついてたエンジニアさんが『レネゲイズ』の……

永野:うそお!

金子:エンジニアやってたジム・スコットのアシスタントやってたっつって!

永野:それはアガる!

金子:やべえええええ!!! ってなって!

永野:ははは!

金子:レコーディング中だったかミックス中だったかに電話がきて、「ザックがやめちゃった」みたいな話とかしてて(笑)。

永野:わ〜! すごい話! あの頃!

金子:そうなんですよ。『レネゲイズ』ってめちゃくちゃドラムの音がよくて。そういう意味でも好きなアルバムだったからめちゃくちゃアガりましたね。

永野:ミュージシャンが「海外は音が違う」とか言うじゃないですか。「うそつけえ!」とか思ってたんですけど、本当にそういのってあるんですか?

金子:めっちゃあるんですよ。やっぱりアメリカに行くと、あの気候だからああいう音になるんだなって。さっき話したオレンジカウンティの工場に行かせてもらったこともあったんですけど。

永野:わぁ!

金子:リンプとか311とかノーダウトとかが使ってた人気のメーカーで。

永野:ノーダウト!

金子:そのメーカーは何が特徴かっていうと、スネアのボディがめちゃくちゃ分厚くて重たくて。だからバッキバキに音が締まるんですよ。それをまた西海岸の乾いた気候のなかで叩くとバコーーーーン!!!ってめっちゃ鳴るんです。

永野:やっぱあるんだぁ、気候って。

金子:ただ〜、日本に送ってもらうじゃないですか船便で。そうするとこ〜れが変わっちゃうのよ!(泣きながら)

永野:ええ〜〜。

金子:吸っちゃって。湿気を。地元じゃないとダメなのねこの子はっていう。だから最後の手段で、ギターを燻す職人さんにダメもとでスネアを燻してくれってお願いしたんです。

永野:食いものみたいに!

金子:イッヒッヒ(笑)。

永野:ドラム好きすぎて!

金子:マジでそう。燻して食うのかなっていう。で、本当にやってもらったら音が戻ったんですよ。

永野:すげえ!おもしろい!

金子:でもライブハウスでワンマンやったら3曲目ぐらいで死んできて(笑)。

永野:うそお……。

金子:「先生! やっぱりダメですかあ!」みたいな。しかも燻したから、超くせえし。

永野:もうねえ、酒には合うけどね。酒には合う!

金子:いぶりがっこの匂いすんのよ。

永野:うわあ、おいしそう!

――ドラムに「おいしそう!」の感想はやばいですね(笑)。

金子:めっちゃ脱線しちゃってすみません(笑)!

――いえいえ! 『ロックなんか聴いてきた』をきっかけにこういうふうにロック話で盛り上がってくれてたら最高だなと思っていますので。金子さん率いるRED ORCAの新曲『Crow from the Sun』も10月末にリリースされましたね。

永野:そうなんですよね! これ、宅録なんですよね?

金子:そうそう、ドラムの音をひとつひとつ録っていって細かく編集したりして。

永野:すごいな……!

金子:こういうご時世だし時間もあったからできたっていう感じですよね。

永野:いや、よかったっすよ! 曲もすげえキャッチーで。

金子:イントロは「壮大ですね!」とか言ってもらえるんだけど、個人的にはもうギャグで。あんな1990年代トランスみたいなこと誰もやってないじゃんっていう(笑)。

永野:そこからのベースの音がめちゃくちゃバキバキで笑っちゃいましたもん(笑)。

金子:もう壮大なフリですからね。

永野:「俺たちが帰ってきたぞー!!!」みたいな。ある意味リンプみたいな感じで(笑)。

金子:思考的には似てるかも(笑)。

永野:やっぱりリンプか〜!

金子:作ってる最中はもう爆笑してますからね。

永野:やっぱりロックはそういうところがないとですよね。無理してやってる感じがロックっていうか。

金子:ほんとそうですよ。RED ORCAの新作も作っているので楽しみにしててください! 永野さんの本、めちゃくちゃおもしろかったです!

永野:ありがとうございます!

(おわり)

プロフィール

永野

お笑い芸人。1974年宮崎県生まれ。1995年、ピン芸人としてデビュー。「ゴッホとピカソに捧げる歌」などのシュールなネタで注目を集め、孤高のカルト芸人として人気を博す。ロックフリークとしても注目を集めており、9月25日に『僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!〜』を出版。

金子ノブアキ

ミュージシャン、俳優。RIZE、RED ORCA、AA=のドラマーとして活動している。RED ORCAとして2020年にリリースしたファーストアルバムがiTunesロックチャート1位を獲得。2021年10月に新曲『Crow from the sun』をリリースし、11月には東京・大阪にてワンマンライブを開催。俳優としても映画やドラマ、CMに出演し、際立った存在感で魅了している。

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耳マン編集部