音楽の都市伝説:“出る”と噂の都内老舗ライブハウス鹿鳴館に潜入してきた

連載・コラム

[2016/10/14 17:00]

『月刊ムー』でも執筆するライター長田遊馬氏が音楽にまつわる都市伝説に迫る!


“出る”とされているライブハウスの取材レポートである

ライブハウスは“出る”という話を聞いたことがないだろうか? インターネットが普及して、こうしたライブハウスにまつわる噂話は多岐にわたる。実はかくゆう筆者も、あるバンドのライブを観ていた際に、舞台袖から客席を覗いている無気味な小さな子どものような姿を見たことがある。そのライブハウスの場所は明かせないが、確実に“そこにいるはずのない”影だったのだ。

さて、前置きはこのぐらいで、今回は“特別篇”である。というのも、やはり「話だけ」では読者の皆様もつまらないだろう――ということで、“出る”とされているライブハウスの取材レポートをお送りしたい。

某日、耳マン編集スタッフとともに一路目黒へ。目黒といえばライブハウス「鹿鳴館」だ。そう、実は鹿鳴館は“出る”といわれるライブハウスのひとつなのである。1980年にオープンし、老舗ライブハウスのひとつとして知られている鹿鳴館。出演者は大物アーティストからインディーズまで幅広く、ジャンルも問わないため、さまざまなアーティストが熱演をくり広げている。そして、のちに有名になったアーティストやバンドがインディーズ時代にこの鹿鳴館に出演していることが多い。こうしたことから、インディーズアーティストの登竜門ともされている。

当日はあいにくの雨どころか、滝のように激しい雨が降り注いでいた。建物に着くと、電飾で形作られた「鹿鳴館」の文字が。入り口から階段を下ると、さまざまなバンドやアイドルグループのポスターが飾ってある。

鹿鳴館の看板

店内

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しかし、本当にここは“出る”のだろうか? これは筆者の経験だが、そうした場所というのは、入った瞬間に背筋がゾクッとする、体が重くなる、といった“嫌な感じ”がする。だが、鹿鳴館はまったくそうした気配がない。そして、事務所に向かうと気さくそうな男性が迎え入れてくれた。

「まったく怖くないというか、心霊とかそういう感じはまったくしない」

山口高明氏――。鹿鳴館の責任者であり、30年以上もこのライブハウスを守り続けてきた人物である。

店長の山口氏

「あぁ、実際そういう噂もありますね。僕自身もそうした体験をしたことがありますけど、まったく怖くないというか、心霊とかそういう感じはまったくなくて。なので今回、こういう取材も受けさせていただきましたし」

確かにそれらしき体験はあるが、まったく怖さは感じていないという。どんな体験をしたのか詳細を聞いてみた。

「あるバンドのライブのとき僕が照明を担当していたんです。照明の操作していたら、お客さんがフロア奥の2階にある作業スペースに上がってきちゃったんです。でも、2階は関係者以外立ち入り禁止。だから、『入っちゃだめだ』というのを身振り手振りで伝えたんです」

直後、すぐにそのお客さんは姿が見えなくなったというが、またすぐに戻ってくるのだという。

「何度も『来るな』と伝えても戻ってくるんですよ。それで、よーく見たら、メガネをかけた坊主頭の少年だったんです。中学生ぐらいかな? 服装も白いズボンに白いYシャツという出で立ちで……」

その後、山口さんは少年の話をスタッフ仲間に話した。だが、受付をしていたスタッフは“そんなお客さんいなかった”と言い、ほかのスタッフも皆、“そんな人物いなかった”と口を揃えたという。はたして、山口さんが見た少年はいったい誰だったのだろうか?

ステージ

「これまでに一度も事故は起きていない……守られているような感覚」

ほかにもこんな体験があるそうだ。

「あるバンドのワンマンがあったときの話なんですが、ライブ後に同じく2階で後片付けをしていたんです。2階に上がる階段には落下防止の手すりがついているんですが、その手すりの間から突然“手”が現れたんですよ。半透明で金色のオーラっていうんでしょうか? 光っていて、床をバンバン叩いているような感じで」

突然、目の前に現れた無気味な手。しかし、山口さんは不思議と怖くなかったという。

「全然怖い感じじゃなくて。天使みたいに見えたっていうか。それで『なんだろう?』という感じで見てたんです。しばらくしたら、そのままハジけるように消えていきました」

手らしきものを見た場所を指さす山口氏

筆者も実際にその階段を見せていただいて、手すりから手を伸ばしてみたが、とてもじゃないが届かない。そんなところから人の手が前腕部分まで露出していたわけだ。とてもありえない現象である。

「あと、昔は女子トイレでけっこう不思議なことがあったと聞いてます。ありがちな話ですが、誰も入っていない個室の水が勝手に流れたりね。だいぶ昔の話ですけど」

女子トイレ

また、あるメタルバンドのボーカルに、「鹿鳴館はいっぱい“いる”ね」なんてことも言われたことがあるらしい。

だが、不思議なことに鹿鳴館は“嫌な感じ”がしないのだ。というよりも、その“彼ら”に守られているような感さえある。実際、どんな激しいバンドのライブをやったり、危険なパフォーマンスをする人物がいても、これまでに“一度も事故が起きていない”という。

明日のロックスターを目指す多くの若者が集う鹿鳴館。ここには音楽好きな“奴ら=幽霊”も遊びに来るある種のパワースポットなのかもしれない。

【著者紹介】

長田遊馬
東京都出身。超常現象研究家の新星。幼少のころからUFOや超常現象に造詣が深く、オカルト界の重鎮・並木伸一郎を師と仰いでいる。専門誌「月刊ムー」でもUFO、UMA、超常現象に関する記事を執筆している。好きな音楽はヘヴィメタル。超常現象を研究するかたわら、『地獄のメカニカルトレーニングフレーズ』(リットーミュージック刊)を片手に、日夜スウィープ奏法を練習中。

耳マン編集部